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【創作大賞2024 恋愛小説部門応募作】君を見つけて
※実はこれフィクションですが
夢の下りはほぼ実話なんです。
いつか書けたらが叶いました!
ついでに恐れ多くも
創作大賞2024に応募しました・・・。
かわいいファンタジーGLです♪
第一章
朝、目が覚めたとき
涙がこぼれた。
「まただ・・・・。」
目をこすり
涙を拭うと
いたたまれない気持ちになる。
決まって
ある夢を見るたびに
泣いている。
それが
幼い頃から続いている。
きっかけは
小学校の時の遠足だった。
ある神社の前を通るとき
石につまずいて怪我をしてしまった。
遠くにいる担任教師に
膝から流れる血をみせると
すぐさま駆け寄り
境内の広場に抱きかかえて連れて行かれ
応急処置をしてくれた。
誰も居ないはずの境内に
ふと
見知らぬ高学年の少女の気配がした。
「あきおくん・・・」
その少女は
私に向かってそうつぶやいた。
「え?!」
驚いてそう言葉に出すと
その少女は消えていた。
その出来事は
一瞬だったけれど
長い夏の日に
白昼夢を見たような感覚で
ずっと
心の中でインプットされていた。
第二章
その出来事から
数日後
私は夢を見た。
境内で出会った少女が
今度は
神社近くの公園にいて
ベンチに座っていた。
白いシャツとスカート
黒髪のロングヘア
はにかんだ笑顔がとても可愛かった。
その少女は
また私を「あきおくん」と呼び
夢の中で
私は彼女の幼なじみだった。
「あきおくん」と
その少女はとても仲が良く
学校へ行くのも
帰りも
うちに帰るまでに
外で遊ぶのも
ずっと一緒だった。
あるときは
帰りが遅くなるほど
楽しく遊んでいた。
この夢は進行形で続いており
見るたびに
ちゃんと
時間経過がある。
しだいに
高学年の少女は
高校生となり
そして・・・・
ついに
その少女は
「あおきおくん」に告白するのだ。
私である「あきおくん」もまた
すっかり
彼女のことが大好きだった。
普段
至ってノーマルな私は
女子を好きになることなんてないのに
どこか頼りない
私である「あきおくん」は
このとき
彼女の告白を聞き終えるまでもなく
彼女を抱き寄せ
長い口づけをする。
すごく
すごく不思議な気分だった。
会ったこともないその少女を
私は
「あきおくん」という存在で
大好きで
愛しているのだ。
彼女を抱き寄せる感覚
彼女を愛する感覚
彼女にキスする感覚
すべて
自分じゃないのに
自分なのだ。
「大好きだよ・・・」
自分でも信じられないくらいに
慈愛に満ちた
「あきおくん」の低い声。
このとき
彼女がすべてで
また
自分も「あきおくん」なのだ。
抱きしめた少女は
ふと自分を見上げ笑顔を見せ
一筋の涙をこぼしていた。
そして
「あきおくん」である
自分もまた泣いて夢から覚めるのだ。
第三章
こんな風な夢を繰り返し見ると
やはり
この少女のことが気になって仕方が無かった。
一体誰なんだろう。
そして
なぜ私は「あきおくん」なんだろう。
少女と「あきおくん」の関係を
どうにか調べることは出来ないだろうか?
ぼんやりと考えていた。
きっかけは
夏祭りだった。
あの遠足でいった神社で行われる夏祭りに
ふと足を運んだときのこと。
出店の前にたたずんでいる浴衣姿の少女が目にとまった。
私ははっとなり
目を疑った。
その少女は間違いなく
あの夢に出てくるあの少女そっくりだったのだ。
「うそ?!」
私は思わず言葉にして口を塞いだ。
その少女が私を振り返るとニコッと笑った。
口から胃が飛び出るくらいの衝撃!
目の前にあの子がいる!!!
