プレイフルラーニング
夏目@管理者です。2月11日、気鋭の発達心理学者、慶応義塾大学の今井むつみ研究室の主催するzoom研修会に参加しました。テーマは「プレイフルラーニング(playful learning)」。私は、楽しい!面白い!が子どもたちの(大人も)学習効率を上げるために一番大切だと思っているので、どんな内容になるのかな?とワクワクしながらzoomを立ち上げました。
さて、内容はどうだったかと言うと、面白かった!テンプル大学のキャシー・ハーシュ=パセック教授の講演では、従来の「直接指導」(教室での教科指導)よりも、学習目標をもった遊び、すなわち「ガイドされた遊び(guided play)」の方が、学習効率が上がるというエビデンスが数多く紹介されていました。例えば、分数や小数の学習も、体育館を使って巨大なボードゲームのようにすると、理解が進んだと実証されていました。そこまで大掛かりではなくても、ただブロック遊びをさせるのではなく、「お城を作ってみよう」とお題を与えたり、ブロックの色を一色にそろえることで、形に意識が向くようにしたり、ただ棒登りをするのではなく、棒に数字を書き込むことで高さの計測をしたり、少しの工夫で自由遊びは、ガイドされた遊びになります。
確かにそうだ!と思うと同時に、これって、特別支援教育や療育でしていることと似ているよね?とも感じました。私は仕事で小学校等を訪問することがありますが、特別支援学級の子どもたちが、楽しそうに勉強しているのを見かけることがあります。一方、普通学級にいる子どもたちは、教室内の「発言ルール」に従って意見を述べていたり、黒板に書かれた内容を時間に間に合うようにノートにただ写していたり、で、少なくとも楽しそうには見えない。教育が子どもたちに合わせるのではなく、子どもたちが教育に合わせているように見えます。子どもたち一人一人の興味や関心に寄り添う特別支援教育や療育の手法は、障害のあるなしに関わらず、子どもたちみんなに必要で有効なものなのだと思います。
キャシー先生の講演で紹介されていた、ユヴァル・ノア・ハラリ氏(ベストセラー「サピエンス全史」の著者)のメッセージも印象に残ったので引用します。「産業革命は、私たちに『教育の流れ作業モデル』を残していきました。チャイムが鳴ると同時に、同じ年に生まれた子どもたち30人が一斉に教室に入っていきます。1時間ごとに大人たちがやってきて、一方的に話し始めます。思わず、笑ってしまうような光景ですよね(笑)。ただ、過去の実績がどうであれ、この教育モデルがすでに時代遅れになっているという点では、ほとんどの人が同意すると思います。2050年、私たちにどんな未来が待ち受けているのでしょうか?」
昨今の不登校の増加や特別支援教育を受けるお子さんの増加も、現在の学校教育モデルが「時代遅れ」になっている証なのでは?と思います(アメリカのペンシルバニア州のある学校では、プレイフルラーニングを採用したことにより、特別支援教育の利用率が79%減少したという事例も紹介されていました)。
もう一つ、事例紹介で面白い!と思ったのは、プレイフルラーニングが「まちづくり」に発展していくことです。プレイフルラーニングの考え方の一つに、「学びは学校だけで起こる特別なものでなく、ありとあらゆる場所で起こるもの」というものがあります。仕掛けを作っておくことで、まちのそこここに、学びの場を作ることができます。スクールバス乗り場に数を学ぶビンゴゲーム、路地裏にすごろくマップ、などなど海外の事例で紹介されていました。こんなふうに、子どもたちのリアルな生活圏にさりげなく遊びと学びを誘うような仕掛けがあると、楽しいだろうなあと思いました。
私たちひらそるのいろにも、子どもたちが楽しく学べる仕掛けをたくさん作りたいと思います。
(追記:今井むつみ先生のHP(https://cogpsy.sfc.keio.ac.jp/ablearchives/)には、教育関連の興味深い動画がたくさんアップされています。オススメです!)