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去年よりも難しいかもしれない、カブス2022年サマーセール

お久しぶりのイサシキです。

もう単刀直入にいきましょう。

今年のカブスはまあ弱いこと弱いこと。

ソース:全MLBファンの声

今シーズンの悲惨な現状

6月26日時点でのナ・リーグ中地区順位表

昨シーズンのバーゲンセールによって世界一を成し遂げたチームは解体。今シーズンからは新たなチームの顔として投手ではマーカス・ストローマン、野手ではNPBからポスティングシステムで鈴木誠也を獲得。その他にも大解体をしたチームとは思えぬロックアウト後の積極的補強を行い、散々”Rebuild”ではなく”Retool”だと表明したホイヤーBOの元、「勝率5割くらいを狙えればいいや」という橋渡しの2022年シーズンが始まりました。

しかし蓋を開けてみれば、鈴木誠也の鮮烈なデビューのおかげでまだ見れた4月中旬以降は投壊と点々打線と怪我人のオンパレード状態。もう何人メジャーデビューを果たして何人IL入りしたかすらも定かではないくらい激しくロースターが動いており、これに痺れを切らした(ということにしてある)スポナビさんの一球速報が、ついこの間DFAされた左腕エリック・スタウトを「不明」と表記するなど、負の話題が絶えないお笑い暗黒チームへと成り下がりました。

まあ球団公式ツイートにスタメンをアップした約2時間後にDFAされた選手が出て早急に訂正ツイートをアップしているチームが強いわけないんですけどね。

画像:MasatoさんのTwitterより引用

こんな感じでてんやわんやしているうちに借金は膨らみ続け、気づけば後ろには開幕から絶不調だったレッズの姿が大きくなり、地区最下位も夢ではない状態になってきたというところが、現在のカブスが置かれている状況です。

※なお選手成績に触れると筆者の心が壊れそうになるので、各自下記リンクよりご参照ください。

Chicago Cubs Stats | FanGraphs Baseball

どう考えても「売り手」の夏だ…

ということで、こんなチーム状態からの巻き返しを図っても残るものは何もありませんので、今年もトレードデッドラインは100%売り手です。

ですが、なんでもかんでも売って過疎化していたプロスペクトを潤せばよかった昨夏とは違い、今年はかなり難しい立ち回りを要求されるでしょう。

カブスの具体的な話をする前に、MLBにおけるトレードデッドラインと今シーズンのトレード市場について簡単に触れていきます。

まずトレード市場でトップクラスの取引を予想される選手は、だいたい今シーズン終了後にFAとなる選手インサイダーなどからのリークで年俸高騰が予想されてチームが放出したがっているスター選手、まだ契約年数は残っているものの今が売り時と考えて放出される選手らがメインパッケージになります。2~3例目は主にオフシーズンでの成立が多いので、シーズン途中のトレードでは1例目のケースがメインとなりやすいです。

では今年の場合はどのような市場になっているでしょうか。

今シーズン終了後にFAとなる主な選手。この他にもカブスのコントレラス、ヤンキースのギャロ、ナショナルズのベル、ロイヤルズのベニンテンディらにも注目が集まっている。

今シーズン終了後にFAとなる選手を見渡すと錚々たる顔ぶれがそろう反面、多くのスター選手が現在コンテンダーとなっているチームに在籍していることがわかります。現在コンテンダーとなっているチームがそんな選手をシーズン途中で手放すということは考えにくいですよね。

ということは、マックス・シャーザー、トレイ・ターナー、カブスのコア3人衆、ホセ・べリオス、ネルソン・クルーズらがトレードされた昨シーズンよりは落ち着いた市場になることが予想できます。

が、本題はここからです。

「落ち着いた市場」というのは何も大きなトレードが起こらないと言っているわけではなく、コンテンダーのニーズに当てはまる選手が同一チームに複数人いるケースなどでブロックバスタートレードが発生することも往々にしてあります。直近でいけば今年3月にヤンキース⇔ツインズ間で成立したジョシュ・ドナルドソン、ゲリー・サンチェスらが絡むこととなったトレードが最たる例になるでしょうかトレードの意味合い的には全然違うけど…

