なんというハープですか?
こんにちは。吟遊詩人の妙遊です。
私は吟遊詩人がよく使っているタイプの小さなハープを使っています。
たまに、たずねられることがあります。
「それはなんというハープですか?」
……これ、返事に困るところなのです。
なぜなら答えられる名前が、片手の指では足りないほどにあるからです。
一番よく答える答えが「ケルティックハープです」。
しかし他に「アイリッシュハープ」「ネオケルティックハープ」「ネオアイリッシュハープ」「レバーハープ」「フォークハープ」「ラップハープ」などの呼び方があります。
なぜこんなに呼びかたがあるのか?
どんなときにどう呼べばいいのか?
詳しく見ていきましょう。
1.ケルティックハープ
まずはケルティックハープ。
ケルティックはCelticです。「ケルトの」という意味ですね。
ケルトという言葉は……ケルト……ケルトという言葉は難しくて、それだけで論文が一本書ける!くらいの、難しい研究者さんの領域。
それは説明していられないので、ものすごくざっくりいきます。
いいですか?ざっくりですよ?いきます!!
ケルトは「アイルランド、スコットランド、ウェールズ、ブルターニュ、コーンウォール、マン島などの、言語の根っこが同じな地域をグルッとひとまとめにしたようなもの」。
「ざっくりじゃないじゃん、マン島ってどこ?ウェールズってどこ?」という言葉が聞こえてきそうです……(ごめんなさーい!)
要は、イギリスの一部とアイルランド全域とフランスの一部です。
ちなみに上記の地域に住んでいた人が、アメリカに移民したことによって生まれた音楽もケルトと呼ばれていたり、スペインの一部もケルトと呼ばれていたりすることもあります。
うぅ、ややこしくなってしまった。
しかしここまでが必要なところなんです、スミマセン……。
話をもどして。私のハープですが、原産地はアメリカ。ストーニーエンド社というところです。そして名前がブリタニー。
ストーニーエンド社
ブリタニーは一般的には「ブルターニュ」
フランスの一部地域ブルターニュを指します。
で、ブルターニュの人が自分たちのハープを紹介する場合、ケルティックハープと言ってるんですよ。
ブリタニーハープとは言わない。
うーん、じゃあケルティックハープですよね……と、言わざるを得ない。
さらにいえば、
①産地でいえばアメリカ産。
②メーカーもケルティックと謳ってる。
③ケルティックはアイリッシュもアメリカの移民のものも含むおおらかなジャンル。
以上のことから「ケルティックハープ」が一番妥当かなと思っています。
2.アイリッシュハープ
次に、アイリッシュハープ。
アイリッシュは「アイルランドの」ですね。
ケルティックハープの次に名乗る機会が多いのが、アイリッシュハープです。
なぜかというと、ハープの一大中心地がアイルランドだからです。
アイルランド、国章もハープなんですよ。
アイルランドの国章
とにかくアイルランドのハープ推しがすごい。
加えて、ケルティックハープと言われるハープは、だいたいがアイルランドかスコットランドのハープの形がモデル。
アイリッシュハープがモデルでできてるハープなら、そりゃあもちろんアイリッシュハープですね……という話なのです。
ちなみに。アイルランドの超有名ビールメーカー、ギネスのビールグラスを見たらアイリッシュハープのマークがドン!と入ってますが、私のハープ、そのままの形です。
ギネスのマーク
ハープメーカーの私のハープの説明によると、アイルランドの「ブライアン・ボルーズ ハープ」という美しい古いハープにインスパイアされて作られていることもわかります。
ブライアン・ボルーズ ハープ
加えて、日本では「アイリッシュハープ」という名前で活動してる演奏家がすごく多い。
ハープ自体がアイリッシュハープと呼ばれることもすごく多い。
お客さんも「アイリッシュハープ」と認識すると、演奏者を見つけやすいのです。
お客さんが次の奏者に出会ったとき「アイリッシュハープゆうんやんな。ええよな。聴いたことあるで」と親しみが湧くので、お客さんにとってもいいわけです。
一般的に最もよく呼ばれる機会が多いのはアイリッシュハープ。
ゆえに「アイリッシュハープ」という呼称は手堅い名乗りなのです。
他の奏者と一緒に出演するときはこだわりなくアイリッシュハープと名乗っています。
3.ネオケルティックハープ・ネオアイリッシュハープ
さて次。「ネオケルティックハープ」「ネオアイリッシュハープ」。
これは日本国内で言ってる人はほとんどいないですね。外国ではちょいちょい見かけます。
なぜ「ネオ」かといいますと。
アイリッシュハープは昔は金属弦だったんですが、ハープの人気が下火になり、一旦全滅したんです。
その後、ハープが再び復興されて作られるようになったんですが、張られた弦は金属弦ではなく、ガット弦やナイロン弦。
私のハープもナイロン弦です。
金属弦に比べて、新しいハープなので、「ネオ」がつくんですね。復活したハープなので、そういう意味でもネオなのかもしれません。
ちなみに昔のように、金属弦を張ってそれを演奏されてる方もいらっしゃいます。日本だと坂上真清さんと寺本圭祐さんが有名です。キラキラよく響く綺麗な音です。
「ネオ」と名乗るのは、そういった金属弦ハープの人と同じイベントに出ているときに見分けるときに使う……くらいですね。あんまり使わないです。
ただ名前としてはかっこいい(大事)ので、使いたい方は使っていいと思います。正しい呼び方ですからね!
