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35)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とエネルギー・クライシス

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術35

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。

【新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療は重症化を抑えることが鍵になる】

 新型コロナウイルス感染症のCOVID-19(Coronavirus Disease 2019)はコロナウイルスのSARS-CoV-2(Severe Acute Respiratory Syndrome CoronaVirus 2)の感染によって発症します。現在、日本を含め多くの国で感染が拡大しています。

COVID-19感染症の人の中には、症状がほとんど、あるいは全くない人もいますが、重症化して死亡する人もいます。一般的に、約8割の患者は自然に軽快して治癒していますが、約2割の患者は肺炎を合併しています。肺炎に進展した患者のさらに⼀部が、重症化して集中治療や⼈⼯呼吸を要する状態になります。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染してウイルスが体内で増殖し、5日から7日間程度の潜伏期を経て発熱、倦怠感、咽頭痛、咳などのウイルス感染症状が出て発症します。この時期には新型コロナウイルスが体内で増殖しています。

ウイルスが感染してから1週間くらいするとIgM抗体が産生され始めます。IgMは感染の最初に作られる抗体で、2週間ほど(感染してから3週間程度)で体内から消失します。

ウイルスに感染してから2週間目くらいからIgGの産生が始まります。IgGは長期間持続して産生される抗体です。新型コロナウイルスに感染してから2〜3週間後(発症してから1〜2週後)にIgG抗体が検出されると報告されています。IgG抗体が血中に増えてくるとウイルス量は減少します。

したがって、抗体が十分に産生できた人は、ウイルスに感染してから2週間後(発症してから1週間後)くらいしてから症状は軽快し、回復期に入ります。(下図)。

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図:コロナウイルスが感染してから5日〜7日ほどで、発熱などの症状で発症する。ウイルスが感染して1週間くらいするとIgM抗体が産生され始め、感染して3週間後にはIgMは体内から消失する。感染して2週間目くらいからIgGの産生が始まり、IgG抗体が十分に産生できた人は、ウイルスに感染してから2週間後(発症してから1週間後)くらいしてからコロナウイルスの量は減少し始め、症状は軽快し、回復期に入る。


以上のように、多くの患者は発症から1週間から10日間くらいで症状が軽快して自然に良くなりますが、一部の患者では発症から7日目前後くらいから、息切れなどの肺炎の症状が増悪し、さらに一部は重症となり集中治療室での治療が必要になることがあります。
 

重症化したCOVID-19は、呼吸困難、低酸素症、広範な肺機能障害から呼吸困難になり、酸素吸入や人工呼吸器が必要になります。さらに、不整脈、心筋症、血栓塞栓症および肺塞栓症、播種性血管内凝固症候群、敗血症、ショック、多臓器不全など重篤な合併症によって死亡します。
 

最近増えている変異型コロナウイルスは、従来のコロナウイルスより感染力が高く、重症化率と死亡率が高いことが問題になっています。感染症の症状(発熱や咳など)が治っても、後遺症(倦怠感、味覚・嗅覚異常、脱毛、睡眠障害など)に苦しむ人が多いことも問題になっています。重症化した人ほど後遺症の発症率が高く、症状が強く、持続期間が長いことが明らかになっています。

最近は感染者が増えたので、軽症者や呼吸困難がないレベルの中等症であれば、自宅療養が優先されるようになっています。自宅で待機している間に肺炎が急速に進行し、重症化して自宅で死亡する人も増えています。
 

新型コロナウイルスは肺炎を発症して重症化しなければ、普通の風邪やインフルエンザと同じように自然に治癒します。つまり、重症化を防ぐことが重要です。

ワクチン接種は重症化予防に有効です。しかし、ワクチンを接種したから安心ではなく、日頃から免疫力を高めておくことが重要です。

ワクチンで前もってコロナウイルスに対するIgG抗体を作っていても、免疫細胞の働きが弱っていれば、IgG抗体の産生が低下し、ワクチン接種の効果は減弱します。実際に、免疫抑制作用のあるステロイド剤を服用していたり、抗がん剤治療を受けているがん患者さんは、ワクチンの効果がかなり低下することが報告されています。


【COVID-19の重症化はサイトカイン・ストームで起こる】

 SARS-CoV-2感染で死亡する場合は、肺と全身で重度の炎症反応が起こって、急性肺損傷、急性呼吸窮迫症候群、敗血症、多臓器不全が起こることが主な原因となっています。これは他のコロナウイルス(SARSやMERS)や新型インフルエンザでも重症例は同じです。
 