また、昨シーズンにトレードデッドラインの先陣を切った、不惑の大砲ネルソン・クルーズのレイズへのトレード時には、当時レイズのプロスペクトランク10位で、東京五輪アメリカ代表ジョー・ライアンと同ランク17位だったドリュー・ストロットマンが見返りのプロスペクトとして移籍したように

半年間しか保有の確証ができない選手に対して評価の高いプロスペクトを複数人orMLB全体でも高い評価を受けているプロスペクトを出すことで、
同契約帯選手のトレードバリューを高騰させる可能性もあります。

実際に昨年はこのトレードが影響したのか、当時ヤンキースへの移籍が有力視されていたトレバー・ストーリー現レッドソックスの見返りとして、クリント・フレイジャーに加えてアンソニー・ボルビ、ケビン・アルカンタラをロッキーズ側が要求したなんてツイートが流れていたのを思い出します。信憑性に関しては何とも言えませんが。

ということで、昨シーズンほどMLBファンをワクワクさせる選手のトレードは起きないかもしれま千賀、カブスにとっては十分追い風となる市場になる可能性は秘めています。

ではここからは、カブスにとってどんなトレードデッドラインを過ごせればよいのかを自己中心的解釈で説明しようと思います。

トレードデッドライン立ち回りの個人的願望

その①:早い段階でロバートソンを高値で売る

デービット・ロバートソン(画像元:カブス公式Twitter

まず最初に手を付けるべき存在は、カブスのクローザーであるデービット・ロバートソンでしょう。

David Robertson Statcast, Visuals & Advanced Metrics | MLB.com | baseballsavant.com

東京五輪アメリカ代表にも選出されていたベテランリリーバーで、カブスへの加入は今シーズンから。かつてブロンクスを沸かせたセットアップは持ち前のカットボールと縦に大きく割れるカーブ、そして空振りを奪えるスライダーを武器に見事バウンスバック。かつての輝きを取り戻しました。

私はそんなロバートソンをできるだけ早く、そしてなるべく評価の高いプロスペクトとトレードできれば良いなあと考えています。

現在のロバートソンはチーム状況も相まってか、ここまで26試合で29イニングとやや控えめな登板で肩を消耗していないことや、決してクローザーだけではない豊富な中継ぎとしての経験を携えているヤンキース時代はリベラにつなぐ「8回の男」だったことから、投手事情に不安を抱えるコンテンダーから引く手あまたの存在となることが予想されます。

基本的にリリーバーに大きな対価が付くことはあまりないですが、今夏のトレード市場では同ポジションでソリッドな活躍を残している選手が少なく、かつ成績を残していると言われれば、同級生で同じような境遇を辿ってきたロッキーズのダニエル・バードやリリーフ転向で本格的な再ブレイクを果たそうとしているタイガースのマイケル・フルマーくらいです。あとはみんなコンテンダーに所属している選手たちチャップマン、キンブレル、ディアス、ジャンセンetc…ですし。

さらに、昨シーズンのカブスはクレイグ・キンブレル現ドジャースライアン・テペラ現エンゼルスアンドリュー・チェフィン現タイガスリリーバー3人で2チーム(貰ったのはホワイトソックスとアスレチックス)から合計5人ものプロスペクトを獲得。そしてそのパッケージにはニック・マドリガルやコディ・ホイヤーらが含まれる全部キンブレルのおかげとかそういうこと言わないという、考えうる限りで最高級のプロスペクトを引っ張ってこれた実績があります。

百戦錬磨のクローザーであったキンブレルとロバートソンを比較して良いのかどうかはわかりませんが、今夏のトレード市場においてリリーバーのTiER1に位置付けされる投手とみて間違いないでしょう。

そして「早い段階で売る」というのは、残り半年間の保有権しかない選手への見返りを吊り上げること。「高値」というのは評価が高いプロスペクト選手を見返りとして獲得することを意味します。特に前者は売り手に回るであろうカブスにとっては大きなアドを得る下地作りにもなります。

以上がロバートソンを早期取引したい私個人の私利私欲まみれな考えです。

その②:「売り過ぎず、溜め過ぎず」

今季終了後にFAとなるカブス選手一覧

先程も少しお話ししましたが、昨シーズンはとにかく片っ端から主力選手を売り払う作業をしていればよかったのですが、今年はトレード市場の目玉と言われているウィルソン・コントレラスと先述のロバートソン以外は注目度が低く、どちらかといえば後述する「残り契約があと1年以上の選手」の扱いについて考えなければなりません。