私はすぐさまその少女の前に行き
突然挨拶した。
「あの、その・・・こんにちは!」
あまりの興奮に
とっさに出たのはこのよくわからない言葉。
誰かもわからない女性に
突然挨拶されて
少女はびっくりした表情だった。
「・・・、あ、こんにちは!」
頭の中で
挨拶されきっと知り合いなのだろうと
反射的に挨拶した様子だった。
やっちゃったなー
私はしどろもどろになり
どうにもこうにも
恥ずかしさのあまりに真っ赤になりうつむいた。
「あのう・・・私のこと知ってるんですか?」
少女は真面目な顔をして私に向き合い声をかけてきた。
「ああ、ええ、そのう・・・・
知り合いに似てると思って声かけてしまって・・・すみません!」
あまりの恥ずかしさが度を超え
私はその少女に背を向け走り出した。
なにやってんだー!
私は振り返らずに祭り会場を後にした。
家に帰り
頭から水のシャワーを浴び
舞い上がっていた自分から
少しだけ冷静に戻れた感じがした。
そういえば・・・
なんとなく
あの少女は小声で
自分へ向かって
何かを言っていたような気がする・・・。
第四章
夏祭りの出来事があった後でも
やっぱり私はあの夢を見続けた。
もちろん
毎日ではなく
でも
私は「あきおくん」となり
彼女にキスをして
泣いて起き上がる。
不思議な感覚。
「あきおくん」は私で
そして・・・
あの少女は
「夢の中の彼女」になりかけていた。
私は
あの夏祭りの時にあった少女のことが
とうとう本気で気になってしまっていた。
つまり
どうしてもやっぱり彼女に会いたい。
そんなことを思っていた。
おかしいよな。
こんなの絶対に。
でも
心は彼女への愛で溢れている。
会ったのは夢の中。
あの夏祭りの少女は他人だ。
そんなのわかってる。
でも
どうにもならないこの気持ちは
どうしたらいいんだろう?
完全に苦しい片思い・・・。
「あーーーー!!!もーーーー!!!」
私はベッドで起き上がる気にもならずに
ふてくされてゴロゴロしていた。
そういえば
あの子なんか私に言ってたよな?
なんて言ったんだろ???!!!
記憶をたどって何か言葉をつなげてみる。
「あ?い?か?・・・ず?ね?」
必死にそれらしい言葉を探す。
謎解きは昔から得意だった。
そして・・・
繋がったこの言葉。
「相変わらずね」
私ははっとなり飛び起きた。
第五章
この日から毎日
学校の帰りに
時間のある限り
あの神社に足を運んだ。
できる限り、あの少女が居そうな場所も探した。
願掛けのように
神社にお参りして
どうにか会えるように祈った。
あの子は私のことを知ってる。
そして
あの子はやっぱりあの夢の彼女だ。
会ってどうしたらいいかわからないけれど
できれば
やっぱりまた会いたい。
理屈になる
答えなんかない。
ただ、私はあの子のことが好きだから。
それから
どのくらい日にちが過ぎただろう。
その日は
帰ろうと思った矢先
突然の夕立に遭い
しかたなく
神社の軒先で雨宿りしていた。
ふと
人影が見えた。
「・・・?!あ!!!」
赤い傘を持って
ゆっくりと歩く姿は
間違いなくあの子だった。
隣町の高校の制服を着ていた。
あ、そうか高校生だったんだ!
そりゃ、そうだよね。
同じくらいの年だし・・・。
でも、やっと会えた!
ダッシュして彼女に追いつき
前に走り込んだ。
「あのー!また会えましたねー!」
意気揚々と
目の前に立ちはだかる私に驚きつつ
ゆっくりと
下から見上げた彼女は
本当に美しかった。
透き通る白い肌。
黒くて大きな瞳。
肩に掛かる柔らかな髪からは
かわいらしくて形のよい耳がのぞく。
ブラウスの水色のリボンが
とてもよく似合っている。
「あ、あのとき会った・・・?!」
彼女はそういうと
きれいなピンク色の唇に
白い歯をのぞかせて
満面に笑みを浮かべた。
「あ、覚えていてくれましたか?」
「え、もちろん!」
「・・・よかったあー!」
お祭りで突然声をかけて
走って逃げた私を変だと思っていたに違いないが
とにかく
ここは覚えてくれていた事に感謝したくなる。
「あの、すごい濡れちゃってるけど・・・」
すっかりずぶ濡れの私をみて
彼女はクスクス笑いながら
傘を差しだして
私を傘の中に入れてくれた。
一緒の傘の中で
信じられないくらいに
話が盛り上がった。
そうまるで
ずっと昔から一緒にいた幼なじみみたいに・・・。
第六章
「あ、ここのバス停からうちに帰るから・・・」
彼女はそういうと
ニッコリ笑って小さく手を振った。
またね!と互いに手を振りあい
駅前にあるバス停で私たちは別れた。
数分前までは何も知らないはずなのに
まるでこの一時間が
とてつもない長い時間を経ているように感じた。
また会えたこともうれしかったし
やっと
名前を聞くことが出来た!
