豚の真心
「あのぉ。孫さん」
やけに神妙な顔をした八戒が事務所のドアを入ってきた。
「あ、おつかれぇ」
今月の売上の整理も終わり今日はちょうど暇だった。そんな折に八戒からのLINEが来たので事務所までご足労頂いたのだ。俺は日頃の鬱憤も溜まってるだろうとうまい飯でも食わせることにした。乾杯。
「孫さん、俺やめたいと思ってるんですよね。西遊記」
一杯目のビールを一口飲ませるとさっそく本題に入りだした。
「ん!?そっ…か」
内心焦りながらどうやって説得しようかと脳みそが高速回転を始めた。やばいやばい。折角視聴率も上がって売上も伸びてきた。面白いシナリオも発注したばかりだ。それに天竺までの半分もたどり着いていない。今八戒に辞められたら非常に困る。
「けど八戒だってこんなにやりがいのある仕事はないって言ってたじゃねぇか。これはこの世界のためになる慈善事業なんだよ。わかるだろ?もしもお前がいなかったらこの世界は駄目になっちゃうかもしれないんだぞ。改善点があるならばもちろん検討するさ。一体何が不満だったんだ。此処だけの話にするし今日は腹を割って話してくれないか」