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本業の昇進を待つな!副業で上位タスクを経験しキャリアをブーストする方法 ~上位職視座を副業で先取り戦略~①
序章 従来のキャリア観を問い直す
今回から、2回に分けて、副業をキャリア構築に組み込む方法について説明していきます。転職によりキャリア転換を検討されている方にもキャあリデザインの参考としていただける内容となっています!
1. キャリアパスの常識が崩れはじめている
日本のビジネス社会において、“キャリア”といえば、従来は「会社員としての昇進」を指すのが当たり前でした。新卒で大企業や有望企業に入り、年功序列のレールに乗って少しずつ役職を上げていく――。特別に大きな失敗をしなければ、部長や役員に到達し、安定した老後を迎える。これが多くの人にとっての“黄金ルート”でした。しかし、今やそうした常識が揺らいでいます。
終身雇用の崩壊
昭和や平成初期までは「会社に長く勤めれば安泰」という暗黙の了解がありました。ところが、リストラや早期退職制度が当たり前になり、あの大企業さえ業績不振で大量解雇……などという事例も珍しくありません。業績が悪化すれば、たとえ勤続年数が長くとも容赦なく希望退職を募られる時代です。成果主義の広がり
年功序列から成果主義へと移行する企業が増えるにつれ、「ただ長く働いているだけ」では評価されなくなってきました。仮に10年目や15年目の社員でも、成果を出していない場合は昇進しにくく、20代の後輩がポンポンと管理職に就くこともあり得ます。ジョブ型雇用へのシフト
欧米型の“職務記述書”(ジョブディスクリプション)に基づいて雇用する企業が増えてきました。「何の仕事をできる人か」で給与やポジションが決まるため、従来のように「徐々に経験を積んで偉くなる」という仕組みとは違います。今までの“年功キャリア”が通用しにくくなっているのです。
こうした変化の中で、「一社に長く勤めていれば安泰」という幻想が崩壊しつつあります。そこで注目されているのが、自分自身でキャリアを作り上げるという考え方。組織の制度や上司の裁量に身を任せるのではなく、自分のスキル・経験・実績を“市場に対して”アピールしながら生き抜く道が求められているのです。
2. 副業解禁とジョブ型雇用へのシフト
ここ数年、多くの企業で「副業解禁」の流れが起きています。以前は「副業をするとクビになる」「会社の許可がないと禁止」などの規定が強かったところが、軒並み「就業時間外は自由にしてよい」「副業OK」という方針に変化しはじめているのです。
副業解禁の背景には以下のような要因があります。
労働時間規制や残業規制が厳しくなり、社員の時間が浮きやすくなった
人材の多様化・流動化を進め、イノベーションを促したい企業側の思惑
働き方改革の一環として、個人の自主性を重視する方向へ転換
一方で、ジョブ型雇用が進むほど、「会社にいるから安定」ではなく、「何ができるか」で評価される時代になっていきます。そのため、自分の専門性や実績を“外で”証明してくる人ほど、会社内でも評価されやすいという逆転現象が起こりはじめました。
例:
Aさんは本業では平社員だったが、副業では小さなWeb制作チームを運営し、クライアントとの折衝をすべてこなしていた。結果として、「会社の新規プロジェクトでディレクターを探しているが、Aさんならいけるのでは?」と社内で注目され、いきなり昇進――というケースが起こりうる。
このように、 「本業で昇進してから、さらに副業」という流れではなく、「副業で実績を積んだからこそ、本業でも評価される」 という逆転が起きやすい状況が整いつつあります。
3. 「上位職視座を副業で先取りする」という新しい戦略
従来、多くの人はこう考えていました。
「まずは本業で下積みをして、細かいタスクやルーチン業務を完璧に身につけてから、数年~十数年かけてようやく管理職になる」
