患者Ⅿさん

今回は私の訪問看護人生で一番印象に残っている患者Mさん(仮名)のお話をしようと思います。

このポストに限らず、食事中の方はご注意下さるよう予めお願いいたします。

彼女は44歳の若い独身の女性でした。通常患者さんは65歳以上の高齢者が多いので44才で訪問看護を無料で受けられる人はあまり居ません。

若い人だと保険会社からの許可が下りなかったり、homeboundではない(訪問看護を受ける患者さんはhomeboundでなければならないという決まりがあります)等の理由で障害、精神障害が無い場合は殆どうちに照会が入ってくることはありません。

Mさんは、なんらかの感染症にかかりしばらく放っておいたら脳に感染が広がってしまい、昏睡状態に陥りました。

ICUに入院中、血圧がかなり下がったため、血圧を上げる薬剤を投与されたところ手足が壊死してしまい、四肢切断となりました。

目が覚めて自分が手足を失ったと知った時のショックは如何程かと想像もつきません。最後に覚えてるのは体調悪いなーって思って日々過ごしてたってこと、そしてすぐ病院に行かなかったことをひどく後悔していました。

病院でしばらく過ごした後、リハビリ施設で数週間過ごし、今回アパートに一人暮らしという設定で退院して来ました。お母さんが近くに住んでいましたが、ボーイフレンドと住んでいたのもありMさんとの同居は拒否されました。

しかしながら四肢を失っていきなり1人暮らしとはかなりハードルが高いのです。しばらく何処かケアを受けられる施設に入って慣れてきたら1人暮らしすれば良いのではないか、と思いましたが彼女はこの決断をしました。

自治体からの補助で毎日ヘルパーさんが5時間入って、食事、洗濯、入浴等のお世話をしていました。ウクライナ人の若いお兄ちゃんでした。彼女も旦那さんや彼氏以外の若い男性のヘルパーさんに入浴介助をしてもらうのは嫌だったと思います。

しかも両手がありませんからプライベートな部分もヘルパーさんに洗ってもらうしかありません。でも浴槽に入れたり出したりと彼女を抱えることが出来る人しかダメでしたから、女性のヘルパーさんは無理だったのです。

そのウクライナ人のお兄ちゃんもとても頑張っていました。私は週に2回、一回1時間くらいの訪問でした。Mさんは精神状態も不安定で私にも怒鳴ったりキツイことを言っていたので、想像はついてましたが私が行くたびに彼は私を外に呼んで

毎日当たられて怒鳴られて辛い。僕はこんなに彼女のことを思って頑張っているのに。

と悲しそうに言っていました。

うん、辛いね

と話を聞いてあげるとちょっとだけホッとしたような表情を見せてくれました。

今彼のウクライナに住むご家族が無事であることをお祈りします。

長くなるので続きはまた次回!