30話*ボンさんと暮らす
私達は、ボンさんを保護し、看病する事を決めた。
ボンさんと暮らす。
こんな形で叶うのは悲しすぎた。
けど、感傷に浸っていられない。
ボンさんとの時間を大事に、大事に、大事にするんだ。
仕事から帰ると、土間にボンさんがいた。
疥癬で皮膚が固くなってチンピラみたいな顔だけど……笑
『やあ、おかえり』って出迎えてくれる、いつも通りのボンさん。
いつも、いつも、やさしいボンさん。
私はあちこち走り回って、ボンさん用のベッドやトイレを急いで用意した。
イチとシバとは接触はしないように、土間とリビングをパーティションをして、隔離するけどボンさんの顔は見えるようにした。
イチがボンさんの顔を見るなり『シャー!』ってしてたけど、ボンさんは全く動じなかった。
シバはずっと距離を保ってボンさんには近付かなかった。
ボンさんは状況を把握しているのか、前に連れて来た時と違って全く抵抗もなく家に入ってくれた。
かなり弱っていたので、外より暖かいとこでボンさんが眠ってくれるのはとても安心した。
ベッドも気に入ってくれたようだった。
その日ボンさんは、ぐっすり寝た。
2日目くらいだろうか、朝起きると私達の寝ている布団がオシッコまみれになっていた。
イチかシバか、どちらかはハッキリ分からなかったけど(決して私のオネショじゃない…)
突然現れたボンさんに、イチもシバも戸惑っているのが分かった。
私はイチシバの顔を見ながら、口に出して事情を説明した。
『二人とも聞いて。ボンさんは私達の大事な友達でね、今は病気になったから看病してるんよ。ボンさんも一生懸命病気と闘っているから二人とも協力してくれないかな?』
と、何度も言っているとイチシバはちゃんと聞いてくれ、まばたきをしてくれた。
それからオシッコをされる事は一度もなかった。
私達は、ずっと最後までボンさんを面倒みるつもりだ。
でも自由を愛するボンさんは、どう思っているだろう。
家に入れてしまったけれど、ボンさんはしんどくても、思い出が詰まった安心する『あの場所』で最後を迎えたいかもしれない。
顔が見えるといえど、土間で1人で隔離されて過ごすのは寂しくないかな。
ご飯が食べれなくなっていたボンさん。
何か食べたいものはないだろか。
沢山知りたいことがある。
わたしは再び、アニマルコミュニケーションをJunさんに依頼することにした。