しかし、それではあまりにも時間がかかります。しかも、会社によっては「年功」や「ポスト不足」などの理由で、どれだけ優秀でも昇進できないことがあります。そこで提唱したいのが、 「副業で上位職のタスク(=マネジメントや意思決定)を先に体験し、それを本業に還元する」 という逆転のキャリア戦略です。
副業であれば、少人数や個人事業のスケールであっても、自分が“意思決定者”になる環境を作りやすい。顧客との交渉や事業計画の策定、人材のアサイン(仮に外注を使うならそのマネジメントも含む)など、上位職が担うべき“全体最適の視点”をいち早く体験できるのです。
こうした「外での経験」を自らの実績として示せれば、本業の昇進面談や社内公募などで「プレイヤーだけの人材」ではなく、「戦略思考やマネジメントスキルを持つ人材」として認められるチャンスが増大します。
「下位職位ではミスばかりして評価されにくいのに、実は上位職のほうが適性がある」――そんな人にとっては、まさに突破口となる可能性があるのです。
第1章 下位職位と上位職位の本質的な違い
1. “プレイヤー”としての下位職位
企業において、いわゆる「下位職位」と呼ばれるポジションは、一般的に「プレイヤー」「実務担当」「スタッフ」などと表現されることが多いです。具体的には経理スタッフ、営業スタッフ、コンサルタント(ジュニアクラス)など、「与えられたタスクを正確にこなすこと」を主軸とするポジションです。
下位職位の特徴
ルーチン業務が中心
定型的な処理、既定のフォーマットに沿った作業など、ある程度決まった手順で行うタスクが多い。
成果指標が「ミスの少なさ」に寄りがち
経理なら仕訳や月次処理のミスを最小限にすること、営業なら与えられた顧客リストに対して適切にアプローチすること、コンサルタントなら上司の指示通りにリサーチ資料をまとめること、など。
チーム全体の意思決定には関与しにくい
会議に参加してもメモ取りや資料作成が主であり、戦略立案や大きな方針転換は上司が決めるケースが多い。
評価軸が細部の正確性・勤怠・コミュニケーション能力にシフトしやすい
イノベーションを起こすより、「ミスがないか」「時間通りに報告・連絡・相談できるか」が重視される。
こうした特徴を持つ下位職位は、実務処理能力が高く、細かいチェックが得意な人に向いています。一方で、「細かい作業が苦手」「大局観を持って先を考えるほうが得意」な人にとっては、あまり魅力的なポジションとは言いがたいかもしれません。
2. “マネージャー/ディレクター”としての上位職位
一方の「上位職位」とは、一般的に「マネージャー」「ディレクター」「CxO(執行役員)」など、人や組織を動かし、意思決定を行うポジションを指します。必ずしも人を管理するだけではなく、事業責任やプロジェクト責任を負い、大きな視点で“最適解”を模索する立場ともいえます。
上位職位の特徴
戦略的思考・意思決定が求められる
「どの案件にリソースを割くか」「この時期に何を優先するか」など、組織の目標達成のために重要な判断を日々行わなければならない。
チームマネジメントを任される
メンバーの業務状況を把握し、適切なタスク分配やモチベーション管理を行う。
人材育成・アサイン・評価なども視野に入ってくる。
クライアントや経営層との折衝
予算取り、案件獲得、プロジェクトの方針変更交渉など、大きな枠組みに関わるコミュニケーションが求められる。
成果指標が「どれだけ利益や価値を最大化できたか」
細部の正確性より、「全体を効率化し、より大きな結果を出せるか」を重視される。
数字目標(売上・利益)や組織目標(顧客満足度・プロジェクト成功率)など、スケールが大きい評価基準になる。
このように、上位職位は個人の細かい業務精度以上に、どれだけ組織全体やクライアントに高い価値を提供できるかが評価軸になります。そのため、「細かいチェックは苦手だけど全体の仕組みを考えるのは好き」という人や、「ルーチンより新しいアイデアを打ち出すほうが得意」という人にとっては、魅力的なポジションとなり得るでしょう。
3. どんな人が上位職位に向いているのか?