4.フォークハープ
上記の通り、ハープの呼び方、もうだいぶややこしい事態になっています。
ざっくりと「フォークハープ」と名乗ってる方もいらっしゃいますね。
私のハープのメーカーさんは作られているハープたちをまとめて“traditional folk lever harps"と言われています。
フォークハープも正しいのです。
5.レバーハープ
この呼び方は、主にクラシックの人と一緒にいるときに使います。
クラシックはオーケストラの巨大なハープを見ていただくとわかるのですが、足元にペダルがついています。
足でペダルを操ることによって、弦の音の高さを変えているのです。
これを「ペダルハープ」と呼びます。
ケルティックハープの場合は足元ではなく、弦の一番上に取り付けられたレバーを手で操作し、半音上げたり下げたりをしています。
レバーで音の高低を調節するから、レバーハープ。
ペダルで音の高低を調節するから、ペダルハープ。
シンプルですね。
ハープのメーカーのページを見ると、レバーハープとしてよく紹介されています。あとペダルがないので、ノンペダルハープとも(ペダルがあるのが基本みたいで、レバーがあるのが基本な私としては微妙な気持ち……)。
さらには、音の高低を調節するペダルもレバーもついていない、ノンレバーハープもあります(これもレバーがないのが基本の人だと微妙な気持ちになりそう)。
私のハープはレバーがついているので、レバーハープですね。
6.ラップハープ
吟遊詩人のよく持っている膝に乗せる小さいハープ。あれがラップハープです。ラップはまんま「膝」の意味ですね。
私のはこの膝に置くハープなのでラップハープです。
ちなみに床に置くタイプの大型のハープはフロアハープといいます。
アイルランドなどの本場を見ると圧倒的にフロアハープが多いです。
大きい方が音域が広く、音も大きいので、楽器の能力を取るなら当然大きい方にはなるでしょう。
日本では、ラップハープとフロアハープ半々ぐらいでしょうか。もしかしたらラップハープの方が多いかもしれません。
日本は住宅事情的に大きなハープを置けない家も多いので、ラップハープが普及しやすいのだと思います。
あと、フロアハープは巨大なので車移動が適しています。しかし、日本の都会は電車のみの方が便利。電車ならやはり小さい方がいい。
もちろんすごく元気な人はフロアハープでも電車でもバスでも運んでいきます。頼もしい……!!
私は機動性重視なのでラップハープです。新幹線でも一番前の席を取って、前に持たせかけて死守しています(ハープは繊細なので守らなければ壊れてしまうのです)。
いかがでしたでしょうか。
思わず、ハープについての詳しいお話になってしまいました。
少しでもケルティックハープに親しんでいただける機会になったのでしたら幸いです。
そのケルティックハープを弾き、伝説のアーサー王の物語をする会が7月15日にありますので、大阪近郊の方は是非いらしてください。
↓そばでハープを聴くチャンスです。
ご感想やシェアなどもしていただけると、とても喜びます。
お読みいただきありがとうございました!
お相手は、吟遊詩人の妙遊でした。
またお会いしましょう。