不倫裁判百選100番外編古くて新しい?
不倫慰謝料請求が、その請求を否定する見解が有力化していることはたびたび取り上げてきました。しかし、私は、これを否定することは問題があると考えているとも主張してきました。万葉集を読んでいたら、まさに理不尽な紛争を過熱化させないためにも慰謝料請求は認めるべきだとの見解に帰着しました。要は、現代においては、悔しい気持ちと、過度な責任追及とを防止する観点からは、慰謝料、金銭評価をして紛争解決することがやはり適切ではないかと考えているのです。
この詩を詠んだ磐姫皇后は、過度な嫉妬をする女性として『古事記』『日本書紀』にも登場する人物です。仁徳天皇が侍女や妃を宮殿に入れることを絶対に許すことはなく、普段とは違う気配を感じるだけで地団駄を踏んで嫉妬したようですが、天皇が美しいと評判の黒日売を宮中に召し上げた際、当の黒日売は皇后の嫉妬から逃れるために船で故郷に逃げたそうです。
天皇がこの詩を詠んだところ、皇后はさらに怒り、黒日売を船から追い出してしまい、陸地を徒歩で歩かせたそうです。
醜い紛争に手を貸すことは不適切である、と不貞慰謝料請求を否定した学者がいましたが、では、適切にこの気持ちを晴らすための法的手続は何が適切なのか、こう解決しなさい、という手段は示していません。
私は、万葉集から語られるようなこの、古典的、いや、古くて新しいこの問題は、ある種、金銭で調整するのは過度な責任追及を回避するには適切ではないかと思っている。