7話*野良猫の世界
ボンさん達にとって縄張りは、大事な家みたいなものなのかもしれない。
そこに私達がいる事を受け入れてくれる事が、ボンさん達の家に招き入れて貰えてるようで、温かく感じていた。
私達の噂を猫ネットワークで聞いたのか、色んな猫がやって来たから平穏な夜ばかりでもなかった。
ボンさんはめっちゃ強そうだけど、ボンさんよりヤバそうなチンピラみたいな猫がやって来た時もあった。
ハラハラする私達。
でもさすがボンさん。動物は逃げる事を恥ずかしいなどとは思わない。
逃げる事も大事なことだと教えてくれた。
ボンさんは、惜しみ無く逃げて隠れる。
自動販売機の下や、隙をついて私の傍に走って来て背中に隠れたり。
ホウホウも草むらとかにすぐ隠れた。
でもホウホウが別ルートを使って私たちのとこに来ようとして、チンピラ猫に見つかって追いかけられた事もあった。
ボンさんは始めから負ける喧嘩はしないようだった。
かと言ってボンさんはいつも逃げていた訳でもなく、
礼儀知らずの猫が来たりなんかすると、ボンさんは威嚇して追い払っていた。
一度、ホウホウのご飯中に知らない猫が傍若無人に横取りしようとした時、ボンさんはとてつもなく怒ってその猫と大喧嘩になった。
ホウホウは怯えて自動販売機の下に隠れ、ハラハラしながら時々顔を出して様子を心配そうにみていた。
それを見ていた私達も緊張感に包まれ、ギャーギャー言いながら遠くまで走って行ったボンさんを思わず私たちも追いかけ長い喧嘩をハラハラ見守った。
相手の猫の毛がそこら中に飛び散っていて、闘いの凄まじさを目の当たりにした。
収束した後、興奮が少し残ってるものの冷静に歩くボンさんと一緒にホウホウのとこに戻ると、ホウホウが一目散にボンさんにかけよって心配そうに顔を近づけた。
ボンさんは「大丈夫」と、しっかりホウホウに鼻挨拶で伝え、2匹で会話しているようだった。
ボンさんが太ってるのはホウホウと自分達の家を守るためなのかもしれないね、って私たちは話した。
でもボンさんたちは決して自分達だけを守ろうとしていた訳でもなく、ご飯に困っている猫が寄ってくると自分達のご飯を譲っていた。
とても真っ当だった。
ボンさんとホウホウはしばらく喧嘩していた場所を眺めていた。
野良猫として生きる世界。
そこは私達には入れない猫の世界でもあった。
こうやって生きてきたんだね。ずっと。
いきなり現れて、私達に急になついてくる色んな猫がいたけど、私達はボンさんが受け入れた猫以外はほとんどご飯をあげなかった。
ボンさん達の縄張りがむちゃくちゃになりそうで嫌だったからだ。
私達はまだ猫が好きというより、ボンさんとホウホウが好きで、その気持ちの方が強かった。
ボンさんの友達ではない猫が来たら、一切撫でないようにそっぽを向き続けた。
かわいい猫も沢山いたので複雑な気持ちになって、結果変人みたいな追い払い方をしていたから、ボンさんは笑っていたように思う。
「僕よりヒドイな」って。
追い払われてる猫も私が本気で怒ってないのを解っていて、それでもなつこうとする猫もいたし、道でばったり会ったりなんかすると挨拶してくれる気の良い猫もいた。
自分もボンさんたちと一緒に縄張りを守る!っていう、子供じみた勝手な気持ちだったけど、ボンさんたちはそんなアホな私すらも尊重してくれている気がした。