そのため、ポジションのデプスや数年後のカブスのビジョンなどを考えつつトレードの画策を進めていかなければいけないのではないかと思います。

その視点でいけば、若手のプロスペクトをリリーバーから経験させるカブスにとって、現在奮闘しているブルペン陣の選手は出しやすい環境と言えるでしょうし、逆に現在ソリッドな活躍を見せる野手陣を無理に放出してAAAクラスの打者をそろい踏みさせる必要性もありません

具体的な選手名はこの後1人ずつ紹介していきますが、とにかくあからさまに転売要因で獲得したであろう選手を除いてはむやみやたらに売ることまではしないでいいかなあと思っています。

その③:FAまでの契約年数が1年以上ある選手の相場価値を見極める

言ってみれば、今夏のトレード市場を大きく左右する部分とも捉えられる「FAまでにまだ時間がある選手のトレード」

今夏のTDL目玉選手の1人であるフランキー・モンタスさん

例えばそこの画像に、ヨーダン・アルバレス絶対抑えるマンのドミニカお兄さんがいますよね?

モンタスの契約状況

よく見るとモンタスはまだ年俸調停があと1年残っており、FAになるのは2023年シーズン終了後です。これにはアスレチックスのチーム事情があったりしますが、今夏のトレード市場で「残り1年以上の契約を持つ選手」の代表格ともいえる選手です。

そのため、上記のような契約期間を残している選手にとってはモンタスの市場価値でトレードでの見返りが大きく変わると思います。

そんな選手がカブスにも2~3人ほどいますので、後ほど紹介しますよ。

ということで、ここまではなぜカブスの立ち回りが難しくなそうなのか、そしてどのように選手を売りさばいていくのが良いかを浅はかながら考察してまいりました。ここからは「じゃあカブスって今どんな選手が売れそうなの?」ロバートソンは先程紹介したので割愛という内容に移行していきましょう。

残り半年保有組

ウィルソン・コントレラス(C)

われらのコンちゃん

注目度:★★★★★(5/5)

長年に渡ってカブス不動の正捕手の座を守ってきた男が、このTDLを目前にしてオールスター級の成績を引っ提げて帰ってきました。

Savantも真っ赤だ!

今シーズンは昨シーズンの不調から復活して.272/.387/.494と見事なスラッシュラインを記録しているだけにとどまらず、xwOBA.397と打球の質も一流xOBA(.384)との乖離も小さいため、今後も安定した成績を維持できることでしょう。

ゴームズとコントレラスのフレーミング指数。拡大推奨

守備面に目を向けると、フレーミングがリーグ捕手の平均以下となっています。しかしハイボールゾーンや右打者のインローに関してのフレーミングは悪くなく、守備性能が著しく劣るということもありません。そもそもコントレラスは内野スタートの選手なので、練習の賜物ともいえるべき成績ですが…。なお、2塁へのポップタイムは1.93MLB上位の強肩と言えるでしょう。

今年は守備に目をつぶっても全然いいくらい打っている+貴重な打てる捕手ということもあって、トレード市場の目玉選手との声もあがっています。

インサイダーの記事では、ジェームズ・マッキャンのアップグレードを図りたいメッツ正捕手不在だがコンテンダーとしての可能性を残すジャイアンツ。打撃難の捕手を補いたいアストロズらが有力候補に挙がっていましたが果たして…

クリス・マーティン(RHP・RP)

何か知らんがマーティンは北海道よりアーリントンのイメージが強い

注目度:★☆☆☆☆(1/5)

今年からカブスに加入したクリス・マーティンも十分トレードで売り抜ける可能性があるでしょう。

名前のところに張り付けた選手成績を見てもあまりパッとしない印象を受ける方もいらっしゃると思います。それも大勢。

ただ全盛期を過ぎた感が否めないマーティンでも、|奪三振能力はまだまだ一線級《K%は25.8》ですし、何よりの長所である「BBを出さない」部分も優秀今年のBB%は4.3です。

そして現在のERA4.03とxERA3.37の乖離は非常に良い傾向で、4点台の割には投げてるボールが良いと判断できる部分もあるでしょう。それもこれもきっとめちゃくちゃな継投策のせいだと思いますが