「・・・ミナトちゃん」
うれしくて
何度も何度も
名前を繰り返してみた。
「ミナトちゃん・・・」
そう言葉に出すと
胸がドキドキする。
鼓動が早くなる。
そう
これは私の初恋の物語だった。
好きだの
愛してるだの
絵空事のような物ではない。
これはれっきとした
純愛、恋愛だ。
私はミナトちゃんに恋をしていた。
その日から
何かとミナトちゃんに会う約束を取り付けて
一緒にいろんな所に行った。
実は後で聞いた話
ミナトちゃんは
あの夏祭りの日の前に引っ越しをして
転入したばかりだったとのこと。
そして
何かと高校で用事があって
帰りは遅かったが
たまたまこの日は早めに帰れたらしく
偶然、神社であって
私が声をかけたというわけ。
でも、
こんなふうに
新しい土地でお友達が出来たことが
うれしかったらしい。
聞いてみれば
なんだーとなるけど
私にとっては
とてつもなく長い時間をかけて
彼女と会っているわけで・・・。
第七章
「今度はここに行ってみよー」
「んー!楽しそうだね!いこー!」
新しくできたカフェに行こうと誘って
また週末の楽しみが出来た。
私たち二人は
話の合う
どうみても仲の良い友人同士だった。
ミナトちゃんは
私が好きだとは思ってもないに違いない。
会えるのはうれしいけど・・・。
そう
会えるのはすごくうれしい。
でも・・・。
あれから
あの夢はまったく見なくなった。
「あきおくん」である私は
ある意味成就したのだった。
でも
でも
私はミナトちゃんと
ちゃんとした恋人同士になりたい!
好きだから
愛してるから
やっぱり
こんなお友達同士じゃあやだよ・・・。
会うたびに惹かれていく。
どんどん
ミナトちゃんの魅力を知っていくし
どんどん
好きになっていく。
好きだっていったら
嫌な顔されるかな?
そりゃそうだよね
女の子同士だもんね・・・。
「はー!もーーーー!!!」
ベッドにふてくされてゴロゴロした。
これがきっと
私が「あきおくん」だったら違っていたんだろうか?
ふとそんなことを考えた。
私はどうしようもない
ジレンマに陥りそうだった。
第八章
そして週末・・・。
新しいカフェはすごく人気で
一時間以上並んでようやく入れた。
そのせいで
少しだけ帰りの時間が遅くなった。
それで
なんとなく
二人ともすぐに帰りたくはなかった。
ミナトちゃんは
帰りのバスの時間を
一時間だけ
ずらしてみると言った。
私は「うん」とうなずき
一緒にいれる時間が長くなったのを
すごくうれしく思った。
とくに行くところがなくて
やっぱり
またあの神社の近くの公園にいってみた。
二人でブランコに乗り
またとりとめのない話で盛り上がった。
あっという間に
一時間が経ってしまった。
「もう帰る時間だね・・・。」
私はちょっとさみしそうな声を出した。
とぼとぼと
ミナトちゃんをバス停まで見送るよう
歩き出した瞬間だった。
後ろから
ミナトちゃんは
私の手を強く握りしめた。
はっと
振り向くと
ミナトちゃんは
あの大きな黒い瞳を潤ませて
私を見つめていた。
何も言わず
じっと・・・。
何かを悟るように
私を見つめるその目は
夢の中のあの少女そのものだった。
「私・・・・・・・・。」
ミナトちゃんは
声を震わせていった。
その声を聞いて
私はミナトちゃんを抱き寄せ
唇にキスをした。
そして
ミナトちゃんを抱きしめ
耳元でこういった。
「大好きだよ・・・。」
自分でも驚くくらいに
低く透き通る声で。
この言葉をずっと言いたかった。
ずっとずっと
こうしたかった。
ミナトちゃんを見ると
大きな黒い瞳に
たくさんの涙が溢れていた。
ポロポロとこぼれる涙は
あの夢の少女そのものだった。
私も泣いていた。
あの夢から起き上がる前のように・・・。
第九章
「私・・・・・・!」
ミナトちゃんは
泣きながら私にしがみついた。
私もミナトちゃんを思いきり抱きしめ
「うん」と頷いた。
ついに
私は
こうして
ミナトちゃんと・・・・!
