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レコード棚を総浚い #72:『Daryl Hall / Sacred Songs』

1980年リリースのダリル・ホール、ファースト・ソロ『セイクレッド・ソングス』

アルバムの内容よりも、まず気になるのがレーベル面に貼られたこの奇妙なシール。
前オーナーが貼ったものと思い込んでいたが、後日デヴィッド・ボウイの『ヤング・アメリカンズ』にも同様のシールを見つけ、どうやら当時のRCAレコードに何かが起きていたと推察された。

調べると、消されたものの正体はすぐにわかった。

Victorの文字と、『His Master's Voice』をモチーフにしたグラモフォンのアイコン、ニッパーくんである。
真偽はわからないが、ネットの情報を総合すると以下のようなエピソードとなる。
1975年、RCA(Radio Corporation of America)ビクターと日本ビクター、ビクター音楽産業の合併でRVC株式会社に再編、その際、権利問題からVictorの文字とニッパーのアイコンは日本では(アメリカでは継続使用の契約が締結された)都度使用料が課されることとなった。
それを嫌ったビクター日本法人が、レコード店に命じて現場での消し貼りを実行した、ということらしい。
もし、これが本当だとすれば現場のレコード店の皆さんのお気持ちが慮られる。

さて肝心の本盤だが、キング・クリムゾンのロバート・フリップのプロデュース作である。
ご自身の『エクスポージャー』、ピーター・ガブリエルの『II(Scratch)』とダリル・ホールの本作『セイクレット・ソングス』とで三部作を成す構想であったようだ。

ホール&オーツの78年作『赤い断層』にもロバート・フリップは参加しており、その時期にはすでに、このソロアルバムは完成していたようだが、あまりにもホール&オーツの音楽性とはかけ離れているとのRCA上層部の判断により発売が見送られていたそうだ。

今聴くと、それほど奇異な印象は受けないし、アバンギャルドな音楽でもない。
このロバート・フリップとのプロジェクトで吸収したものが、その後のホール&オーツの音楽に反映されていって、彼らのスタイルを形成していった証左ではないかと思う。


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