漫才 「お持ち帰り」
ミミ吉 「はいどうもー、ミミ吉です」
ハナゾウ 「ハナゾウです、お願いしまーす」
ミミ吉 「やったー!」
ハナゾウ 「どうした?」
ミミ吉 「この前すごいことが起こってさ」
ハナゾウ 「何?」
ミミ吉 「まぁ、俗に言う『お持ち帰りされる』っていうやつを初めて経験しまして」
ハナゾウ 「え~!スゴいじゃん」
ミミ吉 「財布を…」
ハナゾウ 「財布かい。盗まれること『お持ち帰りされる』って言わないでしょ」
ミミ吉 「財布に免許証も保険証も入れてるからさ、顔も住所も勤務先も全部バレちゃってるよ…」
ハナゾウ 「丸裸だね…」
ミミ吉 「たださ、犯人の顔は見たから捕まえられないかなと思って」
ハナゾウ 「目の前で盗られたの?」
ミミ吉 「そう」
ハナゾウ 「追いかけたけど…ってやつか」
ミミ吉 「いや、『人生初のお持ち帰りだ~』って両腕を高々と上げて喜んでる内にそいつバス乗っちゃってさ、いつの間にかバス出発してて…」
ハナゾウ 「大馬鹿野郎じゃね~か!てか、財布落とした時気づかなかったの?」
ミミ吉 「え?」
ハナゾウ 「だから、財布落とした時にすぐ気づいて拾ってればこんな事にならなかったじゃん」
ミミ吉 「別に落とした訳じゃないよ」
ハナゾウ 「ん?ひったくりとかそういう事?」
ミミ吉 「バス停の前に路上ミュージシャンがいてさ、その人の歌が素晴らしかったの。これはお金を払わない失礼にあたると思って、ギターケースに財布入れた」
ハナゾウ 「じゃあ結局お持ち帰りされてたよ!到着地点変更になっただけじゃん」
ミミ吉 「バスにも乗り損ねたし最悪だったよ」
ハナゾウ 「運転手も恍惚の表情で両腕あげてる奴に『乗りますか?』って聞きづらいか…」
ミミ吉 「せっかくいい深夜バス予約してたのにさ」
ハナゾウ 「深夜バス!?」
ミミ吉 「そう。しかも帰りの」
ハナゾウ 「最悪じゃん。走って追いかけろよ」
ミミ吉 「言っておくけどさ、夜中のお持ち帰りって激アツだからね」
ハナゾウ 「知らね~よ!ていうか、どうやって帰ってきた?」
ミミ吉 「東京ー青森間無料個人タクシーお持ち帰り駅伝」
ハナゾウ 「うーん…ヒッチハイク?」
ミミ吉 「正解!第244区の重山さんが頑張ってくれました~」
ハナゾウ 「めっちゃ襷(たすき)つないでる」
ミミ吉 「いや~、でもさ、財布をお持ち帰りされるっていうマイナスはあったけど、人の優しさに触れることが出来たっていうプラスもあったよ」
ハナゾウ 「うん…どう考えてもマイナスの方がデカイけどね」
ミミ吉 「青森に帰ってくるまでさ、381人が協力してくれたの。その381人の中に1人位は俺の事変な場所に連れていって、置いてきぼりにする人がいてもおかしくないじゃん?」
ハナゾウ 「まぁね」
ミミ吉 「でもさ、そんな人1人も居なくて、皆笑顔でOKしてくれたの。これって奇跡じゃない?」
ハナゾウ 「まぁ、感謝はしないといけないね」
ミミ吉 「ちょっとさ、この事を神様にも感謝したいんだけどさ、今持ち合わせがないからお前の財布貰ってもいい?」
ハナゾウ 「お前ごと賽銭箱の中に入れ!
ありがとうございました」
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