好きな気持ちは
ミナトちゃんも一緒だったんだ!
こんなにも
心が満たされていて
こんなにも
ふわふわして
気持ちがいい事ってあるんだ。
ミナトちゃんに触れている部分は
まるで溶け合って
この世の時間を超越していた。
これが恋人時間ってやつなのかな?
夜空は澄んで
満月の明かりで二人が照らされていた。
ずっとこうして抱き合っていたい・・・。
ふとミナトちゃんをみると
泣いていたことが嘘のように
今まで見たことのないぐらい
晴れやかな笑顔だった。
今までは
私と居るときは
なんとなく心配事でもあるように感じた。
どこか
悲しいような辛いような表情を見せるときがあって
きっと
転校してきて心配なことがあるのかな?と思っていたけど・・・。
笑顔のミナトちゃんは
最高にかわいかった!
「ミナトちゃんの笑ってる顔かわいいね!」
私は大好きなかわいいミナトちゃんのことを
たくさん褒めたいと思った。
「私・・・私やっと会えたんだもん。
やっと好きって言えるから!」
私は、ん?と不思議な声を出してしまった。
「ん?どういうこと?」
それから
ミナトちゃんは長い説明してくれた。
第十章
ミナトちゃんが高学年の時
熱を出して学校を休み
ある夢を見た。
ミナトちゃんは「アキラくん」で
私にそっくりな少女が登場し
幼なじみで
とても仲良しで
何をするのも一緒だった。
ミナトちゃんである
「アキラくん」は
私であるその少女のことが好きだった。
高校生になったある日
ミナトちゃんである
「アキラくん」は
私であるその少女に告白する。
キスをして
泣きながら目が覚める。
そう
私の夢と全く一緒だったのだ!
ミナトちゃんは
私を初めて夏祭りで見て
本当に驚いたらしい。
私に会えるように
あれから
ずっと
あの神社に願掛けしたのだという。
こんなことって!!!
私もミナトちゃんも
初めましてじゃなかったんだ!
ずっと
ずっと
昔から知り合いだった。
それが夢の中だとしても
私たちは
やっと
こうして巡り会えた!!!
最終章
私とミナトちゃんは
雲一つ無い
高い青空の下
手を繋いで
海のみえる公園を散歩していた。
夏の暑さは消えて
心地よい秋の日差しがまぶしい。
海の向こうには
大きな船がみえる。
ミナトちゃんは
風になびく髪をなでながらいった。
「私たちってすごく不思議だよね。」
体をひねり
私の前に立ちこう言った。
「だってね・・・あきおくんにアキラくんだよ?」
クスクス笑いながらこう続けた。
「結局、男の子同士だったとしても
私たち恋してたんだねー。」
そうだ。
きっと
もし
私たちが
「あきおくんとアキラくん」
だとしても恋してた。
私とミナトちゃんは
お互いに顔を見合わせて笑った。
私は
もちろん
ミナトちゃんが
「アキラくん」でもちっともかまわない。
だって
結局ミナトちゃんなんだから!
お互いに笑いながら
歩き出した。
好きだって思う気持ちは
何も変わらない。
どこで
だれと
どんな出会いをしたとしても
きっと
恋に落ちたら一緒だ。
たった一つ
好きだと思う気持ちは・・・。