リリーバーはどれだけいても良いと思うので、割と引き取り手はあるんじゃないかと思っています。

<続報>
日本時間7月31日に、ドジャースのザック・マッキンストリー内野手との交換トレードが成立しました

残り1年半の保有組

イアン・ハップ(R/S OF/DH)

注目度:★★★★☆

未来のカブスの運命を握っているハップさん

ここからは残り1年以上の契約がある組で見てまいります。

まずは新たなカブスの主軸となったイアン・ハップです。

カウントお構いなしにブンブン振り回すフリースインガーの巣窟としてお馴染みのカブスですが、このハップはきっちりとした選球眼の持ち主。コアの選手が在籍しているときはリードオフを務めることも多々ありました。

今シーズンは持ち前のパワーと選球眼を武器に開幕から好調。そして今までと大きく異なるのが被三振の劇的改善。今までのシーズンは平均30%前後で推移していた三振率が、今シーズンはなんと19.5%10%近く改善しています。

守備の方は「ゾブリスト二世」として期待をされていた選手だけに、やろうと思えば内外野計6ポジションを守ることのできるUT性も備わっています。一言も上手いとは言ってません。

トレード市場の外野手はロイヤルズのアンドリュー・ベニンテンディアスレチックスのラモン・ローレアーノレッズのトミー・ファムらが候補として挙がっていますが、これらの選手よりもパワーが備わっている点でハップが有利に立てる側面を持ち合わせています。

年俸も$6.85MMとペイロールを過度に圧迫させない優しい金額なので、評価の高いプロスペクトとの引き換えは十分あり得るでしょう。

ただし、このハップを出せば打の軸がいなくなるので、カブスは完全リビルドモードに突入することになります。

チームがどこまでハップを評価しているのか。類似した契約を結んでいる選手の市場価値はどのようになっているのか。この辺りの判断と決断が容易ではないため、売り手側の力量が問われる一件となるでしょう。

カイル・ヘンドリックス(RHP/SP)

注目度:★★★☆☆

※後日、カブスコラム7月号で特集します。

技巧派先発の代表格、ヘンドリックスさん


その他の選手

ここからは、そこまで候補に挙がっていない選手たちもピックアップします。

パトリック・ウィズダム(1B/3B/OF)

・契約的には問題ないが、今シーズン明らかに複数ポジションでの起用があり、時期的にも昨シーズンのクリス・ブライアントを彷彿とさせている。

・相変わらず息を吐くように三振しているが、その長打力はMLBでも上位クラス。当たれば飛ぶ魔力は最大級で、調子が悪ければマイナーオプション(あと3回)も残っているので使い勝手は悪くない。

・レッズのブライアン・ドルーリーのセンセーショナルな活躍もあるが、今年は内野のトレードチップが不作気味→ウィズダムも売れる可能性あり

ラファエル・オルテガ(OF)

・実は今シーズンも.270/.361/.402と打っている(RHP専用機)。
・外野3ポジションを守れるため、割と使い勝手が良い。
「第4の外野手」としての性能が備わっている

結び

ということで後半は駆け足での紹介となりました。

とりあえず今のカブスは、現状お先真っ暗です。メインで活躍してほしい選手は軒並み不調&故障状態。そして昨シーズンあれだけ思い入れのある選手たちを放出してプロスペクトを獲得してもまだMLB中位という泣きたくなるような現実を突きつけられてから早3か月。球団№1プロスペクトのブレネン・デービス君は開幕からの不振&背中を手術するし、あまりにもケガする先発陣のせいで無理やり昇格させられたケイレブ・キリアン君はMLBで大炎上するし…。

それでもセンセーショナルな活躍を見せたクリストファー・モレルや、リリーフで頑張るブランドン・ヒューズ、そして今のカブス先発陣を引っ張るキーガン・トンプソンの活躍など、決して暗い話題だけではないことも確かです。

今夏のトレード市場で昨シーズン程の対価を得られるかどうかはわかりませんが、とにかくカブスの未来が明るく、そして希望の持てるような夏になるといいなあと信じています。そろそろドラフトもあるしね。

ということで今回はここまで。また次回お会いしましょう。



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