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#1980年代洋楽ヒットソングスベスト100 その7

I want my MTV

1981年にアメリカで開局された音楽専門チャンネル「MTV」。業界への影響は絶大で、当時はビデオが当たれば楽曲も売れる仕組みが構築されていた。何億もの大金を投入して撮影されるプロモーションビデオは、既にプロモーションの枠を超え、映画並みのインパクトと話題性を誇っていた。

1984年からMTVビデオミュージックアワードが開催され、1984年カーズのYou Might Think、1986年ダイアー・ストレイツのMoney for Nothing(後述)、1987年ピーター・ガブリエルのSledgehammerと凝った映像作品が次々と最優秀賞を受賞するが、1989年にはニールヤングのThis Note's for Youが受賞する。

グランジの祖ニールヤングが1980年代末に「ペプシやコークのためには歌わない」と歌い、マイケルジャクソンやホイットニーヒューストンなどのポップスターを登場させそれを揶揄する内容のビデオを発表するという商業主義に反発するビデオが最優秀賞を受賞するとは、今から考えると来るべきオルタナティブ時代を予言しているようで興味深い出来事であった。

楽曲メモ その7

49 Take on Me / a-ah (1985)
名曲にはそれに相応しいアレンジがあるもの。手を加えなければノルウェー3位の記録を残すだけで世界の聴衆には届かなかっただろう。この名曲の改変バージョンは、ロマンティックで斬新なミュージックビデオと共に永遠に音楽ファンの胸に刻まれた。(US1位、UK2位)

50 Walking On Sunshine / Katrina & The Waves (1985)
しかしこんなに夏が似合う曲ある?(前回のTFFは何だったのとか言わないで)元気に真夏の通りを闊歩したくなるカトリーナアンドザウェイヴスの大ヒット曲。実はこれも映画に使われていて「摩天楼はバラ色に」の能天気な雰囲気にピッタリ。(US9位、UK8位)

51 Ways To Be Wicked / Lone Justice (1985)
紅一点のマリアマッキーが歌うトムペティとマイクキャンベル作の土臭いアメリカンロックも、この曲が収録されたアルバムもチャートでほとんど振るわなかった。1980年代という時代の空気が合わなかったのか。前後10年ずれていたらもっと売れていたのだろうかとよく考える。ところで一言言わせてくだされ。マリアマッキーめちゃくちゃかわいい。当時レコード買って部屋にポスターも貼ってたんだぜ。(US86位)

52 Out In The Fields / Gary Moore (1985)
シンリジィの盟友ゲイリームーアとフィルリノットの熱い共演。それぞれの出身地は長年問題を抱える北と南のアイルランド。反戦の祈りを込めたこの曲のアウトロにはクラッシュでお馴染み南北戦争時代の民謡「ジョニーが凱旋するとき」のメロディが引用されるが、これは数年後にガンズがCivil Warのイントロで再び引用される。(UK5位)

53 Walls Come Tumbling Down / The Style Council (1985)
パンクムーブメントから脱却し、ソウルやジャズを取り入れた音楽を追求し始めたウェラー兄貴。スタカン名曲は数多くあれど、ウェラーのシャウトとタルボットのピアノがホーンと共に力強く響くこの曲が一番好き。歌詞の意味は全然違うと思うけど、「壁は崩れ落ちる」と歌う歌詞は4年後のベルリンの壁崩壊を彷彿とさせ後から考えると熱かった。(UK6位)

54 Road to Nowhere / Talking Heads (1985)
人は皆んな行き先のない道を歩いている。歩いているといろんな事があるけれど生きている限り歩いていかなきゃならない。飯食ってうんこして寝て起きる。これさえやっときゃ何とかなる。あんまりない頭で考えんなよ、といつもデヴィッドバーン先生とこの曲は教えてくれる。(UK6位)

55 Money For Nothing / Dire Straits (1985)
スティングが「高校教師」の節回しでI want my MTVと囁く。5年前にバグルスが「ビデオがラジオスターを殺す」と歌ったけれど、ビデオクリップが話題になればチャートでも無敵だった。そんな時代を揶揄したこの曲のビデオも当時としてはCGが新しくてまさに「MTV時代の象徴」だった。でも待って、曲だけでも十分カッコいい。(US1位、UK4位)

56 People Get Ready / Jeff Beck (1985)
インプレッションズのスタンダードを初めて聴いたのはベックとロッドによるこのカバー。プロモーションビデオがいいのよね。貨物列車に乗り旧友に会いに行くベックと駅で待つロッド。再会の抱擁が芝居掛かっているが実に味わい深い。だけどこの立場は逆転してしまう。ロッド、まだベックに会いに行かなくてもいいからね。絶対向こうで忙しいから。(UK49位)

その8へ続きます。

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