記録の保管
担当施設に治験管理室があるかないかで変わってくることではありますが、SMOのCRCは責任医師の指示のもと笑 責任医師や治験実施医療機関が保管する文書の保管・管理を代行することがよくあります
そして、試験が終わるとそれらの片付けが待っています
「片付け」を念頭に物事を進めると、試験開始から終了までに無限に発生する様々な文書を整理整頓しやすいので、突然『片付け』の話をします笑
記録の保存についてはICH-GCP・J-GCPのいずれも保管するべき文書と保管期間を定めています
わたしは試験開始から終了までにSMOのCRCが業務で取り扱う文書をざっくりと以下の3つに分けて考えて、「その試験を担当していないCRCでも迷いなく片付けができる」ような文書の保管・管理を目指していましたいました
症例に関する記録&治験薬に関する記録
責任医師が保管する文書
IRBに関する文書
紙媒体で保管する文書
わたしはA4・30穴・背幅50mmのリングファイルとハーフポケットが好きでよく使っていました
背幅が50mmより大きいファイルはわたしの手には大き過ぎて扱いにくいし、背幅が小さいファイルはすぐにいっぱいになってしまうから好きじゃなかったです←ワガママ笑
①症例に関する記録&治験薬に関する記録
いわゆる「原資料」ってやつですね
Visitの記録やAE・併用薬など被験者より聴取した記録、被験者が作成した記録、検査結果などベンダーから発行される記録は症例/visitごとにまとめて保管していました
真ん中でホチキス留めされたA5サイズの被験者日誌を真ん中で開いてA4サイズにして保管していたら、担当CRAから「斬新!」と笑われました笑
治験薬に関する記録は、CRCが作成することは少ないとおもいますが、CRAの訪問頻度が減っている昨今、Visit・治験薬搬入のたびに正しく記録されているかを確認することは、未来の自分を助けます
これらのファイルはそのままSDVに提供して、試験終了後はそのまま保管します
②作成者が責任医師である文書
責任医師にかわってCRCが「案」を作成する機会が多いため本質を見失ってしまいがちですが、多くの場合、施設で作成する文書の作成者は責任医師です
責任医師が作成者である文書、たとえば原資料特定リストやdelegation log、逸脱の記録、note to file、トレーニング記録&トレーニング資料、安全性情報の見解確認書その他もろもろ…wet-inkな文書をまとめたファイルを用意していました
紛失や保管漏れを防ぐためにも、プロトコル合意までにその試験用のファイルを1冊用意しておくべきです
また、責任医師の署名が入った時点で必ずPDFをとっておくことをお勧めします
CRAに求められるから?違います!紛失時のバックアップです!!!
もちろん、このファイルはこのままSDVに提供するし、このまま保管します
紙媒体で保管しない文書
わたしがSMOを卒業する数年前から、責任医師が保管する文書やIRB関連文書を施設が利用するクラウドサービスに電子的に保管することが増えてきました
そのため、依頼者から責任医師宛に発行される文書やIRB関連の文書を紙媒体で保管・管理することは少なくなりました
プロトコル、治験薬概要書、手順書、レターその他、原則として、電子的に保管されていれば印刷物での保管は必須ではないのでしょうが、内容によっては関係者がいつでも閲覧・確認できるようにあえて印刷していました
①依頼者から責任医師宛に発行される文書
試験中は手順書やらレターやら…実に様々な文書が依頼者から責任医師宛に発行されます
以前は、CRAから配信されたPDFを手当たり次第に印刷して保管していたけど、電子的に保管できるようになってからは、内容を確認して必要なものだけを印刷していました
ただし、試験開始前に提供されるプロトコルと治験薬概要書のセットだけは、提供されたものを保管する必要があるので紛失しないように注意です!!
②IRB関連の文書
はじめて文書を電子的に保管する試験を担当した時、初回IRB後に施設に搬入されたIRB関連文書のファイルをみて感動しました!
一方、過去試験の保管文書を廃棄するときは、毎回、そのIRB関連文書の多さに絶望したものです
自施設IRBを利用する施設では院内の治験事務局が管理してくれるし、セントラルIRB利用施設ではSMAさんが助けてくれるので、SMOのCRCが主体になってIRB関連文書の保管・管理を行うことは少ないかもしれません
しかし、例えば院内さんにとって当たり前のことはSMOのCRCも当たり前に知っているものとして話を振られたり相談されます
会社の信頼を棄損する恐れがあるため絶対にえっ…わかりません(・・)とは答えられないし、当たり前ですが、なんでもそれなりに知っているほうが信頼されやすいので、折に触れ、SMAさんに教えてもらうのがよいとおもいます
わたしはIRB関連の文書管理については、基本的におんぶに抱っこでした笑
③プロトコル・手順書
プロトコルと治験薬概要書は最新版を1部印刷してCRC間で共有していました
機器の手順書は機器と一緒にしていましたが、それ以外の手順書は手順書だけのファイルを準備して、最新の手順書を各1部印刷して、やはりCRCで共有していました
CRCごとにプロトコルや手順書を印刷していては資源の無駄だし、注意事項が共有されません
共有のプロトコルや手順書を施設に置くことで、担当CRCは荷物を減らせるし、誤字脱字誤記、わかりにくいとおもったこと、失敗したことは都度そこに書き込めば、ピンチヒッターCRCはそれをみてあぁここトラップなのね…と必要な情報を得ることができ、おなじ失敗をせずにすみます
コストかけずに情報共有、これが大切です💡
で、試験が終わったらごっそり捨てます
紙媒体で保管しなければならない場合は、最新版用のファイルと保管用ファイルを分けて、改訂されたら最新版用から保管用に移すようにしていました
旧版が手元にあると間違いの元だとおもうので、手元で運用するのは最新版1部のみ、これを徹底していました
④印刷資材
手順書と同じように最終的に試験中の存在感ハンパないのが印刷資材です…
予備のws、被験者に配布する紙、検体・検体回収に関連する紙、院内ルールで作成する紙などいろいろ…こういうのはすくなければ少ないほどいいのですが…なかなかどうしてそうもいかないことが多いため、資材のみのファイルを用意していました
visit準備はこのファイルさえあればだれでもできるので、ヘルプCRCやOJTさんに準備を依頼するときも、このファイルにあるから!で細かい説明は不要です
試験中は活躍するこのファイルも、最後の被験者対応が終わったら秒速脳死で全て捨てます!
保管・管理、片付けのコツ
電子化とか電磁化とかDxとか叫ばれて久しいわりに、CRCの手元にある症例に関する紙媒体の記録が大きく減った印象はあまりありません
CRCは施設やSMOによって保管方法のルールに従って文書の保管・管理にあたるわけですが、CRC個々人が最終的に保管する文書は何かを理解し、試験中は常にそれを意識して保管・管理することで、試験終了時に秒速脳死で片付けを終えることができます
試験終了時に秒速脳死で片付けしなければならないのかって?それはシンプルに、片付けに係るコストは見積もりに含まれていないからです💰
大量に発生する紙たちを適切に保管・管理するための最大のコツは『「最終的に保管する文書」と「最終的に保管しなくていいもの」を試験開始時から完全に分けて保管する』です!!