急性呼吸窮迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome:ARDS)は、肺炎や敗血症などがきっかけとなって、重症の呼吸不全をきたす病気です。さまざまな原因によって肺の血管透過性(血液中の成分が血管を通り抜けること)が進行した結果、血液中の成分が肺胞腔内に移動して肺水腫を起こします。

体内に細菌やウイルスが侵入すると、体に備わった免疫システムが、これらの病原菌を排除するために働きます。このとき、サイトカインやケモカインというタンパク質が免疫細胞や炎症細胞から産生され、免疫細胞が活性化され、病原菌を排除します。敵が排除されれば、免疫システムは自らオフになるように制御されています。
 

しかし、一部の人では、炎症反応や免疫応答が過剰に発現し、サイトカインが過剰に産生され、そうしたサイトカインが誤って肺や肝臓など複数の臓器を傷害し、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や多臓器不全を引き起こします。
 

このようにサイトカインが過剰に産生される状態がサイトカイン・ストーム(cytokine storm)です。ストーム(Storm)は嵐という意味です。

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図:ウイルスは肺胞上皮細胞(①)や肺胞内のマクロファージ(②)に感染し、細胞内で増殖して数を増やし放出される(③)。感染した上皮細胞からサイトカインやケモカインが産生される(④)。マクロファージはT細胞にウイルス抗原を提示し(⑤)、活性化されたT細胞(⑥)や活性化したマクロファージ(⑦)からも炎症性サイトカインやケモカインが産生される。このような炎症応答が過剰に起こりサイトカイン産生抑制の制御が不能な状態になるとサイトカインストームが起こる(⑧)。サイトカインストームは、敗血症や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を引き起こす(⑨)。


過剰な炎症反応によって活性酸素の産生が増え、細胞や組織の酸化傷害によって、組織や臓器の機能が障害されます。特に、敗血症や多臓器不全ではミトコンドリアの酸化傷害の制御が重要です。 
 

敗血症や多臓器不全の治療としてミトコンドリアをターゲットにした抗酸化剤の有効性が指摘されています。ARDSや敗血症や多臓器不全の治療として、過剰な炎症反応によるミトコンドリアの酸化ストレスの軽減が有効である可能性を示唆する研究結果は多く報告されています。


【メラトニンはCOVID-19の重症化を予防する】

 米国のトランプ大統領(当時)がCOVID-19に感染した時、医師団は標準的な治療に加えてサプリメントのビタミンD3とメラトニンを投与しています。ビタミンD3とメラトニンがCOVID-19の治療に有効であることは多くのエビデンスがあります。

メラトニンがウイルス感染症や敗血症に有効であることは多くの研究で明らかになっています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するメラトニンの使用に対する可能性を指摘する論文も複数発表されています。
例えば、以下のような総説論文があります。


COVID-19: Melatonin as a potential adjuvant treatment(COVID-19:潜在的な補助療法としてのメラトニン)Life Sci. 2020 Jun 1; 250: 117583.

【要旨の抜粋】
COVID-19の病態には、過剰な炎症と酸化傷害と過剰な免疫反応が寄与している可能性が示唆されている。これは、サイトカインストーム(cytokine storm)を引き起こし、それに続いて、急性肺損傷(Acute lung injury)/急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome : ARDS)へと進行し、そしてしばしば死につながる。
メラトニンは抗炎症作用と抗酸化作用を有し、ウイルスや他の病原体によって引き起こされる急性肺損傷や急性呼吸窮迫症候群の症状を抑制する。
メラトニンは、血管透過性を抑制し、不安感や鎮静剤の使用を減らし、睡眠の質を改善することにより、重症患者の治療に有益である。これは、COVID-19患者の臨床転帰の改善にも役立つ。
特に重要なことは、メラトニンは極めて安全性が高い。メラトニンがウイルス関連疾患を抑制し、COVID-19患者にも有益である可能性が高いことを示す十分なデータがある。 


この総説論文では、メラトニンがウイルス感染症に有効であることを示す動物実験の結果などをまとめています。メラトニンがCOVID-19の重症化の予防に効果が期待できる可能性と、そのメカニズムとして「サイトカインストーム」の発生を予防する可能性があることを指摘しています。

メラトニンの産生は加齢とともに分泌量が減少します。60歳以上になると夜間のメラトニンの増加もほとんど認めなくなります。これが、高齢者が感染症やがんの発症を起こしやすくなる理由の一つという意見もあります。
 

したがって、メラトニンをサプリメントとして補うことは、加齢とともに低下する抗酸化力や免疫監視機構の働きを高める効果が期待でき、COVID-19の重症化にも有効と言えます。


