レコード棚を総浚い #79:『Donald Fagen / The Nightfly』
ボイス・オブ・スティーリー・ダン、ドナルド・フェイゲンのソロ1作目『ナイトフライ』は、スティーリー・ダンの80年作『ガウチョ』に続いて、82年にリリースされた。
スティーリー・ダンの『エイジャ』『ガウチョ』そしてこのフェイゲンのソロ『ナイトフライ』は、大学時代のサークル活動の中で知った。
いずれも貸しレコードの録音テープで聴いていた。どちらかと言うと、テクニックに聴き惚れるような聴き方だったと思う。
東京に出た社会人時代、1993年ドナルド・フェイゲンの2ndソロ『カマキリアド』発売を機に、スティーリー・ダンおよびドナルド・フェイゲンの全CDを揃えることになる。
94年には、国立代々木競技場でのライブにも参加することができた。
その後もフェイゲン、そしてウォルター・ベッカーのソロ、スティーリー・ダンとしての復活作などがリリースされ、バンドの全史を追いかけることとなる。
一体どうしたらあんなに洒落た曲が書けるんだろう、というのが僕の最大の関心事だったわけだが、ドナルド・フェイゲン自身が作曲の秘密を語る教則ビデオがヤマハから発売されて一も二もなく買い求め、何度も観た。
結局わかったのは、フェイゲンが天然系の天才である、ということだった。
トラディショナルなジャズやブルーズのフレーズをポロリポロリとピアノで弾きながら、「ほらこう変形すると新しいだろう」と言うのだが、その変形がなんともインスピレーションに満ちていて、とても真似できるようなものではなかった。
結局、自分の中にあるもので作るしかないんだな、というのが学べたことで、それはそれで実に有意義だったと思う。