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#16 Extended Essay について

皆さんお久しぶりです、長らく投稿ができておらずすみませんでした。
この記事ではリクエストフォームでご質問いただいていた、Extended Essay(EE)について書いていきたいと思います。

頻度は低くなってしまうかもしれませんが、今後も役に立ちそうな情報等があればブログを更新していきたいと思っています。特にいただいた質問には優先的に回答しますので、引き続きリクエストお待ちしております!


ご紹介する内容

今回は、フォームを送ってくださった方のリクエストにお応えし、

  • トピックの選び方

  • EEで書く内容

  • EEに関するコツ

といった内容を主に扱います。また、物理など理科系のEEについて知りたいとリクエストされていたので、今回は可能な限り Physics などでEEを書く場合についても触れたいと思いますが、自分自身が理科系でEEを書いていないこともあり、あまり踏み込んだ話まではできません。その代わりにと言ってはなんですが、理科系に限らずEEを書く科目選びで迷っている方の参考にもなるように、私自身の経験談も含め様々な観点から説明していきます。

自分自身の経験談

まず、私自身のEEについての基本情報をお示しします。

  • 科目:History(歴史)

  • テーマ:"To what extent has Everett Thayer Gaston contributed to the development of music therapy in North America from 1940 to 2000?"
    (「E. セイヤー・ガストンは1940年から2000年の間における北アメリカでの音楽療法の発展にどの程度貢献したか?」)

  • 文字カウント:4000 words(4000 単語)

自己紹介をご覧になった方は違和感を覚えたかもしれませんが、私自身が選択していたのは Geography なので、実は選択していない History でEEを書いたことになります。元々、医学部進学を考えるうえでテーマに医療の要素を持たせたいと思っていたのですが、実際にデータを集めたり、研究を行ったりするのは厳しい中でこれを実現するためには History が最適だろう、という先生のアドバイスの下、このような判断に至ったのです。結果的に評価は期待していたほど高くなく、Bonus Point(TOKと合算)の足を引っ張る要因になってしまったため、正直「失敗した」という感覚が強かったです(なのでEEで高得点を取るコツを語るには適任じゃなさそうです…)。

トピックと科目の選び方

私自身の場合、科目以前に書きたいトピックがある程度絞られていたため、それに合わせて科目を選ぶという流れを踏みました。その結果、あまりスコアを伸ばすことができず、大学受験という観点でも結局そこまでEEのトピックは関係なかったのでは?という状況に陥ってしまいました。もちろん、EEの写しや日本語要約の提出を求める大学もあったため、医療系の要素を持たせるに越したことは無かったのだと思いますが、無理にこじつけるのは得策ではなかったのでは、と振り返っています。

EEのトピックと科目を選ぶ順番は一人一人の状況によると思います。もし具体的にどんなトピックを扱いたいか決まっている場合は、それに合わせて最適な科目を選ぶことになりますが、逆に科目を先に決めてからその中で具体的なトピックを検討する、という方法もあります。特に World Studies を選ぶ場合、書ける内容の幅が広がるという利点はありますが、適当に扱ってしまうと焦点がぼやけてしまうので、無暗に選ばないように注意が必要です。また、絶対に日本語で書きたい!という強い希望がある場合は Japanese A をEEの科目に選ぶという手がありますが、書ける内容の幅が限定されてしまうというトレードオフがあります。

EEは長らく取り組む課題となるため、一番理想的なのは自分が興味のあるトピックを選ぶことです。やや打算的な考えにはなりますが、EEは受験において語れる材料(あるいは語らなければならない要素)になり得るため、志望する学部や自分の志に合致したトピックを選ぶのも効果的です。このような背景からトピックの軸を決めたら、それが現実的か先生と相談して判断する必要があります。この段階で、どこまでの妥協なら許せるか考えたうえで、修正が必要であればトピックあるいは選ぶ科目を調整していきます。

