20話*ボンさんと子供たち
ボンさんエリアの近くには中学校がある。
ある日、夕方にボンさんとワチャに会いに行って遊んでいたら、放課後の中学生男子達が話しかけてきた。
男子『なんでそんなに猫と仲良しなんですか?めっちゃなついてますね』
私『うーん、毎日会いに来て遊んでるからかなあ』
男子『いいなあ。やっぱりそれぐらいしないと仲良くなれないんですかね。ぼくでも仲良くなれますかね』
私『うん、なれるよ』
一人の男の子はボンさんに興味津々。
私達が持って来た猫じゃらしを使ってボンさんの気を引き始めた。
ボンさんは人慣れしているけど、警戒心がない訳じゃなく散歩してて人が来ると逃げたりもする。
でもこの時ボンさんは、男子達が自分たちに興味を持っているのが分かっているようで、逃げずに男子達の相手をし始めた。
ワチャも逃げずに大人しく座っていた。
「猫好きなん?」と男子達に聞くと、
「好きです!でも、ぼくら皆猫アレルギーなんですよ…」
え〜!!
「だ、大丈夫?」
「好きなんですけどねぇ…」と、ボンさん達を見つめる男子。
なんて気の毒な。
しかし様子を見守っていると、やはり男子。
キャッキャッとボンさん達をからかい始めて、ボンさん達もちょっと困惑気味。
だ、大丈夫か、ボンさん。
すると、どこからか男子達の先輩らしき男の子がやって来た。
『え、猫と遊んでるん?』と、近寄る。
ボンさん達を見て、
『ふーん、野良猫じゃん。汚いやん、よく触れるな』と、その男子は言った。
もちろん、わたしはその言葉にカチンと来たが、素早くその言葉に反応したのは猫好きの男子の一人だった。。
『野良猫だって猫ですよ!なにも変わらない!汚くないですよ!』
そう言い放って、怒ったのだった。
感動した。
怒ってくれたことが、わたしはめちゃくちゃ嬉しかった。
ぶつぶつ言いながら、先輩男子は退散した。
人が嫌いではないボンさんが、警戒して逃げる人間と逃げない人間がいるのは、こういう事なんだろうなと思う。
ボンさん達は人を視ているし、人の言葉が分かる。
きっとこの少年達が自分達のために怒ってくれたことは、言葉が解るボンさんも嬉しかったと思う。
ボンさんを保護して戻して、昼間に会いに行った時、ボンさんを見た子供たちが、
『あ~!あの猫!久しぶりやなあ』と、言っているのを見たことがあった。
きっと体育の時間で河川敷のグラウンドに行く途中や放課後に、ボンさんが日向ぼっこしたりしてるのをいつも見てたのだろう。
ボンさんがその場所にいるのが当たり前で、ボンさんの存在を認識している子供達のふとした言葉が私はすごく嬉しかった。
そして、この場所からボンさんを奪う事は何だか不自然に感じたりもした。
ホウホウが居なくなってボンさんを保護してる最中も、この場所を訪れた時、淋しくて淋しくて、私はこの場所を護っていた神様を奪ってしまったんじゃないかと思えた。
ホウホウとボンさんが居ないと、この場所はこんなに暗くなってしまうのか!!………と。
ボンさんも元気に運動する体操着を来た子供たちを見たり、放課後の子供達の笑い声をずっと聞いて来たんだろうな。
もしかしたら、ボンさんと友達になって心を通わせていた子供もいたかもしれない。
ボンさんはきっとこの場所が大好きなんだろうな。
そう思う気持ちは、ボンさんと一緒に住みたい気持ちをどんどん複雑にした。
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