新作・映像作品 大霊獣ジャガラ制作日記①
今回からようやく、現在制作中の新作映像作品についてご紹介して行きます。今回はコンセプトやあらすじ、現時点での進行状況、年間予定などをご紹介したいと思います。
作品コンセプト:ホラー映画と怪獣映画の融合
本作を作る上で、コンセプトとして掲げているのが「ホラー映画と怪獣映画の融合」です。
ストーリー作りの方法論として「ありきたりなストーリーに、あるものを掛け合わせる事で斬新な話に作り替える」というものがあります。例としては「ゾンビランドサガ」は「アイドルもの」×「ゾンビ」という感じですね。自分も、しばしばこの方法論に則ってストーリーを考えています。
もともと自分は怪獣映画と同じぐらいホラー映画が好きなので(女幽霊 / 仄暗い水の底から など)、この2つを掛け合わせてストーリーを作れないか?というのは、割と前から考えていました。
この度実行に移そうと決めた決定打は、某大学の特撮サークルが作っていた、ホラーテイストの自主怪獣映画を見た事でした。
「ホラーで怪獣」という、前々から自分も考えていたアイデアで売り出していたので「これは先を越された…!」という気分で本編を視聴したのですが、結論「全然ホラーを分かってないじゃないか!」という感想を持ちました。そして、「ホラー映画も怪獣映画も等しく愛する自分なら、もっと面白いものが作れる!」と思い、一念発起した次第です。さらに、あまり開拓されていない組み合わせなので、新鮮さも十分にあると思いました。
幽霊とストップモーションの相性
さらに、これまで通り「ストップモーション向きのキャラクター」という事を考えてみても、自分はJホラーの幽霊はストップモーションと相性が良いと思えたのです。
Jホラーを代表するキャラクターと言えば、貞子と伽耶子でしょう。彼女達(親しみを込めてこう呼びます)が登場する作品は多数ありますが、普通の人間には出来ない動き、見方によっては昆虫じみて見えるモーションをしている場合が多いように思います。とくに伽耶子はカクッ、カクッ、というような動きが特徴的です。貞子も、初登場の「リング」でテレビから出てくるシーンなどは、じっくりじっくり近寄ってくるようなモーションです。
こうしたモーションを観察していると、ストップモーション特有のクセが、幽霊の不気味さ──すなわち、人間離れした独特のモーションの表現と相性が良いのではないか。と思えてくるのです。つまり、幽霊をモチーフにしたストップモーション作品は、映像表現として上手くいく見込みがあると思えるのです。その事が、より一層作る意欲を高めました。
「幽霊怪獣」という設定の利点
一般的な怪獣映画において怪獣が登場するシーンには「怪獣が歩くたびに壊れるビル群」や「逃げ惑う一般市民」などが思い浮かぶと思います。
一方でそれらのシーンは、セット作りやエキストラの確保・街中での大規模撮影など、自主制作でやるにはなかなか難しいシーンでもあります。
しかし「幽霊のような怪獣」という設定によって、そういった「怪獣映画のお約束」を無視して怪獣映画を成立させる事ができると僕は思いました。
「霊的な存在なので、一般市民には姿が見えない、故に逃げ惑わない」「霊体なので、ビルなどの物体をすり抜けられる」という具合です。そういう意味でも、「幽霊怪獣」というのはやりやすいな!と思いました。
怪獣デザイン・設定
とは言っても、「幽霊」と「怪獣」という、全く異質な存在を掛け合わせるのは、なかなか難しい事です。果たして怪獣の設定はどうすれば良いのか。まずそこで頭を悩ませましたが、まず今回はビジュアルから考えていくことにしました。
初期ラフ
こちらが最初に頭の中にあったイメージをそのまま描き起こしたラフになります。幽霊らしいザンバラ髪、目の代わりにポッカリ開いた穴、手の形をしたツノ、芋虫のような、足のついた尻尾というイメージは、最初から頭の中にありました。
描いたラフから「どんな怪獣なのか」を想像して設定を考えることにしました。「怨霊の集合体」という設定では、GMKのゴジラと設定が被りますし、ありきたりな感じもします。むしろ「厳密には幽霊ではない別の何か」の方が良いのではないか。と思いました。
そこで思い立ったのが「死を司る神」という設定です。幽霊を超越した、地獄の神、「死そのもの」という設定にしようと思いました。「ラスボスを異形の神にする」という点は、僕が敬愛するホラー監督の白石晃士監督がよくやる展開だったりもします。個人的に1番しっくりきたので、そうする事にしました。
ただ、オリジナルの神だと劇中での説明の難しさや、オリジナル故の設定の浅さなどが危惧されたので「日本神話のイザナミノミコトが化身した姿」という設定にしました。こうして、怪獣の大まかなイメージと設定が決定しました。
ストーリー・演出
デザイン・設定が決まったので、次にストーリーを考えました。怪獣のデザイン・設定を活かせるようなストーリーにするにはどんなものが良いか。また、ホラー要素を入れつつ怪獣映画に仕立てるにはどうすれば良いか。そんな事を考えてストーリーや演出を組み立てていきました。
