カギウオ
出された皿の上には立派に太った秋刀魚が一匹横たわっている。なんだカギウオっていうのは秋刀魚のことか。秋刀魚は嫌いではないので問題ない。ところがいざ魚の腹を皿に押しつけて身をほぐし脂の乗った身を食べようとするが背中が鉄のように固くてうまくいかない。仕方がないので腹の方から食べようとすると奇妙なことに気がついた。この秋刀魚、エラのところに小さな鍵穴があいている。
「お客さん、それカギウオですよ」
そんな事をうれしそうに言われてもカギウオとは何なのか。この鍵穴のようなものは一体何のためにあるのか。少しイラッとしながら周りを見ると、あった。楊枝立ての脇の串置きのような竹筒に「鍵」とシールが貼られており、中には一本の鍵が差してある。