見出し画像

131) 5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムは寿命を延ばす

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術131

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。


【5-アミノレブリン酸はヘムの前駆物質】

私たちの体内には、体重60kgで平均4g程度(2〜6gくらい)の鉄が存在します。鉄は全て食事から体内に摂取しています。 
 
鉄は酸素などの小さな分子と強く特異的に結合する性質があります。体内の鉄の60%くらいはヘモグロビンのヘムとして存在し、酸素を運搬する働きを担っています。 


図:ヘモグロビンはα鎖とβ鎖と呼ばれる2種類のサブユニットから構成される四量体構造をしている。各サブユニットには1つのヘムが結合している。ヘム(Heme)は2価の鉄原子とポルフィリン(プロトポルフィリンIX)から成る錯体で、赤血球中のヘモグロビンは、ヘムの鉄原子が酸素分子と結合することで酸素を運搬する。 
 
 
 
5-アミノレブリン酸 (5-aminolevulinic acid:ALA) は、炭素数5で分子量131の動物および植物のミトコンドリアによって生合成される天然のアミノ酸です。5-アミノレブリン酸はポルフィリン、ヘム、胆汁色素の前駆体です。5-アミノレブリン酸はミトコンドリアでのATP産生を活性化する作用があります。

5-アミノレブリン酸はミトコンドリアの中でアミノ酸の一種のグリシンと、クエン酸回路(TCA回路)で生成されるスクシニルCoAという2つの物質から作られます。生成された5-アミノレブリン酸は一度ミトコンドリアの外に出て行きます。細胞内で何種類かのポルフィリンという物質に変化し、再びミトコンドリアに戻ってきます。そして、最終的にプロトポルフィリンIXに変わります。このプロトポルフィリンに鉄がくっついてできたのがヘムという物質です。(下図)


図:ミトコンドリアの中でグリシンとスクシニルCoAから合成された5-アミノレブリン酸は、ミトコンドリアの外に出て、細胞内で何種類かのポルフィリンに変化し、コプロポリフィリノーゲンになって再びミトコンドリアに取り込まれ、最終的にプロトポルフィリンIXに変わる。このプロトポルフィリンに鉄が結合してヘムという物質が作られる。
 
 
 
動物細胞では、8分子のALA がポルフィリン環を形成して、中心に二価鉄が配位されてヘムになりますが、植物細胞ではプロトポルフィリンIXはマグネシウムと結合してクロロフィル(葉緑素)になります。クロロフィルは植物が光合成をする上でなくてはならない物質です。
 
ポルフィリンは、鉄、銅、亜鉛などの金属イオンと結合してヘムやクロロフィルなどを形成します。これらの化合物は、生物体内で酸素の運搬(ヘモグロビンとミオグロビン)、電子の移動(シトクロム)、光合成(クロロフィル)など、生命維持に必要な多くの重要な化学反応に関与しています。
 
プロトポルフィリンIXに鉄が結合したヘムは、生物の体内で多くの重要な機能を果たす化合物です。ヘムは主に以下のような役割を果たします。


1)酸素輸送: ヘムはヘモグロビンとミオグロビンという2つのタンパク質で中心的な役割を果たしています。ヘモグロビンは赤血球内に存在し、肺で酸素を結合して体の他の部位に運びます。一方、ミオグロビンは筋肉組織に存在し、酸素を保管して筋肉の運動に使用します。
 
2)エネルギー生成: ヘムは細胞内でのエネルギー生成に重要な役割を果たします。特にミトコンドリアの電子伝達系(呼吸鎖)という部位にあるシトクロムというタンパク質はヘムを含んでおり、これがエネルギー生成の過程で電子を輸送します。
 
3)解毒作用: ヘムは肝臓に存在するチトクロームP450という酵素群の一部であり、これが体内に取り込まれた様々な有害物質や薬物を無害化または分解する役割を果たします。
 
4)一酸化窒素の生成: ヘムは一酸化窒素(NO)の生成に関与しています。一酸化窒素は血管の拡張、神経伝達、免疫応答など、多くの生物学的プロセスを調節します。
 
以上の機能は全て、ヘムが鉄イオンを含む能力に起因します。この鉄イオンは酸素や電子や様々な有害物質と結合することができ、それにより上記のような多くの生物学的プロセスを可能にします。