まず、本作の怪獣は「幽霊」という設定はあるものの、本質は「怪獣」な訳です。つまり、人間よりも遥かに大きいスケール感があります。画面演出でも、そうした巨大感を表現する必要があります。
そうなってくると、いわゆるJホラー的な表現で代表的な「ハッキリと登場はしないが、登場人物の背後に、ボヤッと像が映っている」や「机の下や家具の隙間からのぞいている」といった、等身大の表現は必然的に出来ない訳です。となると、他の演出を考えねばなりません。
しかし僕は、海外のホラー映画でよくある「ビックリ系演出(突然怖い顔が画面に現れたり、上から落ちてきたり、物音で脅かしたり)」という演出はあまり好みではありません。そもそも「恐怖」と「ビックリ」は違う物だと思っています。
Jホラーの魅力と言えば「仄暗い水の底から」に代表されるような、ジメーッとした、陰鬱な空気が始終画面から漂ってくる感じだったり「出そうだけど出ない」というソワソワ・ドキドキが長期的に続いている感じだと思います。
僕はそういう感覚に心が躍るわけで、ホラーをやる以上は少しでもそういう要素を入れたいな…と思っています。本作においても、可能な限りそうした雰囲気を入れつつ、等身大の幽霊ではなく、あくまで巨大な怪獣という形に落とし込んで演出をつけています。もちろん、最終的に狙った通りのものになるかは、今の段階ではまだ未知数ですが。
上のような見せ方を意識しつつ、次は全体的なストーリーを組み立てていきました。
設定の話でも触れましたが、僕は白石晃士監督(貞子vs伽耶子 ノロイ 地獄少女 オカルト コワすぎ!シリーズなど)の作風をリスペクトしています。白石監督は、いわゆる王道系のホラーに見せかけて、予想の斜め上をいく展開、王道のセオリーから外した展開を多用する方です。「カルト」で描かれている「心霊現象が起こる家で除霊を行なっていたら、幽霊どころではなく異界の神が元凶だった」という展開が分かりやすい例です。一言で表現するならば「小規模だと思っていた霊現象が、終盤あたりでとんでもない規模だった事が分かる」という流れが白石監督の作風だと思います。
僕は、本作もそういう展開のストーリーにしたいなと思いました。具体的なストーリー内容については今回は伏せさせて頂きますが、冒頭で若者3人が心霊スポットに行くところから始まり、そこから徐々に規模が大きくなっていく…という感じです。さらに最後は、しっかりと怪獣映画らしい文脈も織り交ぜました。
こうして、どうにか一つのストーリーとして固まったのです。
キャラクターラフ
本作は実写作品である訳ですが、イメージを固めるために、ストーリー確定後にキャラクターのラフを描き起こしました。
【主人公たち】
「真中拓也」が主人公です。他2人は、主人公の彼女、友人になります。この3人が心霊スポットに行くところから物語はスタートします。
3人とも大学生ですが、それぞれの性格をイメージして服装を考えました。
【霊能者】
途中から登場する霊能者です。これまた白石監督の作品に度々登場する「どう見ても胡散臭いが、メチャクチャ強い霊能者キャラ」を意識したキャラクターです。ホームレスで、ヒッピースタイルというイメージです。
ロケハン
僕が映像作品を作る時は、基本的に「大まかなアイデア」→「デザイン起こし」→「脚本」→「ロケハン」→「絵コンテ」という順に進めます。ロケハンを先に行ってから絵コンテを起こします。
まず脚本で場所のイメージを固めて、イメージに合う場所を探して、現地の地形や環境を見てから、カメラワークや画づくりなどを考え、コンテに描き起こす、という感じです。
実際ロケハンで回った場所は以下になります。(一部)
熱海 某所
群馬 某古墳
立川市内
これらは、ほぼ確定したロケ地です。今回のドラマパート撮影は、東京、静岡、栃木、群馬の一都三県を縦断して行う予定です。社会人となり、通勤のため自分の車を持った事で、遠方での撮影が可能になりました。これは、「ヤゴン」を作っていた学生の時には無理だった事で、一つ映像のクオリティが上がる要素になりうると思います。
今回は制作中の作品という事もあり、現時点でコンテの公開は控えさせていただきます。
造形物制作
コンテまで描き終わったところで、造形物制作を始めました。
【雛形】
第一段階として、まずは怪獣の雛形を製作しました。こちらは、自分が担当しました。デザイン画をもとに、立体にしたときのシルエットも意識して造形しました。
【ストップモーション用人形】
僕が作った雛形を元に、友人にストップモーション用人形の制作をお願いしました。ちなみにこの友人というのは、「ヤゴン」の制作経緯のお話で触れた、高校時代の、特撮を作っていた彼です。
彼はストップモーションの専門学校に通っており、またストップモーションの造詣が深い事もあり、僕が作るよりマトモな造形をしてくれそうなのでお願いしました。
結果的に、雛形のシルエットとは異なるものになりましたが、コレはコレでアリ、と思えるものになりました。最後、髪の直しと彩色直しは僕が行いましたが、ほとんど彼の仕事です。きちんと動く人形にしてくれました。