上位職位に向いている人の特徴は、以下のようにまとめられます。
戦略的思考が得意
目の前のタスクだけでなく、「この作業は全体のどこに位置づけられるか?」「どうすればより効率化できるか?」を常に考えられる人。
意思決定をすることに抵抗がない
「誰かに指示されるより、自分で判断するほうが好き」「優先順位を決めるのが得意」「失敗を恐れずチャレンジできる」など。
コミュニケーション力が高い
メンバーや他部署、クライアントとの調整を行うので、やりとりが多岐に渡る。人を巻き込み、モチベーションを高める力が必要。
変化に柔軟
上位職は環境変化への対応力も重要。予算の増減や人事異動などで計画が揺らいだときにも、冷静に対処し、次善策を講じられる柔軟性が必要。
これらに当てはまる人は、たとえ下位職位のルーチン業務で評価されにくかったとしても、実は上位職位では能力を発揮できる可能性が非常に高いのです。
第2章 下位タスクが苦手でも“上位職適性”のある人とは
1. ルーチン業務とケアレスミスの関係
下位職位で求められるのは「定型業務をミスなくこなす」ことが多いですが、世の中にはケアレスミスが多いタイプの人が一定数います。細かい数字のチェック、レポートの整形、数十行にわたるExcel管理などをやると、どうしても抜け漏れや誤字脱字が増えてしまう人です。
下位タスクで低評価になりがちな人の例
報告書のフォーマットが微妙にずれていたり、誤変換がそのまま残っている。
数字の入力ミスで決算数値や在庫表を誤って提出してしまう。
細かいルールを覚えておらず、同じミスを何度も繰り返してしまう。
こうした人は、どうしても「そそっかしい」「注意力が足りない」と見なされがちです。上司や周囲からすると、「もっと集中してやれないの?」と思われ、結果として評価が伸びにくい……。しかし、その一方で「全体の流れを読むのは早い」「大きな問題提起や改善提案は鋭い」など、違う領域での才能を持っているケースがあります。
2. 全体俯瞰思考と最適化への関心
下位タスクでケアレスミスが多い人ほど、逆に 「一つひとつの作業にじっくり時間をかけることが苦手」 だったり、「もっと効率化できるやり方があるのに…」と考え続けたりする傾向があります。
「なんでこんな非効率なフローで作業してるんだろう?」と常に疑問を抱く
「もっと大局的にシステムを組めば、手作業が減って精度も上がるのに」と考える
ルーチン業務の手順そのものを変えたくなる
このような思考を持つ人は、中長期的に見ると「仕組みを作る側」に回ったほうが力を発揮できる可能性が高いです。細かいエクセル作業を徹底的にミスなくやるより、「そもそもエクセル管理を自動化する仕組み」を導入するほうが好きなタイプ、ということですね。
3. 人を動かす能力 vs. 自分で動く能力
もう一つ重要なのが、「自分で手を動かすのは苦手だが、人にお願いして結果を出すのは得意」というケースです。たとえば、チームメンバーをアサインして「ここはAさんが得意だから任せる」「この作業はBさんに外注しよう」といった指示出しやコーディネートに長けている人。
組織はどうしても「まずは自分が動いて手本を見せろ」という文化が根強い場合が多いのですが、必ずしも「自分がプレイヤーとして超優秀」である必要はありません。現に、スポーツの世界でも「名選手が必ずしも名監督になるわけではない」現象がよくあります。それと同様に、プレイヤーとしては平均点レベルでも、組織をまとめる力が突出している人もいるのです。
第3章 実例から見る「上位職の方が向いている」3つのケース
ここでは、より具体的に「下位職位よりも上位職位で真価を発揮するタイプ」の例を3つ紹介します。
ケース①:細かい作業が苦手だが、大局観が優れるタイプ
1. ケアレスミスが目立ち、評価されにくい
たとえば会計コンサル会社に勤めている若手スタッフをイメージしてみましょう。彼はクライアントの決算書類をチェックしたり、Excelでデータ分析レポートを作成したりするのが日々の仕事。しかし、どうにも細かい計算や資料の整形にミスが出やすい。社内レビューでいつも修正指摘を大量にもらい、評価シートでも「注意力が欠ける」とコメントされてしまう。
2. しかし、全体構造を把握するのは得意