【重症化するとミトコンドリア不全によるエネルギー・クライシスが発生する】

 高齢者や基礎疾患を持つCOVID-19患者は、疾患の重症度が急速に進行します。重症化による多臓器不全の根底にある主要なメカニズムとして、ミトコンドリアのエネルギー・クライシス(energy crisis)が指摘されています。クライシス(crisis)は「危機」という意味です。

感染症が進行して重症化するとミトコンドリアにおける代謝中間体の蓄積およびATP産生の低下が起こり、細胞機能が低下し、さらに進行すると死亡します。ミトコンドリアの機能を高める方法としてジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンがあります。
 

ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン(diisopropylamine dichloroacetate)はビタミン様物質として知られ、食品ではゴマやビール酵母などによく含まれるパンガミン酸の構成成分です。

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図:ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンの化学構造


一般用医薬品(第3類医薬品)では、肝臓の働きをサポートし、肉体疲労時の滋養強壮・栄養補給を目的とする栄養ドリンク剤などに配合されています。
 

リゲイン、新グロモント、ヘパリーゼ、リポビタンDなどのドリンク剤やレバウルソ、ヘパフィット、レバオールDXなどの一般用医薬品に配合されています。これらは薬局でも購入できますし、第3類医薬品(薬剤師または登録販売者による情報提供についての義務のない医薬品で、ビタミン剤や整腸剤などが含まれる)なので、通信販売でも購入できます。インターネットで「ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン サプリ」などで検索すると、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンの入った栄養ドリンクや一般用医薬品が多数見つかります。

医薬品としてはリバオール(Liverall)があります。50年以上前から慢性肝疾患の治療薬として使用されています。20mg1錠の薬価が5.9円と極めて安価な薬です。
 

栄養ドリンクのリゲイン(第一三共ヘルスケア)には、1本にジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン(リバオール)30mg、ビタミンB1(ベンフォチアミン)10mg、ビタミンB2リン酸エステル5mg、ビタミンB6が10mg、ニコチン酸アミド30mg、無水カフェイン50mg、タウリン1000mgなどが含まれています。
 

ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン(リバオール)+ビタミンB1の組み合わせはミトコンドリアの酸素呼吸を活性化するので体力を高める効果があることが医学的に証明されています。

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図:ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンは多くのドリンク剤や一般用医薬品に配合されている。医薬品としてはリバオールがある。

 

ビタミンB1はピルビン酸脱水素酵素の補酵素として必要なので、ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン+ビタミンB1の組み合わせはミトコンドリアでのTCA回路を促進し、ATP産生を亢進し、細胞機能を高めることができます。
 

ミトコンドリアの酸化障害を防ぎ、ミトコンドリアの機能を高めるメラトニン、コエンザイムQ10、R体アルファリポ酸、L-カルニチン、アセチル-L-カルニチン、ビタミンD3、ニコチンアミド・リボシド、ニコチンアミド・モノヌクレオチド、水素ガス吸入などを併用すると、エネルギー・クライシスを予防し、COVID-19の重症化を防ぐことができます。さらに適度な運動や食事からの栄養摂取や肥満を防ぐなどで、ミトコンドリアの機能を日頃から良くしておくことは、新型コロナウイルス感染症の発症や重症化の予防に役立つと思います。(下図)

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図:新型コロナウイルスのSARS-CoV-2(①)の感染によって肺炎(COVID-19)が発症する(②)。肺炎は炎症反応を引き起こして炎症性サイトカインやケモカインの産生を亢進し、炎症応答が制御不能になると過剰なサイトカイン産生によってサイトカイン・ストームを引き起こす(③)。さらに、活性酸素の産生が亢進して、細胞や組織の酸化傷害が引き起こされる(④)。サイトカイン・ストームや酸化傷害は肺組織にダメージを与え、血管内皮細胞の透過性亢進を引き起こして、急性肺損傷や急性呼吸窮迫症候群を引き起こし(⑤)、さらに悪化すると敗血症や多臓器不全を引き起こして死に至る(⑥)。このような病態では、多くの細胞のミトコンドリアがダメージを受けて機能障害を起こし(⑦)、ATP 産生が低下してエネルギー・クライシス(Energy crisis)に陥り、多臓器不全を促進する(⑧)。ジクロロ酢酸ジイソプロピルアミン、メラトニン、コエンザイムQ10(CoQ10)、L-カルニチン、アセチル-L-カルニチン、NAD前駆体のニコチンアミド・リボシドやニコチンアミド・モノヌクレオチド、ビタミンB1、水素ガスはミトコンドリアの機能障害とATP産生低下を阻止することによって多臓器不全への移行を阻止する可能性が報告されている(⑨)。

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術 記事まとめ

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