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正しい神話のつかいかた

 Twitterでよく文学を扱う研究者さんが嘆いてるのをお見かけします。
「文学がなにの役に立つんですか」と言われてしまう、と。暗に「お前たちは役立たずだ」と言われてしまっている、と。
 私はいつもこう答えればいいのに、と思っています。

「役に立ち過ぎて、人類最大の危険物だから見張ってるんですよ!!」と。

「世界最大に売れている本は?」
という問いは有名なので皆様ご存知でしょう。
 聖書です。
 聖書を読み、その内容に影響を受けて生きている人がこの世に山というほどいます。
 そしてその内容の解釈だけで、戦争が起きます(異端派の弾圧とかね)。
 そういう危険物なのです。

 聖書だけに限らず、世界中の神話も伝説も戦争に利用されます。
「神が正しいとおっしゃっている!」
「君のかの英雄のごとく戦って死ね!」
「かの民族は悪魔である!」
「我らは誇り高き民族である!」

 そして殺戮、虐殺、迫害が。
 様々な数々の悪行三昧が。
「正義」の名のもとに行われます。

「我々は正しい!」
「間違えているのはあいつらだ!」
「あいつらを黙らせろ!」
「あいつらは裏切り者だ!」
「あいつらに我々は傷つけられている!」
「我々を守るため、我々は立ち上がる!」
「戦え!」
「敵を殺せ!」
「協力しない者の目を覚まさせろ!」
「目覚めよ!」
「目覚めぬのであれば裏切り者だ!」
「殺せ!」
「我々は正しい!」
「我々は正しい!」

 SNSにそういうこと書いてあるのを皆様多少はご覧になったことがありますね。
 特段、神が関係ないシーンでもよく見かけます。
 でもまるで「正しい神を信じている狂信者」にそっくりです。

 そういうことを人々が言い出す場合、なにかしらの物語がそこに築かれています。
(お馴染み「陰謀論」もその一種ですね)

 そういう物語を研究しているのは誰ですか?

 文学の研究者です。

 わかりますか。
 役に立ち過ぎて、暴走して、人殺しに使われるようなものを取り扱っているのです。

 暴発させると危険な物なのです。
 大量に人が死ぬような代物なのです。

 人は物語に、人は言葉に、人は文学に。
 踊らされて、とんでもない犯罪をやらかします。

 そんな危険物を取り扱って、いざというときは警告を発することができる。
 解釈を歪めた物語を流布して人々を煽動している人に「その解釈はおかしいですよ!」と理詰めで止めることができる。

 そんなことは普段、文学を取り扱ってない人にはできません。
 書いてあることの正しい読み解き方もわからない。
 原語で(神話などは古代や中世の文献を読み解く必要があります)読む力もない。
 文学がかつて政治利用された歴史のことも知らない。

 でも研究している人はわかっているはずです。読む力もあるはずです。知っているはずです。
 そして、それを発信してもいるはずです。

 それを堂々と言えばいいと思うのです。

 人々が誤った文学のつかいかたをしている場合のときにはストッパーをしているんだよ、と。
 尊い仕事をしているのだよ、と。

 正しい神話のつかいかたを教えられるよ、と。

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吟遊詩人 妙遊
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