16話*外の世界
ボンさんは元の場所に戻ってから、1人で暮らすのにどんどん慣れて、いつものボンさんらしさを取り戻したようだった。
仲良くはないけどボルトもいるし、ご飯を一緒に食べる事もあった。
毎晩、仕事がどんなに遅くなっても、たとえ雨が降ろうとも私はボンさんに会いに行った。
ボンさんは、私の姿が見えると走ってきて迎えてくれ、自転車の横を並走する。降りると足にスリスリ絡み付いて来るので、コケそうになりながらご飯場まで一緒に歩いた。
ご飯が終わると、階段で一緒にのんびりする生活が戻った。
引っ越しも決まり、早くボンさんと暮らしたい。
そう思う気持ちと、外で自由にボンさんらしく生きる姿がボンさんには似合うな…という気持ちに挟まれた。
きっとボンさんは外の暮らしが好きなんだろうと、一緒にいると感じていた。
野良猫の餌やり問題があるのは知っている。
猫が嫌いな人もいるのも知ってる。
他の餌やりさんがボンさんのために置いてくれていた水いれに、誰かが防虫剤を入れていた事もある。
ボンさんは賢いから飲んでなかったけど。
警察にやんわり注意された事もある。
「餌をやるなら責任を持って飼え」という人たちもいる。
色んな声がある。
ボンさん達と会って感じたのは、人間は全部人間側の都合であれこれ言ったり決めようとして、猫という括りで個というボンさん達の存在の自由を無視しているように感じた。
飼うか飼わないかだけの選択肢はなんだか変だな。
猫にも選ぶ権利あるだろう?
ボンさんの気持ちを考えてたら、単純に飼うか飼わないかなんて簡単に私には決めれない。
何度もふと思った。
なんだか、色々難しくて悲しい問題だなと思う。
人間の作った社会の隙間に、ボンさんは強く生きている。
人間が手を貸さないといけない猫も沢山いるだろうけど、ボンさんは外で自由に生きる喜びみたいなものをしっかり感じている猫に見えた。
でも、でも、
ボンさんもホウホウがいなくなって寂しくて私達と暮らすのを待ってくれてるかもしれない。
ボンさんは、私達と暮らす事をなんて思ってるだろう 。これは私達のエゴかもしれない。
ボンさんの気持ちを聞いて決めたい。
そして、助けてやれなかったホウホウは、最後どんな気持ちだったのだろう。
この頃私はボンさんとホウホウの気持ちが無性に知りたくて仕方がなくなった。
そして、私はネットで動物と話せる人、アニマルコミュニケーターさんを探し始めた。
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