ただしその一方で、「このクライアントはそもそも財務フローがズレてるから、もっと根本的にシステム変えないといけないんじゃないかな?」とか、「同じ作業を別の方法でやったら半分の時間で終わらせられそう」といった洞察を次々と思いつく。
3. 上位タスクへの適性
彼の視点は、まさに “マネージャー”や“ディレクター” が担うべき仕事と直結しています。「最適化」「改善」「仕組みの提案」を考えられるということは、“上位職位の視座”をすでに持っていることを意味するのです。
プロジェクトマネージャー(PM)としては、「この案件の工数配分を見直せば、利益率が上がる」などの提案が可能。
ディレクターとしては、「クライアントの社内フローそのものを変えないと、表面をいくら直しても解決しない」といった全体提案が可能。
細かい仕事が雑=評価されない、と単純に考えてはいけません。 その人が本当に得意とするのが「マネジメント視点を持つこと」であれば、早めにそちらにシフトさせたほうが組織にとってもメリットは大きいのです。
ケース②:「仕組み作り」に強みを発揮するタイプ
1. ルールに従う仕事が退屈
例えば、「ベンチャー企業で日常の経理業務や総務を担当している」人を考えてみましょう。彼女は、決まったフォーマットに従って請求書を処理する、毎月同じタイミングで給与計算をする……といったルーチン業務が「つまらない」と感じているタイプ。
「なんでこんな非効率なフローなんだろう?」と毎日のように思ってしまい、実際にちまちまと入力する作業に集中できず、ケアレスミスを出してしまう。
2. 改善アイデアが次々に湧く
しかし、彼女は「クラウド会計ツールを導入すれば、手入力作業が激減するのに」「給与計算はもっと自動化ツールを使ったほうがいいのに」と次々にアイデアを思いつくタイプです。また、「社内コミュニケーションに関しても、なぜメールだけなの?チャットツール導入すればいいのに」など、仕組みを変える発想に長けている。
3. 上位タスクへの適性
こうした「仕組み作り」への意欲やセンスを活かせるのは、まさにディレクターや経営企画、戦略コンサルなどの“上位職的ポジション”です。ルーチン業務を極めるのではなく、業務フロー全体を設計・最適化する立場に立ったほうが、はるかに才能を発揮できるでしょう。
ケース③:意思決定・交渉スキルで差をつけるタイプ
1. 単純作業は埋もれてしまう
たとえば、新卒で入ったコンサルファームで、先輩たちからマニュアルに沿ったリサーチや資料作成を任されている若手社員。彼は、同僚と同じように調査して資料をまとめても、それほど差別化できず埋もれてしまう。単純作業の精度は「普通レベル」で、特に目立った評価は得られない。
2. しかし“どの選択肢がベストか”を見抜く力がある
そんな彼は、クライアントと対話するときに「質問の切り出し方」が上手く、経営者の狙いや悩みを深く引き出す才能を持っているかもしれません。また、何か大きな方針転換の意思決定を迫られたときには、状況を整理して「これはリスクが高いからもう少し情報を集めるべき」「こっちはすぐに着手して短期成果を狙うべき」と冷静に導いてしまう。意思決定力や交渉術に秀でているのです。
3. 上位タスクへの適性
こういう人材にとっては、数字の正確性を求められる下位職位のルーチン業務で“平均点”を目指すよりも、PM・ディレクターとして「意思決定の質」で成果を出すほうが圧倒的に向いているといえます。クライアントや経営層との対話を続け、最適な打ち手を決める立場に回ったほうが、個人にとっても企業にとっても有益です。
まとめ:こうしたタイプは「上位職位でこそ活きる」才能を持っている
「細かい作業は苦手だけれど、仕組み改善や大局観には長けている人」
「ルールに従うだけの仕事では飽き足らず、自ら新しいシステムを導入したいと考える人」
「単純作業では評価されないが、重要な意思決定や交渉の場で真価を発揮する人」
これらに当てはまる人こそ、下位職位よりも上位職位に向いているケースがあります。企業側も、昔は「下位職位を完璧にこなせる人が、上位職位にも向いている」と思いがちでした。しかし実際は「優秀なプレイヤーが優秀な監督になるとは限らない」。現場業務が苦手でも、マネジメントや戦略設計で開花する人材も確実に存在するのです。
第4章 “下位職位のタスク”は必要最低限でよいのか?
