Arrietaの人生に幸あれ
こんにちは、イサシキです。
4月から新社会人となり、皆さんの血税をいただきながらお仕事をして早1か月。最近は職場にも馴染み始め、初の研修出張(2週間前)を終えた矢先に言葉を失うニュースが飛び込みました。
2015年にサイヤング賞を獲得したJake Arrietaが12年に及ぶ現役生活に別れを告げたという内容でした。
私が言葉を失った理由はただ1つです。当時高校生だった私をMLBの世界へ、そして現在でも愛してやまないシカゴカブスへと引きずり込んでくれた張本人がこのArrietaだったからです。
今回は、今の私にたくさんの思い出をくれる原動力になったArrietaに関する最後の記事になります。
また、すべての事項について取り扱ってしまうとボリュームが増して読みにくくなるだけなので
などの出来事については今回取り扱いません。またTwitter等で触れることはあるかもしれませんが、今回はご承知おきください。
Arrietaとの邂逅編
衝撃の「シンカー」~2015年WCシリーズ~
始めてArrietaのピッチングをリアルタイムで視聴したのはこのゲームでした。
当時高校生だった私は、部活で痛めた腰の精密検査と治療プラン確立のために学校を欠席。その時何気なく見ていたのがこのゲームだったという、いろいろと奇跡的な展開でした。
勿論当時はMLBへの興味関心はそこまでなく、「あ、ダルビッシュとかマー君活躍してんなあ」「イチロー今日もヒット打ってんなあ」「ナカジはメジャーに上がれなかったなあ」くらいにしか思っておらず、ましてやこのゲームは日本人選手が出場していなかったため、最初は単なる暇つぶし程度にしか見ていただけでした。
ところがカブスの投手が投げる、極端なインステップから97MPHの得体のしれない「変化球」に対して筆者は唖然としました。言ってみれば「藤浪みたいな真っすぐだなあ」と思っていたり、まるで”Snake”のような曲がり方だなあと思ったり思わなかったり…。
そればかりか右左問わず際どいコースへズバズバ決まる”Nasty”なスライダーに、相手先発だったCole(現ヤンキース)にも容赦ない配球で三振を奪うそのスタイルにどんどん魅了されます。
そして極めつけは6回1死満塁のピンチでS.Marte(現メッツ)を併殺打に仕留めた時の熱いガッツポーズ。これがArrietaを、そしてカブスを応援するようになった最初の出来事でした。
のちにあの高速変化球を調べたところ、Arrietaの得意とする「シンカー(ツーシーム)」だということが判明し、さらには同年に22勝を挙げていて防御率も1.77ということも知ったため、私は本気で「今最もメジャーで良い投手はBumgarner(現Dバックス)と、このArrietaだ!」と、非常に短絡的な結論を導き出していました。
また、この試合のインタビューでArrietaは
と語っており、今後の厳しいポストシーズンの日程をまるで鑑みたような漢気発言にも心を打たれたというのが正直なところでした。高校生だった私には十分すぎるカッコいい言葉だったんでしょう(そのインタビューを見たのは数日後でしたが…)。
結果的にこれがカブスにのめりこんでいく第一の理由になりました。
Arrietaへの激情にも似た心酔編
CoolでHotなDominator~2度のノーヒッター~
熱狂したWCシリーズから1か月くらいたったある日、Arrietaがサイヤング賞を獲得したというニュースを目にし、再びArrietaのことを調べるようになりました。そこで出会ったサイトがBaseball-Referenceでした。
勿論高2で野球しかやっていなかった自分にとっては今ほど英語を読めるわけもなく、成績の部分だけかろうじて追うことができていました。
とりあえず2015年の成績を調べたいという一心でiPhone5sをスクロールしたりタップしたりしていると、そこで気になるGame-Logを見つけました。
それはArrietaのシーズン27試合目の登板試合、対ドジャース戦で達成されていたノーヒッターゲームでした。
メジャーに興味を持つ前の出来事なので、この試合はハイライトで見ました。WCのような圧巻ともいえる投球内容とは思わなかったものの、9回の3者連続三振(J.Turner、Rollins、Utley)は今でもフラッシュバックするほどのインパクトがありますし、自身5連勝中という勢いを前面から感じ取れる投球だったように見えました。そのあとの記者会見でパジャマ姿で登場したとかしないとか…。
そして2年連続のノーヒッターを達成したのは同地区のレッズ戦。この日は途中から大量リードと集中力が切れかける展開にも関わらず、8回までパーフェクトピッチング。9回の先頭Schebler(現ロッキーズマイナー)に四球を与えたものの、その後のBarnhart(現タイガース)、Cozart(現在FA)、Suarez(現マリナーズ)を抑えました。
本当の「推し」へ~2016年薬物疑惑~
そのノーヒッターから約1週間後、とある記事がアメリカ全国紙のUSATODAYから特集記事として発行されました。
それは簡単に述べると、「Arrietaに薬物使用疑惑が出ている」というものでした。これを報じたのは全米でも屈指の知名度を誇るBob Nightengale記者。当時の自分はそんなこと知る由もなく、ただFull-Countから流れてきた日本語の記事を閲覧していました。
上記3つの記事の内容で述べられていた疑惑を簡潔にまとめると
ということでした。
薬物疑惑が出たのはArrietaだけでなく、当時ナショナルズに所属していたBryce Harper(現フィリーズ)らにも同じように疑惑が立っており、急激な好成績で疑いの目を向けられるのも仕方ないことかと思って目くじらを立てずにいました。ただ私はArrieta本人が放った一言で、我に返ったのです。