さらに感動したのは軽さです。「ヤゴン」の時は全身を石粉粘土で作っていたので、重すぎて自立しない人形になってしまいましたが、今回の人形はウレタンが主な素材であり、ほとんど重さを感じません。それゆえ、重力を気にしながら撮影する必要がなく、大変ありがたく思っています。
小道具制作
小道具の制作は、全て僕が担当しています。小道具は何種類かあり、現在も制作中です。
【絵巻物】
こちらは、全て手描きで制作しています。天然和紙を使い、古ぼけた印象にするために、コーヒーバックでエイジング加工をしました。題字や中の文章は、依頼サイトにて書家の先生にお願いしました。
【油絵】
こちらはただの油絵ではなく「ある仕掛け」を施しています。もちろん、今この場で明かすことはできませんが。なお、油絵の小道具は他に4枚制作する予定です。
キャスティング
社会人になって映像作品を作る上での課題の一つが、キャスティングです。
学生の時は、大学構内に「役者募集」の張り紙をバラまくだけで、それほど人を集めるのに苦労はしませんでした。が、社会人になってからはその手は使えません。
そこで僕は先輩に相談したところ、シネマプランナーズという、映像関連の役者・スタッフ募集のサイトを利用しました。
結果的に、多くの希望者が集まり、選考を行なってキャストを確定させる方ができました。いずれも、テレビcmや他の自主制作映画で役者経験のある人達で、演技力も確かです。キャストの情報も、現時点では公開を控えようと思います。
課題は資金の確保
本作を制作にあたっては、現在進行形で直面している課題があります。それが資金の確保です。なんと言ってもこれが最大の課題です。
「ヤゴン」の制作にはトータルで7〜8万円ほどかかっています。ほとんどは交通費と特殊部隊の衣装代です。こちらはバイトの給料と、多少親に出して貰い工面しました。
「ハレー」の制作には8万円。こちらは、作画を手伝ってもらったお礼として1人2万円払ったので、×4で8万という事です。こちらは、卒業間近に夜勤バイトをして工面しました。
いずれも、学生には痛い出費でした。が、今作の制作には、さらに多額の資金が必要になります。
まずは機材。学生の時は、映像科の先輩に頼んで、映像学科の所有する機材を無償で貸して貰う事が出来ました。また、基本はスマホで事足りる撮影が多かったのでそれほど頭を悩ませていませんでした。
が、今作はホラーという事もあり、ほとんどが夜間の撮影です。夜間の、明かりが少ない状態で綺麗な映像を撮るには、それなりのカメラがないといけないのです。普通のスマホでは、そもそも暗すぎてほとんど見えなかったりもします。その為、夜間撮影に耐え得る性能のカメラが必要です。
こちらはレンタルする事もできますが、ロケの都合上複数回に分ける事になるので、レンタルするよりも中古を購入した方が安いです。そして、そのお値段ですが… カメラ本体で16万円。加えて高倍率レンズが6〜8万円ほどになります。レンズの値段だけで前作、前々作の制作費と同じな訳です……
さらに、機材はカメラだけではありません。これまた夜間撮影に必須な照明機材、またブレのない映像を撮るのに必要なジンバル。スモークを炊くためのスモークマシン。これらは購入ではなくレンタルするつもりですが、トータルで3〜4万ぐらいは見込んでいます。
これら機材にプラスして、造形物の材料費。さらに、もしスタジオを借りてロケをする場合、1時間1〜2万単位でお金がかかります。トータルすると、少なく見積もって25万ほどお金がかかるのです……
基本的に給料から支出する事になりますが、一人暮らしなので生活費はありますし、さらにこう言ったご時世なので、ボーナスもカットされており、お金の確保は非常に困難です。正直、多少お金も借りていますが、それでも足りそうにはありません。そこで…
クラウドファンディングを実施
クラウドファンディングのページを作る事にしました。こちらは4月中に作る予定です。正直、自分のような素人のアマチュアが作る作品に出資してくれる人がどれほどいるか、それほど期待はできません。が、他に手段が無いのです。望みは薄くとも、少しでも可能性を信じるしかありません。
過去作を観ていただいた方はわかると思いますが、今まで僕の作った作品は、決して優れたものではありません。アラが目立つものも多数あります。が、それは技術力以外に、根本的に最低限の機材や環境を用意するお金が無かったというのも一因だと思っています。ですので、十分な資金さえ確保できれば、過去作を凌駕する作品を作ることができると確信しております。
最後に
最後の方で資金調達のお話をしてしまいましたが、こちらは本当に興味を持ってくださり、また少しでも援助頂ける方がいれば… 程度に考えております。仮にクラウドファンディングでお金が集まらなくても、成人向け漫画を描いてDL販売したり、副業で収入を得る事も考えております。
大きな課題はありますが、最後まで諦めず、良い作品となるように全力で取り組んでいく所存であります。必ず完成させるよう努力いたしますので、どうか暖かく見守ってくださいますと幸いです。