4-1. 「下位タスクを完璧にこなせる人=上位職に向いている」説の妥当性
企業内ではしばしば、
「まずは下位タスクをしっかりこなせなければ、上位職に就いてもうまくいかない」
という声が上がります。これは一理あります。たとえば、人を管理する立場になった際、自分自身が業務の中身をまったく理解していないと、メンバーへの指示や問題解決がうまくできない可能性があるからです。
4-1-1. 下位タスクの習熟がないと本当に困る事例
現場感覚を持っていないマネージャー
たとえば、営業現場を経験していないのに営業部門のマネージャーになった人がいるとします。数字管理や戦略設計はできるかもしれませんが、実際にはメンバーが抱えている「現場のリアルな苦労」を理解しきれず、机上の空論を振りかざしてしまう……というリスクが生じがちです。
結果、チームから信頼を得られず、「あの人は現場を知らないから」と陰口を叩かれてしまうこともあります。作業工数が読めないディレクター
Web制作会社やITプロジェクトで、制作・開発の実務をまったくやったことがないディレクターがプロジェクトを回すとしましょう。見積工数の計算が甘く、「こんな簡単なことなら1日でできるでしょ?」と発注してしまい、実際には3日かかって徹夜作業が連発……。こうなるとメンバーの不満は高まり、プロジェクト全体のモチベーションにも悪影響を及ぼします。
つまり、ある程度“下位職位の作業内容”を理解しておく必要は確かにあるわけです。
4-1-2. “必要最低限”のラインをどう考えるか?
しかしここでポイントなのは、 「下位タスクを完璧にこなす必要は必ずしもない」 ということです。
自らがプレイヤーとして“神レベル”に手を動かせる必要はありません。
「あの人、下位タスクはそれほど得意じゃなかったけれど、なぜかマネジメントはめちゃくちゃ上手」というケースが実際に存在します。
たとえば、プロ野球の監督を考えてみても、必ずしも現役時代に大活躍したスター選手である必要はないわけです。選手としては二流でも、監督としては一流、という人も実際にいます。それと同様に、 「必要最低限の現場知識や経験を得たら、あとは人に任せられる力を身につけたほうがよい」 とも考えられます。
4-2. なぜ下位タスクの現場経験が必要と言われるのか?
上で述べたとおり、「必要最低限の現場感覚はマスト」という意見は根強いです。そこには企業文化や組織論的な理由もあります。
4-2-1. 組織の信頼を得るため
日本の企業文化には、「下から叩き上げで昇進してきた上司は説得力がある」という考えがまだまだ残っています。つまり、マネージャーやディレクターが“現場の痛み”を理解しているからこそ、メンバーが安心して相談できるという面があります。
例:「この業務フローは無駄が多いんだよね」とメンバーがぼやいたとき、「わかるよ。実は自分も昔やっていて、同じ苦労をしたんだ」という言葉があるだけでも、チームの雰囲気は大きく変わる。逆に「現場を知らない上司」は“絵に描いた餅”の提案ばかりし、「言うは易し」で終わってしまう。
4-2-2. 自分が指示するタスクの要件・難易度を理解する
先ほどのWeb制作やITプロジェクトの例でも触れましたが、工数や難易度を把握することは、上位職位にとって不可欠です。自分が経験していないと、適切な期限設定やリソース配分が難しくなります。最悪、メンバーに無理難題を押し付けて炎上という結末を迎えることにもなりかねません。
4-2-3. 問題解決のヒントを得られる
下位職位の現場経験を通じて、どういうところでトラブルが起きやすいかという“肌感覚”を養えます。これがあると、マネージャーになったときに先回りして対策を打つことが可能になります。
「あの工程はレビューを二重に入れたほうがいい」
「ここの情報共有が抜けるとあとで大混乱になる」
など、具体的で実践的な対策を立てられるわけですね。
4-3. どの程度まで“こなせる”ようになるべきか?
