カンボジアボランティア活動記録①たくみ日本語学校編
Girl Panic!! ガールパニックボランティア活動記録
2020/01/31《カンボジア シェムリアップ たくみ日本語学校》
「カンボジアでは、大学まで出て英語が話せる人でも初任給は2万円くらい。日本じゃあり得ないでしょ?とにかく日本で働ければいい。日本は憧れの国なんです。だから、ここではただ日本語を教えるだけじゃない。彼らが生きていくための仕事につながる教育、そして日本の習慣やマナーを伝えてるんです」
シェムリアップのたくみ日本語学校を訪ねた朝、学費無料の日本語教育機関として州の認可を受け5年前からこの学校を運営している今井巧さんが私たちに話してくれました。
タクミさんはおだやかな話し口で学校立ち上げの経緯やカンボジアでの教育、農業、男女差等も教えてくれて、それはどれも間違いなくネットでは拾うことのできない生きた情報で『私たちに一体何ができるのか?』考えさせられる問題提起のようでもありました。
話をしていると9時近くになって最初の女性生徒が登校してきました。タクミさんの正面に立ってしっかりと目を見ながら
「おはようございます」
深々とお辞儀をすると、タクミさんもそれに応えます。
同様に先生たちと挨拶を交わしたあと私たちのところへもやってきて、恥ずかしそうにしながらしっかりと頭を下げて挨拶をしてくれました。慌てて私たちも立ち上がり
「おはようございますっ!!!」
お辞儀しながら大きな声で挨拶を返したところでひとり、またひとりと登校してくる生徒たちが後ろに見えたのを合図に、バタバタと準備をはじめることになりカンボジアでのガールパニックがスタートを切ったのでした。
あっちゃんとのんちゃん美容師コンビが学校の外の道路に面したテーブルに鏡とイスを並べて美容室とメイクアップブースが出来上がり、教室ではネイルとアクセサリー作りを教えるよしえちゃん。帰国子女で英語翻訳とバレエの先生で今回は折り紙も教えるみずほちゃん。一番奥のキッチンではクレープ生地のレシピを書いた紙を壁に貼って私がスイーツ教室の準備をします。
9時を過ぎて生徒たちがそろって教室のいすに座り、ホワイトボードの前に立った私たち5人が順番に自己紹介をしていきます。好奇心と真剣なまなざしで注目を向ける生徒たちを見渡していると、目に入ってきた教室の壁に貼られたクメール語とその下のひらがな
『ひゃくぶんはいっけんにしかず』
それはまさに私たちがカンボジアでお役に立ちたいと思っていた支援のかたちでした。日本語を学んで日本で働くことを目指す方々に日本の職業や働き方、生活するためにどんな準備をすべきか実際に目の前で見て知ってもらうということです。
美容師、メイクアップアーティスト、パティシエ、ネイリスト、バレリーナ。様々な経歴と職業に触れてコミュニケーションしてもらうことで、カンボジアにいながら日本語を学んでいる方々に日本のカルチャーや生活を感じて体験してもらうためのボランティア活動です。
自己紹介をしながらそれぞれのブースを紹介し、すべてのブースに生徒たちが自由に参加できることを説明して体験がスタート!
はじめは恥ずかしがってなかなか意思表示してくれなかった生徒たちも、ひとりが髪のカットやネイルを始めたのを見ると、そのあとに続いて気づくと列を作って待っていてくれました。
スイーツのレッスンは一回につき7、8人ほどの生徒がキッチンに集まり、みんなクレープを知っているけど食べたことがないという人がほとんどで、少しも見逃さないように私の近くでぎゅうぎゅうになりながら真剣に授業を受けてくれました。
「うちに学びに来てる子たちは7〜8割女性です。みんな頑張り屋さんですよ。彼女たちは国に対して危機感があるから」というタクミさんの言葉通り、圧倒的に女性の姿が多くレッスンを始めて感じたことは、彼女たちはシャイで恥ずかしがり屋だけど明るくてとても素直で意欲と好奇心を持っているということでした。
ひとり一枚ずつクレープを焼いてもらうと自然と拍手が起こり、デコレーションして試食をはじめるとお皿の上のクレープは瞬殺でみんなの笑顔に変わっていきました。「先生、おいしいー」「先生、ありがとう」の声に自然とこちらも笑顔になって、「ありがとう」をお返し。それを見ていた他の生徒の「わたしもやりたい」の声に周りの生徒たちの手が上がってすぐにキッチンでレッスン再開。
仕事の前に来ていた人や、学校のあとにやってきた学生たちが入れ替わって、あっという間に午前中3時間、午後5時間が過ぎ1日で総勢100人近くの生徒たちが参加してくれました。
よしえちゃんに教わりながら作ったカンボジアの国旗色のきれいなピアスをうれしそうに見せてくれた女の子。おそらく人生初めてのバレエをみずほちゃんと踊ってお腹が空いたと言って、クレープを頬張る子。ヘアカットとメイクで綺麗に変身した女性の先生は、生徒よりも満足そう。
外が暗くなっても電球の明かりの下でカットとヘアアレンジを続けていたあっちゃんとのんちゃんは水を飲む暇もなかったと言って疲れているようにも見えたけど、それ以上の充実感や達成感みたいなものがあったのか、それとも疲れ過ぎてハイになってたのか、とにかくテンション高く笑っていました。
「先生、ありがとう」「日本にいきたいです。働きたいです」「先生、またカンボジアにきますか?」日本語の上手な女の子たちが話しかけてきてくれて会話をしたあとにFacebookとインスタで繋がりました。最後に学校の入り口でみんなで写真を撮って、また会いましょうと再会を約束して仕事や家に帰る生徒たちを送り出したところで20時近くなり、たくみ日本語学校でのボランティアを終えました。
正直なところ、私たちのたった1日のボランティアが、どれだけお役に立てたのかわかりません。彼女たちの将来に影響するような何かを提供できたのかも、今のところ何もわかりません。
だけど、「百聞は一見に如かず」
テキストやYoutubeには載ってないことを何か肌で感じて日本を日本人を好きになってくれていたらいいなと思います。
いつか彼女たちが「憧れの国」日本で仕事についた時、楽しいことばかりじゃなく思い通りにいかないことや、辛い思いや、夢見ていたのとは違う現実や、ストレスで病んでしまった日本人に出会って、もしかしたら嫌気がさしてしまうことがあるかもしれません。
そんな時に今日のことを思い出して、ほんわかと優しい気持ちになれるような記憶にしてもらえたら嬉しいなと私は心の中で密かに願っています。
私たちにとってはじめて触れたカンボジア人のあなたたちの笑顔が、たぶんこれからもずっと忘れられないのと同じように。
たくみ日本語学校の今井巧さん、後藤一幸さん、通訳してくださった先生方、アテンドしてくれた福ちゃん、そして日本でサポートとご支援をいただきました多くの皆様に心より感謝しています。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。