最終的にトピックを確定させる際には、理科系であれば実験が可能か(あるいはデータが揃えられるか)・理論を十分に理解できるか、文系であれば文献が十分にあるか、といった点を確認することになります。4000 word(日本語の場合は8000字)はある程度のネタが集められないと全然届かなくなってしまう長さですが、あまり多くを詰め込みすぎると制限内で書ききれなくなってしまうので、トピック選びの時点でちょうど良い広さを設定することが非常に重要です。「EEに関するコツ」でもう一度触れようと思いますが、トピック選びはその後のEEの進捗に大きな影響を与えるので侮らずに時間をかけてしっかり考えることを強くお勧めします。

EEで書く内容

EEで書く内容は科目によって様々ですが、共通して言えるのはしっかりした目的を示し、結論に至るまでの過程を誰でも追えるように論述するという点です。特に理科系のEEを書く場合はIAの規模を大きくしたイメージになるかもしれませんが(はっきりしたことは言えません)、決定的な違いはEEにはリフレクションがある点です。それも、Engagement という評価項目でEEの点数を左右する要素となるので、TOKや Group 4 project のように点数に反映されないリフレクションに比べると力を入れる必要があります。つまり、EEではIA以上に自分自身が主体的・積極的に取り組んだことを証明する必要があり、そのためにはトピックを選んだ理由を justifiable(正当化可能)にしたり、methodology(方法論)に工夫を凝らしたりすると良いのでは、と思います。

なお、特に自分が選択している科目でEEを書く場合は、その科目のIAや他の評価課題と内容が被らないように注意する必要があります。例えば理科系の場合だと、IAとEEで同じ実験を行ってしまってはもちろん重複として判断されてしまいますし、少し実験の方法を変えただけで同じ分野を探求した場合もNGとされてしまう危険があります。そのため、可能であれば最も無難なのはIAとEEの内容を完全に別の分野にすることです。例えば、IAで電気抵抗の実験を行い、EEで溶解熱の実験を行えば、内容の重複を疑われる心配は無くなります。同じ分野でも明らかに方法論や考察の観点が異なれば問題はないはずですが、Academic Integrity に反していると言われてしまわないように注意が必要です。

EEへの向き合い方

EEに関するコツの紹介に入る前に、「そもそもEEにどれくらい労力を注ぐべきか?」という問題提起をしたいと思います。もちろん、余裕がある方はEEに全力を注ぎ込むに越したことはありませんし、単に評価課題としてだけではなく自分自身の成長という観点では本気でEEに向き合うのが一番だとは思います。しかし、実際にはIAをはじめとする様々な課題や試験に追われ、受験も迫っている中でEEに費やせる時間は限られてしまいます。もちろん、EEは IBDP core の一角を占める重要な要素で、一定の評価を得なければディプロマを取得することはできないのですが、TOKとの合計で算出される Bonus Point は45点中の3点に過ぎず、しかも過去の記事でご説明したようにこれを得点源とするのは難しいのです。この「3点」は確かに大きいと捉えることもできますが、努力しても報われるか分からない課題のために多大な労力を費やすのは正直気が進まないですよね?そもそもEE自体が高評価を取りづらいうえ、見込み点から大きく変動することもあるようです(実際、私自身も手を抜いたわけではありませんでしたが、満足のいく評価は獲得できませんでした)。

以上のことから、まずIBスコアをそこまで重視しているわけではない、という方は自分の興味のあるトピックを選び、受験など他に取り組みたいことを圧迫しない範囲でEEに取り組み、少しでもその過程を楽しめると良いのではないかと思います。どうしてもEEで最高評価(A)を目指したいという方はその旨先生に相談したりするとよいと思いますが、そうでない限りIBでハイスコアを目指している方でも、EEに関してはリミット(妥協点)を決めるなど、沼にはまって時間を浪費してしまったり、他の課題等や精神面を圧迫してしまわないように心掛けることをお勧めします。

