ポストコロナの公演制作#7 【ネット配信・その2】
前回、よく考えず「ネット配信」を始めることの危うさについて書きましたが、こういった社会全体が混乱している時、自分たちも冷静ではなく、助成金や補助金があふれている時、無責任なコンサルタントの発言や怪しいネット情報を信じいろいろやったが、振り返ってみたら、何も残らないどころか、負債や後悔しか残らないことがよくあります。
「ネット配信」で収益を上げるためには
もちろん「ネット配信」を完全否定するつもりはありません。
コロナ禍前から可能性を感じ、積極的に取り入れた人は、その利点もわかっているでしょうから、どんどん進めていけばいいと思います。おそらく成功する可能性が高いと思います。
重要なのは、「コロナ禍前からどう取り組んでいたか」につきると思います。
トップミュージシャンやアイドルで、アリーナやドーム公演など成功させ、そのライブDVDが売れていた場合も、可能性は十分あると思います。多くのファンがいますし、演出や撮影技術もすでに高いレベルにあり、あとは配信する環境をどうするかですから。
例えば、ミュージシャンの矢沢永吉さんや山下達郎さんが、有料配信を始めたそうです。
こういう熱狂的なファンいる人気ミュージシャンで、映像にも、音源にもこだわった、DVDで販売できるコンテンツを、有料でネット配信するなら、収益を上げることがほぼ可能だと思います。
フラメンコやタンゴの動画では
フラメンコやタンゴで動画をさがしてみると、例えば「フラメンコ・フラメンコ」というフラメンコの映画や「ピアソラ 永遠のリベルタンゴ」というタンゴを変革したアストル・ピアソラの映画が、アマゾンプライムやユーチューブで400円で視聴することができます。
予告編を見ればわかりますが、こういった動画が、この値段というのは正直驚きです。でも、ネットでの課金は、そのぐらいが落としどころなのでしょう。
もし、日本でフラメンコのネット配信を有料でやったとして、来てくれるファンはいますか?その配信は、一般の人にとって、この映画より魅力的な内容だろうか?同じ土俵にあったとして、どちらに興味を持ってもらえるだろうか?こういった動画より、最低でも何か一つ勝っている点は絶対に必要だと私は考えています。
ネットの利点
そもそもネットの利点とは何でしょうか?感染リスクがゼロということを除けば、おそらく「距離や時間の障害をなくす」ことだと思います。
なかなか行くことのできない、海外で開催される有名なフェスティバルを仕事が休みの日にゆっくり見ることができる。とか・・・。
会うことなどなかなか難しい、超一流ギタリストのオンラインレッスンを受けることができる。レッスン動画を見ることができる。とか・・・。
こういった「距離」や「時間」の問題をいきなり解決できるのが、最大のメリットではないでしょうか。実例を挙げれば・・・
このように、小曽根真さんという超有名ピアニストが、自宅での演奏や話の動画をUPしてくれていて、それを自分の好きな時に楽しむことができます。そう簡単にミュージシャンの自宅にお邪魔して、カジュアルな雰囲気の中、演奏やトークを楽しむことなどできませんよね。それが「ネット配信」だと実現します。まさに成功例の見本といえるのではないでしょうか。
ただ、これは恐ろしいことで、成功者はさらに成功しますが、逆に自分たちのファンや生徒が奪われて、そちらに行ってしまう可能性があることを意味しています。あなたの動画は、その動画より面白いか?そのライブ配信より魅力的か?どうだろう?もう一度見直してください。
「ネット配信」はすでにレッドオーシャン
ユーチューブの世界などは、だれでも気軽に動画をUPできるので、気が付かない人もいるかもしれませんが、ユーチューバーたちが血で血を洗う競争をしている「レッドオーシャン」なのです。
ちょっと検索してみればわかるように、世界中の一流アーティストが、自分のプロモーションのため、クオリティの高い映像をUPしています。巨匠といわれるような方のお宝映像が見ることもできたりします。ユーチューバーたちによるアイディア勝負の動画もあふれています。
今から「ネット配信」をする人は、そういった人たちと同じ土俵にあがるということです。草野球のチームが気が付かないうちに、プロ野球に勝負を挑んでいる。そんなイメージです。おのずと勝負は見えてみませんか?
無料で見ることのできるコンテンツすら、これだけ競争が激しいのに、この世界で有料で配信し、収益を上げるため「明確に魅力的なもの」はどんなものか真剣に考える必要があると思います。
少なくとも「ネット配信」について自分がアマチュアで、本当にそれで収益を上げるつもりなら、プロになるための努力が必要だという「自覚」はもってください。
もし助成金をもらえたから、有料配信を始めるとして、撮影機材や技術も劣り、知名度もそれほど、撮影に適した舞台演出もまだまだ・・・。
で、世界に配信って・・・。そりゃそうですけど・・・。
多くの人に視聴してもらえて、ライブ配信チケットを買ってもらえる・・・はずないですよね。
では、オンラインレッスンはどうでしょうか?それについて、次回書きたいと思います。