この一言は、オリオールズ時代からエースポテンシャルを持つ投手として期待されながらもなかなか芽が出ず、苦しい思いをしてきたArrietaだからこその重みを感じるもので、「本人を信じずに何がArrietaファン、そしてカブスファンだよ」と自分に思わせてくれた一件でした。思えばここが本気でカブスを応援するターニングポイントになったかもしれません。
続けてArrietaは
と話しました。全面的に自身の薬物使用疑惑を否定しています。この言葉も自分自身には非常に刺さり、いかにArrietaという人間が生半可な気持ちで野球に取り組んでいないのかということがわかり、心を打たれました。
Arrietaの薬物疑惑に関しては関連記事を是非お読みください。決して特筆した記事とは言えませんが、Arrietaという人間が垣間見える言葉が随所に散りばめられていると思います。
そして推しは英雄へ~2016年POシーズン~
そしてArrietaは108年ぶりにカブスを世界一へと導く英雄となります。
2016年のArrietaは昨年同様…とはいかず、6月で前年から続いていた自身の連勝記録が20でストップ。なかなか制球が定まらない場面が多く、与四球も増加。18勝を挙げたものの前年の圧倒する投球はやや影を潜めた年になりました。
それでもポストシーズンではさすがの活躍ぶりを披露。まずはジャイアンツとの地区シリーズ第3戦で先発したArrietaは、6回を2失点でまとめる投球に加え、ジャイアンツのエースBumgarner(現Dバックス)のお株を奪う先制3ランホームランを放ちます。
ドジャースとのチャンピオンシップシリーズでは負け投手になってしまったものの、チームはドジャースを4勝2敗で下し、インディアンズ(現ガーディアンズ)との「ワールドシリーズ制覇から最も遠ざかっている球団VS2番目に遠ざかっている球団」という異例のワールドシリーズに進出します。
このシリーズでは2戦目と6戦目に先発登板。決して本調子とは言えないながらも、持ち前のシンカーと鋭く曲がるスライダーで三振を量産。どちらも5.2イニングを投げて計15個の三振を奪い、2戦ともに勝利投手となりました。
決して万人が称賛するピッチングではなかったのかもしれませんが、このArrietaやLester、Chapman(現ヤンキース)らがいなければ、もしかしたら5戦目でコロっと負けていたかもしれません。それだけにこのArrietaの熱投が強く自分の中にも残っています。
余談:交わらないArrietaとDarvish
筆者が奇妙な疎遠を感じているのは、Arrietaと現パドレスのYu Darvishです。まあ簡単に言えば、2017年オフシーズンに2人は入れ替わるようにカブスを出入りし、2020年オフにも入れ替わるようにして出入りしたということです。
本当にそれだけです。
Arrietaの帰還編
それでも救世主だった90MPHのシンカー~2021年4月~
2020年オフ。フィリーズからFAとなっていたArrietaを、カブスは1年600万ドル+2022年相互オプション(バイアウト200万ドル)の契約を結びます。
そうです、4年ぶりに英雄が帰還したのです。Arrietaがカブスに帰ってきたのです。
確かにフィリーズ時代は序盤こそ好調だったものの、2019年に肘の手術を行ってからは球速も低下し、かつての面影は消え失せてもはやローテ当落線上の投手となっていました。それでも、私はArrietaが帰ってきたという事実がうれしかったんです。ただその喜びの感情だけだったんです。
それと当時に、Arrietaがここでキャリアを終えるんだということも同時に感じていました。
2021年のArrietaといえば、カブスでもパドレスでも思うような成績を残せなかったイメージが強い方もいるでしょう。
実は4月に関してはカブス先発陣のエースだったんです。決して長いイニングを消費できるワークホースぶりはありませんでしたが、6先発で3QSを達成。HendricksとDaviesがERA9点台までに打ち込まれているとかいう先発ローテ壊滅危機を救う、まさに救世主だったんです。
決して2015年のようなシンカーを投げるわけでも、誰にも負けないウイニングショットであるスライダーを投げるわけでもありませんでした。正直シンカーの球速が90MPHほどしか出なかったときは、言葉も出てこないくらいショックだったんです。
彼はそれでもチームのために、必死に腕を振り続けてくれました。
今思えば、これが最後の灯だったかもしれません…。
終わりを感じた夏~2021年6月~
実は5月も3回のQSを記録するなど好投を続けていたArrieta。しかし5月最後の登板となったレッズ戦で炎上し、そこから転がるように背信投球を続けます。
さらに6月最初の登板となったジャイアンツ戦は熱中症の症状からか、ベンチ裏で嘔吐するほどの体調不良の中で登板して2回6失点と、監督であるRossの起用法にも疑問を抱かざるを得ない部分もありながらどんどん調子を落としていきました。
もしかしたら、それは彼の化けの皮がはがれただけだったかもしれません…
Dear:My Eternal Hero
その後Arrietaは奇しくも私の誕生日である日本時間8月12日(日本時間)にカブスからリリースされた後、パドレスに移籍。ここでも思うような結果を残すことはできませんでした。
それでも、現役最後となる年にカブスを選んでくれたこと、自分にメジャーリーグという最高のコンテンツを教えてくれたこと、そして何より、自分をカブスの世界へと導いてくれたこと。その全てがこの”Snake”からでした。
私はこれから死ぬまで一生の間、Arrietaのことを忘れないでしょう。何物にも変えられない数々の思い出を貰った選手に、最後の言葉を贈ります。
そして、Arrietaの雄姿を忘れない。
いつまでも、私にとってのWrigleyの英雄はArrietaだから。
2022.5.1 あなたを愛してやまない日本人カブスファンより
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