for dear...
ライブを撮り始めたきっかけってなんだったんですか
いきなりそんな突っ込んだ質問をするきみに内心驚きながらなんとなく話したことはたぶん「だいぶ途中から」だ。そもそも人間を撮ってはいなかったから最初は断っていたこと、今でも人間をかっこよく撮るというような意識では撮っていないこと、そんな話をしたのだけれど。
きっかけ は なんだったんだっけ
写真にのめり込む遥か前、生きるのが辛かった時代にわたしを救ってくれたのは音楽だった。それなりにメジャーなバンドのワンマンツアーを(おそらく地方だからこそ)ライブハウスで見れていたのは、今にして思えば幸福なことだったのだろう。そこには「おんがくのまほう」があった。
だからといってカメラマンになりたいとかそういうのは、なかったのよね。
何かを名乗ることは、何かを発する側に立つということ。わたしにとってライブハウスは「名乗らなくていい場所」で、名乗るべき自分のステージに立つための勇気をただひたすら受けとることが許される、唯一の場所だった。ライブを撮る人としてそこで「名乗る」ことは、その「唯一」を失うことでもあった。
写真をやり始めて、またライブハウスに頻繁に行くようになって、でもそれはワンマンではなくて、目当てのバンドと知らないバンドが幾つも出るブッキングっていうやつで、それまでとはだいぶ違った。けれど、そこにも「おんがくのまほう」は確かにあった。そうしているうちに好きなバンドはどんどん増えた。
こんな写真だけど、それでよければ。
わたしは「おんがく」に「恩返し」がしたかった。
いつかの「おんがくのまほう」があったから、わたしはここに生きていて、だから目の前のきみらに少しでもなにかを返せるのなら、と、思った。
なのに、続ければ続ける程、返し切れなくなっていく一方だよ。
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