EEに関するコツ

先ほどご紹介したEEへの向き合い方に基づいて、EEに関するコツ(個人的な考え)をいくつか挙げてみます。

トピックは早めに考え始めて入念に決める

先ほども書きましたが、トピック選びで失敗するとEEを執筆している間ずっとその影響を引きずることになってしまうため、この段階は最も大切です。とは言っても、学校では恐らくEEについての簡単な説明があった後に、「では次回までにトピックの候補を出してこよう!」といった軽い感じで進められると思います。確かにトピック選びをダラダラ続けるのは良くないので潔さも必要ですが、EEのトピックはそう簡単に決定できることではないので、前もって考えを熟成させていく必要があります。これはIAなどのテーマ決めにも共通して言えることですが、トピック選びは数日でパッとできることではなく、ふとした時にアイデアが浮かぶまで待ったり、本当にそれで行けそうか検証したりするのに時間がかかったりするので、極端に言えばIBDPに進むのだと決めたらもうその段階から、頭の片隅でも良いのでEEなどのトピックは考え始めて何か思い付いたらメモを残していくのがベストだと思います(私自身、IBDPの2年間は常にそう意識していました)。ちなみにEEの場合はあまりその心配はないと思いますが、IAやIOの場合は内容が他の人と被ってしまうと早い者勝ちになったりするので、その意味でも早めに行動しておくと良いです。

また、トピック選びの期日を伝えられた際に、「とりあえず何かしら考えていけば大丈夫でしょ」と思うのではなく、実際にそのトピックで書けそうか見通しを立てておくところまでがトピック選びである、という意識を持つと良いと思います。その時に考慮すべき点は「トピックと科目の選び方」で述べたとおりですが、トピック選びに時間をかけてでも書きやすそうなトピックを見つけられればその先が非常にスムーズになるので、「多分大丈夫」などと楽観的に考えてしまうことなく、実現可能性を吟味しましょう。

タイムマネジメント

何事においてもタイムマネジメントは重要ですが、EEの場合は特にこれができるかどうかでその他の課題や受験に向けた対策に残せる余裕が変わってきます。GKAではEEの締め切り(final)が2回設けられていて、進捗などに応じてどちらで提出しても良いことになっていますが、特別な事情がない限り早いほうの期限で出すことを強くお勧めします。遅いほうの期限があることによって、早いほうの期限が実質無いようなものとして捉えられてしまいがちですが、EEは執筆を終えた時点で完了ではなく、その後に Viva Voce というミーティングを先生と行い、reflection を書かなくてはなりません。これが夏に入ってくると Mock の対策や出願の準備などに被ってしまうので、可能な限りこれは避けたいです(人によっては出願書類でEEの写しや要約が必要で、夏休み中にそれを作成したい場合はEEが完成していないと無理です)。

EEは確かにIBDPの評価課題の中では最大のものになりますが、数日間をEEのみのために費やせば案外かなり進めることができます。長い期間をかけて取り組む課題なので、procrastinate(先延ばし)してしまいがちですが、個人的には冬休み中に3日間くらいEEに集中する日を設けて一気に仕上げちゃうのもありだと思います。後のほうになるほど忙しくなることを見通し、冬休み明けの draft 締め切りまでには一通り書き上げたものを用意しておくことで、春休み中に必要な箇所を修正し、早い期限で提出まで持っていけます。

文字数が少なすぎる心配は不要

EEと言われて "4000 words" が真っ先に思い浮かぶ人は多いのではないでしょうか?それほどEEが規模の大きな課題であることは強調されていますが、トピック選びで失敗しない限り実は 4000 words というのは長いどころか、短く感じるようになるものです。私自身も書き始めた頃は本当に十分な量を書けるか不安もありましたが、最終的には何とか語句を削って 4000 words に収めた、という感じです(4000 words というのは上限なので注意!)。念のために必要であればこの内容を書こう、というように多めにバックアッププランを用意しておくのは効果的ですが、無理に引き延ばそうと考えるよりはむしろ何が本当に必要なのか慎重に考えるようにしてみてください。

客観的に読み直すことの大切さ

EEを書き上げたばかりの時は、その達成感が大きく、自分自身の成果物を客観的に読み直すことは難しいと思います(バイアスがかかってしまい、誤り等を見落としがちです)。そのため、一旦EEが仕上がったら数日間を置き、再び第三者の目線でそれを読み直してみましょう。そうすることで改善点を発見しやすくなり、より良い成果物へとブラシアップできます。このための期間も想定し、提出期限まで数日余裕を残して一通り完成させることをお勧めします。なお、これはEEだけでなく他の評価課題や志望理由書などにも応用できるテクニックなので、ぜひ色々な場面で試してみてください。

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