【GK Report】 京都信用金庫 QUESTION:コミュニティ・バンクの新しいカタチ
1.QUESTION 誕生
京都信用金庫は1923年に有限責任京都繁栄信用組合として設立した京都・滋賀・北大阪を営業地域とする協同組織金融機関です。地域社会の発展に寄与することを基本理念とする京都信用金庫は、2020年11月にその旗艦店とも言える QUESTIONビルを、京都市の中心市街、河原町御池の角にオープンしました。
この新施設においてGK京都は、GK設計と協働し、空間構想プロデュースにはじまり、インテリア・サインなどの環境エレメントの計画・設計からVI計画や照明計画に至るまで、総合的な環境づくりのトータルデザインに携わることができました。
2.GKと京都信用金庫の出会い
GKと京都信用金庫の出会いは、今日から約半世紀前、GK京都の前身である「京都・デザイン・センター(KDC)」が京都に開設された1970年代初頭に遡ります。京都信用金庫は、1971年に日本の金融機関として初めて「コミュニティ・バンク」という考えを提唱しました。
その「コミュニティ・バンク論」の空間実装プロジェクトに、株式会社CDI(川添登所長)、株式会社菊竹清訓建築設計事務所(菊竹清訓所長)、勝井三雄デザイン研究室(のちに粟津潔デザイン研究室)らと共にGKも参画しました(参照:『コミュニティ・バンクの空間計画:その思想と実践』)。
GKは道具デザイン領域を担当し、シンボルマークやVI計画、什器備品等の各種環境プロダクツや空間ユニット開発など、今日のトータルデザインの先駆けともなる総合デザインを実践しました。
QUESTIONは、「コミュニティ・バンク論」の基本理念を受け継ぎ、現代社会の価値観やニーズに呼応する、新たなコミュニティ・バンクのあり方を世に提供する地域交流拠点となるべく、産声を上げました。
今回、我々に与えられた命題は、“一人では解決できない「問い( ? )」に対し様々な分野の人が集まり、みんなで寄ってたかって答えを探しに行く場所” という施設コンセプトに相応しい、新しい「空間計画」の実装でした。
3.QUESTIONの概要
QUESTIONは地下1階地上8階建の複合ビルで、特徴は、京都信用金庫河原町支店を6階に配置し、京都信用金庫のフルバンキング機能を持つ店舗としては初の空中店舗とすることで、低層階を含む多くの空間を新しいコミュニティを生み出す出逢いの場として提供している点です。
各階には、人と人をつなぐコミュニティマネージャーを擁するコワーキングスペースや、さまざまなサイズのイベントやミーティングのできる場所、カフェ&バーやシェアキッチンなど、ビジネスを触発する新しいコミュニティ・バンクを象徴する場が重なり合っています。
4.人をつなげる:シームレスに人をつなげる空間構成
GKは構想段階からプロジェクトに関わり、一貫した空間計画とトータルなデザインの品質担保の立場から、施主と設置チーム及び運営チームの三者の架け橋となる役割を果たしました。
設計チームの中心は、実施設計を担当した株式会社東洋設計事務所、施工者である積水ハウス株式会社、信用金庫としての金融機関部分の設計を担当した株式会社クマヒラです。その他、飲食部を含む1階と8階のインテリアを担当した尾形良樹+SALTなどと共に、空間提案と全体のデザイン調整を行いました。
また、計画段階から、実際に施設を運用する運営チームと共同で空間検討を行うことで、設計チームとの齟齬を減らし、運営者にとって使いやすく誇りが持てる居場所となるよう心がけました。
空間計画としては、訪れる人と人が自然とつながり、互いのビジネスが触発されるよう、多層階に自然に視線が連続するシームレスな構成としました。視覚的な連続性の実現のため、地元アーティストである銅版画家の舟田潤子氏との協働作業も試みました。それによって、吹き抜け空間の奥壁に1階から4階まで連続した巨大なアート壁が生まれた。白を基調とした空間に巨大なカラフルな色面が差し込まれることで、内外からの視覚的な連続性を強調し、来館者の視覚的なつながりを誘導しています。
さらに、サイン計画では、各フロアの個性に合わせた「 ? 」をデザインしました。形状と色彩を設定し、案内サインからコロナ対策のサインに至るまで統一したデザイン展開をすることで、用途の違う各階に空間的な一体感をつくり出しました。
5.地域をつなげる:アクティビティを魅せる奥行きのあるファサードデザイン
沿道を意識した多層階の吹きぬけと奥行きのある透明なファサードにより「人のアクティビティを魅せる」建築としました。特に1階〜4階の低層部は、内部の活動をダイレクトに透けて見せ、地域とのつながりを意識した空間となっています。
また、敷地となる河原町御池の交差点は、四条河原町交差点と並ぶ祇園祭辻廻しの舞台ともなる重要な拠点であるため、ファサードは京都の新しいシンボルとなる存在感のある姿を目指しました。
照明計画では、各階のアクティビティを反映した横に重なりあう暖色系の「みせる光」と、それらを縦につなげる風通しの良さを表現した白い「つなぐ光」によって構成し、沿道の夜間景観に馴染みつつ、拠点としてのシンボル性も担保しています。
6.文化をつなげる:「みち・にわ・ぶたい」都心で最高の眺望を
QUESTIONの敷地がある御池通は、GK京都が長年に渡り景観構成要素の様々なデザインに携わってきました。特筆すべきは「みち・にわ・ぶたい」を開発キーワードとする御池通は、歴史や文化の「伝統」を重んじつつ「先進性」を求めるとともに、祇園祭や時代祭、市民参画による京都まつりの「舞台」に相応しい場づくりを目指してデザインを行っている点です。
QUESTIONの空間計画は、まさに沿道空間と「みち・にわ」空間との融合を実装するものであり、その最大の特徴として、3階と4階を貫く「コミュニティステップス」と名付けた交差点側に向いた大階段があります。通常はコワーキングやイベントスペースとして利用されているが、同時に祇園祭の最大の目玉である「山鉾巡行」と「辻回し」を間近で見下ろせる最高の桟敷席となり、京都の伝統文化を体験できる祝祭の建築となります。
また、周辺街路景観とのつながりを意識し、街路樹や交差点の抜けなど各高さにおける眺望を効果的に取り込む空間配置となっています。特に、屋上階のスカイテラスでは、周囲の山まで見通せるため「五山送り火」も鑑賞することができ、京都の都心で最高の眺望を提供することに成功しました。
7.新たなコミュニティ・バンクのために
今回、GKがトータルデザインの視点から京都信用金庫が目指す「新しいコミュニティ・バンクの空間実装」に参画できたことは、京都信用金庫との深い関わり合いからも意義のあることで非常に感謝しています。併せて、地元京都の景観まちづくりへの一助として関わってきた御池通の沿道景観に一石を投じることができたことも感慨深い思いです。
この地域交流拠点から発せられる数々のアクティビティが、通り空間に滲み出し、QUESTIONが目指す様々な「ひと」と「まち」の交流が織りなす「ぶたい」の風景を、これからも見守っていきたいです。(門脇宏治、磯部孝文)
(1,4,5,6,7章のQUESTIONの写真撮影: 太田拓実)
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