THE 離婚 トーキョー NO.13. 外国にいる被告を訴える方法
ブルネイにいる邦人を訴えるのに一番困ること
ずばり、訴状、の送達の問題が頭を悩ませる問題です。通常の国内訴訟を想定すると、訴状を依頼者と一緒に作成をすると、正本と副本と言って、同じものを二通作ります(実際は弁護士事務所用控えと依頼者にお渡しする用で、4個程度になることもあります)。訴状はドラフトを含め作成しているので、印刷する訴状としては4個ではすみませんが。。。
訴状は、裁判所に正本と副本を提出すると、裁判所が、被告に送達します。この、送達、というものは民事裁判権の行使の一環です。民事裁判権の行使であれば、裁判所が職権で行い、名宛人への特別送達として行います。果たしてこれをブルネイにいる人あてに行ってくれるのか、これが問題なのです。
外国への送達?
結論、できます。しかし、どの国を対象にするかによって大きく扱いが異なっています。実は国家間の紛争に発展する可能性があるからです。実は子の送達、という行為は民事裁判権の行使にかかわるものです。民事裁判権の行使、というのは、立法行政司法のうちの司法権の行使の一環ですなんと、日本がブルネイにいる被告に送達を実施してしまうと、外国の主権を侵害してしまう可能性があるのです。
一方で、被告がブルネイにいるからといって一切裁判を受けることができないのであれば、原告の権利を害します。そこで民事訴訟法108条を用いると、外国への送達は、当該国の管轄官庁又は当該国に駐在する我が国の外国使節に嘱託して行うことになっています。
しかし、困難は伴う
とはいえ、民事訴訟法108条には限界があります。それは、日本においてのみ用いられる規律、民事訴訟法だからです。ブルネイ国で日本の民事訴訟法を使うことはできません。よって、ブルネイの裁判所は、嘱託に応じてくれるのか?が問題となりますが、これもまた外交問題に発展しうるものですから、外務省を通じてブルネイ政府と交渉をしなければならないのです。
ブルネイ政府側が日本の裁判所の食卓に応じることについて同意してくれるかが問題なのです。
このようにして、専門的には「個別の応諾」という訴状の送達が必要となりますので、場合によっては時間が相当かかります。ちなみに、訳文もつけなければなりません。
すべての国家で個別の応諾が必要なのか?
実は、個別に応諾の可否を決めなくてもよい国家があります。日本が送達に関して司法共助取り決めを行っていれば、個別の検討は必要がありません。たとえば、
タイ・ブラジル・シリア・イラン・クエート・イランなどでは、司法共助取り決めの方法、によることができます。
民訴条約もしくは送達条約に基づく領事送達
民事訴訟条約もしくはハーグ送達条約というものに加盟している国家における送達の場合、裁判所側は当該外国に駐在する我が国の領事に送達を嘱託することができるとされています。この領事送達を用いることができるのであれば、すべて日本人が介在する手続なので、早期に完了をさせることができますが、実は強制力までは伴っていないことに注意が必要です。ちなみに、アメリカやイギリスには個別の条約が存在し、日米領事条約ないし日英領事条約に基づき、領事送達を行うことが多いです。
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