では、具体的に「下位タスクはどこまで極める必要があるのか?」という問題について考えてみましょう。
4-3-1. “誰よりも得意”になる必要はない
繰り返しになりますが、下位タスクを神レベルで極める必要はありません。 むしろ、「突き詰めれば突き詰めるほど“プレイヤー”としての評価が上がり、結果としてそのままプレイヤーのエースとしてずっと活躍し続ける……しかしマネジメントには移行しにくい」なんてことも起こり得ます。
4-3-2. 「自分で最低限やれる」+「人に振り方を理解している」レベルが理想
最低限、作業の流れを実感できる程度
まずは数カ月~1年くらい、そのポジションで仕事を経験し、「ああ、こういう苦労があるんだな」と把握しておくレベル。誰かにアサインするときに、必要なリソースやリードタイムを大まかに見積もれる
これができれば、あとは“細かい作業が得意なメンバー”に任せることができます。細部でつまづいたときに、「どこがボトルネックになりやすいか」を想定できる
もし何か問題が起きても、どのステップでハマっているかを推測して、対策を講じられるわけですね。
このレベルであれば、十分にマネージャーやディレクターとして機能しやすいのです。重要なのは、「現場の論理」をわかったうえで“人を動かせるか”という点と、「少なくとも自分が作業者だったらどう感じるか」を想像する力です。
4-3-3. 会社の評価制度を理解し、タイミングを見計らう
多くの企業で、「〇年目までは下位職位としてしっかり仕事を覚えるべし」という暗黙のルールがあります。もしその企業文化が強い場合、あまりに早期に「自分はマネジメントが向いてるから」と言い出すと、周囲にネガティブな印象を与える可能性も。
そういうときは、ある程度は素直に下位タスクをこなしつつ、タイミングを見計らって上位タスクへ移行するチャンスを探すのが現実的かもしれません。
第5章 なぜ“副業”が上位視座の獲得に有効なのか?
5-1. 従来の「副業=お小遣い稼ぎ」のイメージを覆す
かつての副業といえば、「土日にアルバイトをして、少しでも収入を増やす」「在宅ワークで内職程度に細々稼ぐ」といったイメージが強かったでしょう。しかし現代では、副業=自分が“小さな事業主”や“経営者”的な視点を持てる場として活用する方法が注目され始めています。
5-1-1. 副業の種類が多様化している
コンサル・アドバイザー型
企業に対して専門知識を提供し、短期orスポットでアドバイスする仕事。ある程度の経験や知識があれば個人で請け負える。プロジェクトベースの請負型
Web制作やプログラミング、ライティングなど、自分のスキルを活かして請負契約を結ぶタイプ。小規模経営・起業型
オンラインショップの運営やコンテンツビジネス、あるいは小規模飲食店の開業など。自分が小さな社長として意思決定を行う立場。
5-1-2. 「意思決定者として動く」経験がしやすい
副業で仕事を請け負うときは、たいてい「自分の判断」で引き受けるかどうかを決め、納期管理やクライアント交渉なども行う必要があります。つまり、自然と“上位職位”的な要素(リソース配分、納期設定、価格設定など)を学ばざるを得ないのです。
本業ではまだ下位職位で指示待ちだとしても、副業では自分がリーダー、ディレクター、時には経営者的立場になっている感覚が得られます。
5-2. 副業がもたらす経営者感覚
5-2-1. 「自分がすべて責任を負う」覚悟
大きな組織の歯車として働いているときは、自分が失敗しても最終的な責任は上司や会社がかぶってくれる面もあります。しかし、副業で個人事業主のように活動すると、クライアントとの契約や納品責任をすべて自分が負うという緊張感が生まれます。
“リスク管理”や“信頼構築”に対しても、常に当事者意識を持つことになり、まさに上位職が担うべき視点が自然と身につきます。
5-2-2. 収益やコストの意識が芽生える
副業で自分がやる仕事の報酬がダイレクトに収益として入ってきて、外注コストがかかればその分利益が減る……という体験をすると、ビジネスの仕組みがよりリアルに感じられます。
「売上を伸ばす」「利益を最大化するには?」 と日々考えるようになる。
本業ではあまり意識していなかった “採算ライン”や“赤字覚悟の投資”という考え方に直面する。
これこそが経営者感覚 であり、上位職位に必要な「数字への責任感」の訓練にもなります。
5-3. クライアント折衝と意思決定の実践
5-3-1. “お客様の要望”をどう整理・優先するか?
