レコード棚を総浚い #15:『BARRY MANILOW / Even Now』
近年AORブームに乗っかって、過去の名盤が再発されるとその中にバリー・マニロウなんかが入ってたりするが、AORと言われるとちょっと違う気がする。
ちょうどいいのは多分MOR(ミドルオブザロード)の方で、カーペンターズなんかのイージーリスニング寄りの大人のポップスという感じ。
そんなバリー・マニロウのヒット曲の中でも抜群の知名度がある『コパカバーナ』収録の『Even Now』
佳曲揃いのアルバムの中でも、ちょっと嫉妬心を感じるほど光るメロディを持つ『リンダに捧げるバラード』に耳が止まる。
実際のマニロウの恋人リンダに捧げられた曲だそうで、曲中「彼」は一度もリンダに曲を捧げないが、マニロウ自身は何曲もリンダへの歌を書いているのだそうだ。
そりゃロマンティックな作風にもなるさ。歌にはその人自身がいつも鏡のように映し出されているものだからね。
時代はこの後、ジャズ寄りのクロスオーバーとロックが融合したAOR全盛期になっていく。 当時何かの雑誌で、AORはアダルト・オリエンテッド・ロック(大人志向)ではなくアルバム・オリエンテッド・ロックなんだという言説を見かけたが、近頃はとんと聞かない。
真相もへったくれもない和製英語だが、アルバム全体で何かを表現している作品が思いつかないところを見ると、アダルトの方が実態をよく表していたようだ。