図:5-アミノレブリン酸はプロトポルフィリンIXになり、鉄(Fe)が結合してヘムになる。ヘムはヘモグロビンやシトクロム、カタラーゼ、P450など多くのヘムタンパク質を構成し、細胞内で重要な働きを担っている。植物では、プロトポルフィリンIXにマグネシウム(Mg)が配位されるとクロロフィル(葉緑素)となり、光合成に寄与する。
 
 
以上のように、5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid、5-ALA)は、ポルフィリン合成経路の最初の生成物です。動物においてはグリシンおよびスクシニルCoAからアミノレブリン酸合成酵素の作用で合成されます。
 
5-アミノレブリン酸は最終的にプロトポルフィリンIXとなり、鉄イオンを配位することで、血液中のヘモグロビンや薬物代謝酵素であるP450を構成するヘムとなります。
さらに、ヘムは食物と酸素からエネルギーを取り出す「呼吸鎖複合体」の中心的物質でもあります。5-ALAがなければ私たちはエネルギーを得る事が出来ず、活動すらできません。
 
5-ALAはミトコンドリアの機能を高める効果があり、エイジングケア、食後高血糖対策、脂質減少などの目的でサプリメントとして市販されています。



【5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムの組み合わせが寿命を延ばす】

まだ基礎研究の段階ですが、5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムの組み合わせが、老化性疾患を軽減する可能性が指摘されています。
 
以下のような報告があります。

Sodium ferrous citrate and 5-aminolevulinic acid improve type 2 diabetes by maintaining muscle and mitochondrial health.(5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムは健全な筋肉とミトコンドリアを維持することで2型糖尿病の症状を改善する)Obesity (Silver Spring)
. 2023 Apr;31(4):1038-1049.

この研究では、生後6週齢の雄 C57BL/6J マウスに、通常食、高脂肪食、またはクエン酸第一鉄ナトリウムと5-アミノレブリン酸リン酸を添加した高脂肪食を 15 週間与えました。
 
高脂肪食を与えたマウスに5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムを同時に補給すると、筋肉量の減少が防止され、筋力が向上し、肥満とインスリン抵抗性が減少しました。
 
5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムは、ミトコンドリア形態の異常を防止し、グルコース取り込みやミトコンドリアの酸化的リン酸化関連遺伝子の発現など、骨格筋細胞の遺伝子発現に対する高脂肪食の影響を元に戻しました。
 
さらに、5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムは、ミトコンドリアDNAの維持と抗酸化転写活性を強化することにより、ミトコンドリアDNAのコピー数の減少を防ぎました。

つまり、5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムの補給が骨格筋とミトコンドリアの健康状態の改善を介して2型糖尿病の予防効果を発揮することを示唆しています。

以下のような論文もあります。

5-Aminolevulinic acid and sodium ferrous citrate ameliorate muscle aging and extend healthspan in Drosophila.(5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムはショウジョウバエの筋肉老化を改善し、健康寿命を延長する)FEBS Open Bio. 2022 Jan;12(1):295-305.

ミトコンドリアの機能低下は老化と関係しています。5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムの組み合わせは、培養細胞のミトコンドリア機能を改善します。
 
この研究では、ショウジョウバエの成体に、さまざまな濃度の5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムを含むコーンミール餌を与え、運動機能、寿命、筋肉構造、加齢に伴うミトコンドリア機能の変化が分析されました。
 
その結果、5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムを与えると加齢に伴う運動機能の低下が軽減され、生物の寿命が延びること示されました。さらに、5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムの投与は高齢動物の筋肉構造を保存し、ミトコンドリア膜電位を維持しました。
 
5-アミノレブリン酸+クエン酸第一鉄ナトリウムの組み合わせが、ミトコンドリア機能を高め、糖尿病や肥満など代謝性疾患を改善し、健康寿命を延ばす可能性が多く報告されています。抗がん作用も報告されています。
 
5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムはサプリメントとして入手可能です。


図:5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウムをサプリメントとして補充すると、ミトコンドリア機能を高め、糖尿病や肥満など代謝性疾患を改善し、老化性疾患の進行を抑制し、健康寿命を延ばす可能性が示唆されている。


いいなと思ったら応援しよう!