"体験型"の旅行経験の提供を目指す各自治体のインバウンド施策。その狙いとは
数年前まで、インバウンド関連の報道といえばよく大量の買い物袋を持った観光客の姿や家電量販店で買物を楽しむ方々で溢れていました。実際、インバウンド観光客=爆買いというような連想をされる方もいまだ多いのではないでしょうか。実は今、その"従来のインバウンド客像"が大きく変わってきているのです。水際対策の緩和意向、報道において見かけるのは桜を楽しむ観光客や、着物体験をする方々など。買い物を旅行のメイン目的としている方は依然として多いですが、少しずつ、"体験"をとても重視する観光客が増えてきています。その内容は、茶道体験や着物での街歩きなどの日本らしさに溢れるものから、カヌー体験に至るまで多岐に渡ります。
"体験型"サービスの集客アップを狙う国や各自治体。背景にはSNSの影響も。
そんな観光客の意向の変化をふまえた施策を実施する自治体が、近年増えてきています。一部報道を紹介いたします。
インバウンド需要増へ 藍染め体験モニターツアー 栃木 日光
食事や文化を体験する『アドベンチャーツーリズム』でインバウンド促進を 新潟県
和装でぶらり散策を 丹波篠山市、7月からキャンペーン計画 飲食店などで割引特典
https://news.yahoo.co.jp/articles/1b3baf4997b00b205250fab96269c602bbecda9a
このように、体験サービスを後押しするような施策を実行している自治体が増えてまいりました。ここに行けば日本のこんな一面を楽しめる、という打ち出し方をすることでインバウンド需要をしっかり取り込んでいくという姿勢が見受けられます。"体験型"を重視する観光客が増えた背景には、ネット通販の充実などにより各国の方々に日本製品が手に渡りやすくなったという理由のほか、SNSが大きな影響をもたらしていると考えられています。
いまや旅行者が旅マエから旅ナカに至るまで、SNSで情報収集を行うというのが当たり前となってきていますが、日本体験を満喫している体験型サービス関連の投稿は、人気を集め注目度の高い投稿=よく見られる投稿となりやすい傾向にあります。
そして、SNSの特徴は閲覧者が投稿者にもなるという点。人気インフルエンサーの投稿などの影響を受けて同じサービスを体験したユーザーが、また関連する記事をアップする。すると、どんどん認知度が高くなる。近年の体験型サービスのブームには、そのような波及効果の影響もあると見られています。
では、しっかりとインバウンド需要を取り込むためには、キャッチーなわかりやすい"体験"が無いといけないかというと、決してその限りではございません。例えば、ひとつの商品の背景にあるストーリーや日本らしい特徴をしっかりアピールすることができれば、海外の方にとっては十分に日本らしい体験となり、それを購入することも旅行の楽しみとなり得ます。日本の商品を買ったという投稿に、その商品に関する日本エピソードが添えられているようなSNS投稿も近頃はよく見かけるようになりました。
そんなSNSの影響が最も強い国のひとつが中国。「購入したい商品や行きたい場所を知ったきっかけは?」というアンケートに対し、中国人旅行の6割以上がSNSで知ったとの回答をしています。※1 消費者の動向を知る上でも、プロモーションの上でも無視できない存在であるSNS。訪日中国人のインバウンド需要を狙いたい企業にとって、今後も要注目の存在です。