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冷たい水の中を
Bリーグの24-25レギュラーシーズンが開幕した。
宇都宮ブレックスの初戦の相手は千葉ジェッツ。
新しいアリーナでの柿落としの試合相手として選ばれた。
相手のピカピカの新アリーナでの、初めての試合。
千葉ジェッツとの昨シーズン最後の試合は、あの悔しいチャンピオンシップ。
チームもファンも、自然と力が入った。
私たちにとってはただの開幕戦ではなかった。
昨シーズンのリベンジ。昨シーズンの自分達を超えたい。そんな気持ちが、選手たちの言動や表情に表れていた。
もちろん私たちもその気持ちがわかるからこそ、なんとかチケットを手に入れ千葉に駆けつけた。
少しでも、彼らの目に入るアリーナの景色の中に黄色が映るように。彼らと共に戦いたかった。
結果は、ブレックスの二連敗で終わった。
不確定な要素をはらんだ試合ではあったが、終わってしまったことに何を言おうがもうやり直しは効かない。私たちは、ブレックスは、負けたのだ。
試合が終わった後は不思議な気持ちだった。
悔しさは当然あった。やるせなさも、途方に暮れるような気持ちもあった。
でも、まだはじまったばかりだ。
むしろこの辛酸を舐めさせられるような試合を、残り58試合もあるシーズンの最序盤に経験できたことはチームにとって必ず活きてくる。
Bリーグは60試合のレギュラーシーズン後に、年間王者を決めるチャンピオンシップが待っている。
60試合を超えた後の、1年間の全てを集約した戦い。
レギュラーシーズン最も勝利したからと言って、必ず優勝できる戦いではない。そのことは、私たちブレックスファンが1番よく理解している。
レギュラーシーズンの中で最も成長したチームがその栄光を手にする。それがチャンピオンシップ。
そう言った意味ではまさに、昨シーズン優勝した広島ドラゴンフライズがそれを体現していたように思う。
エースの離脱やさまざまなトラブルに見舞われながらも、チームが一丸となりワイルドカードから優勝まで駆け上った朱色のトンボ軍団は、他チームファンからしても眩しかった。
金色の吹雪の中、祝杯を掲げている彼らを見ていて"来年はブレックスがここに立てますように"と強く願った。その気持ちはずっと変わらない。
昨シーズンはそのチャンピオンシップで千葉ジェッツに悔しい敗北を喫して幕を閉じた。
悔しい敗北の後に"次"はなかった。2回負けたら終わり、それがチャンピオンシップ。
でも今回の悔しい敗北には"次"がある。
今シーズンは負けたまま終わることはない。
辛酸を舐めるのは、これが最後ではないだろう。
悔しくて眠れない夜も、これが最後ではないだろう。
レギュラーシーズンは思ったより長く、そして実際過ぎ去ってしまえばあっという間だ。
ほぼメンバーの入れ替わりがなかったブレックス。
昨シーズン最高勝利率、東地区優勝のチーム。
彼らは変わらないことも出来るのに、それでも変化を恐れず挑戦をし続けている。
"シーズンの中で最も成長したチーム"になるために。
ケミストリーはあるといっても、全く新しいオプションとスタイルを体に染み込ませるには時間がかかるだろう。
今までできていたことが、できなくなることだってある。もちろん失敗も挫折もあるだろう。
変化することってすごく勇気がいることだ。
上手くいっていたことも含めて全て、新しい自分に生まれ変わることって簡単に選べることじゃない。
それでも、その挑戦から逃げずに向き合う彼らは、やっぱり凄くかっこいい。
今日よりも明日、明日よりも明後日より良くなるためなら、チームのためになるのなら今までの自分をアップデートできる。
その姿勢に、態度に、言動に、私は昨シーズンずっと勇気をもらい続けていた。応援したいという気持ちを持たせ続けてもらった。
それは今シーズンも変わらない。
彼らが宇都宮ブレックスである限り、宇都宮ブレックスのバスケットボールを遂行し続けようとする限り、宇都宮ブレックスはどのチームよりも強いと信じ続けたい。
今、彼らは冷たい水の中にいる。
水底に沈んでいる。
彼らは上の光を目指してその冷たい水の中をのぼり始めた。どれだけ鱗がボロボロになっても、きっとあきらめない。
だったら私は、その光が消えることなく彼らに届くように照らし続けよう。
彼らが激流に巻き込まれないように。
彼らが一丸となって水面に浮上できるように。
この現在地が1番底だったね、と最後には笑えるように。
シーズンは、まだ始まったばかり。
あとはただのぼりつめるだけ。