上位職位で必要なスキルの一つに「取捨選択の意思決定」があります。クライアントやステークホルダーからさまざまな要望が出てきたとき、すべてを鵜呑みにせず、最適な落とし所を探る力です。
副業でフリーのWeb制作者をしているなら、クライアントから「この機能も付けたい」と要求があったとき、「その分追加で〇〇円かかりますよ」と交渉するのか、「それは納期に間に合わないので今回は難しい」と断るのか、など現実的な判断が求められます。
それを繰り返す中で、「すべてを抱え込むのは不可能」「顧客満足度と納期・コストのバランスをどう取るか」といった、“ディレクター的”思考が研ぎ澄まされていきます。
5-3-2. 金額交渉・納期交渉をする力
副業をやっていると、 「いくらで仕事を請け負うか」「いつまでに納品できるか」 といった交渉事は日常茶飯事です。この交渉力こそ、上位職がクライアントや取引先と折衝するときにも必須の能力。
値下げ交渉への対処やスケジュールのすり合わせ、契約内容の文言調整など、実践的な場面が多いほど、本業にもダイレクトに活きてきます。
本業で下位職位だと、自分が交渉役になる機会は少ないため、副業で“疑似管理職”として積む経験は非常に貴重といえます。
5-4. 小規模事業運営が“マネジメント力”を磨く
5-4-1. 人を雇わなくても“外注管理”でマネジメントを体験
仮に副業が軌道に乗り、案件が増えすぎると、一人ですべての作業をこなせなくなるかもしれません。そうなったとき、別のフリーランスや下請けに一部業務を発注する“外注管理”が発生します。
これはまさに“チームマネジメント”のミニ版といえるでしょう。
依頼する際の要件定義や納期設定、制作物の品質チェックなど、上位職がやるべきプロジェクト管理スキルを実地で習得できます。
5-4-2. PDCAを回すことの重要性
小規模事業でも、うまく回すためには PDCA(Plan-Do-Check-Act) を意識して動かざるを得ません。売上目標やコスト試算を立て(Plan)、実際に動いてみて(Do)、結果を振り返り(Check)、改善策を講じる(Act)――。
本業の下位職位だと“与えられたタスクを完璧にやる”ことに終始してしまいがちで、PDCAの上流工程(Plan・Check・Act)に関わりにくい場合が多い。
副業で自分が“事業主の頭”を使うことで、自然とPDCAサイクルの全体を学習できるのです。
5-5. 副業が“上位職視座”を鍛える最強の場である理由
ここまでの内容を総合すると、副業が「上位職位の視座」を先取りする絶好の場であることがわかります。下位職位での経験が浅くても、副業で“マネージャー”“ディレクター”“経営者”的役割を疑似体験することで、 「全体最適をどう考えるか」「リスク管理をどうするか」 といったスキルを習得できます。
さらに、それを本業にも還元すれば、「あの人は何やら外でプロジェクトを動かしているらしい」「交渉スキルが高いみたいだ」と社内でも注目されやすくなる――。ここにこそ、 「本業の昇進を待たず、副業で視座を得て、本業に活かす」 という戦略の大きなメリットがあるのです。
次回の投稿では、第6章から最終章までを一気に公開します。そこでは、
「副業×本業」でキャリアを加速させる具体的ステップ(第6章)
副業を進めるうえで陥りがちな落とし穴・トラブル対処法(第7章)
成功・失敗事例から見える“やるべきこと/やってはいけないこと”(第8章)
ジョブ型雇用時代に不可欠となる“複線キャリア”の設計図(第9章~終章)
…などを詳しく解説していきます。
「副業を始めたいけど本業への影響が心配」「具体的に何から手をつければいい?」という疑問に答える、実践的なヒントが盛りだくさんです。
「続きが早く読みたい!」と思ってくださった方は、ぜひ**“スキ”**を押していただけると励みになります。次回の更新を楽しみにしていてください!