21話*ワチャのロックンロール
ボンさんを家で保護している間も、私はワチャに会いに行っていた。
ご飯をあげ、体を拭いてあげたり、膝に乗せたりした。
ワチャはボンさんに教えてもらったのだろう、ボンさんとホウホウがよく寒い日に寝ていたアパートの階段下にある用具入れの箱の上で寝ていた。
会いに行って覗くと、丸くなって寝ていたワチャが起きて私の顔を見ると「にゃあ」と鳴き、眠そうにしながらも箱から降りて傍まですぐやって来た。
それがいじらしくて、愛しかった。
でも、どこかで情が湧かないようにセーブしていた。
ワチャが現れてから、ボンさんと一緒に住む事を考えていた私はワチャが気がかりだった。
ワチャは人間にもよく慣れていて、明らかに人間に飼われていた感じだった。
野良猫で生きていくには心もとなく、ボンさんより家が必要なのはワチャの方だと感じていた。
ワチャを置いてはいけない、そう思っていた。
でも、私達はボンさんだから一緒に暮らす事を考えれた。
2匹一緒に暮らすのは、猫を飼った事がない私達にはハードルが高く思えた。
だけど、ワチャだけで野良猫生活を生き抜くには過酷すぎる。
ワチャが捨て猫だったら余計に、それは切なすぎる。
でも私達はボンさんと暮らしたい。
そんな、色々なことを考えてしまっていた。
私はまだ、猫を好きというよりボンさんが好きだったから複雑な気持ちになってしまったのだった……。
とにかく私達は、猫に関して色々な事に無知でもあった。
引っ越しを明日に迎えたある日。
ワチャとボンさんと一緒に遊んで「帰るね」といって歩き始めると、ワチャが私達に付いてきた。
それまでも何度か付いてきて、何だろうと思ってたら道の途中にある水場に行っていたのを見かけていたので、また水を飲みに行くんだろうと思っていた。
でもその日は、
ワチャは、水場に行かず途中で道の真ん中に座った。
そして私達が帰るのをじっと見ていた。
私はそれが気になって、何度も振り向いた。
私達が見えなくなるまで、ワチャはその日見送ってくれた。
あ、この感覚………知っている。
そう思った。
その感覚が何かを深く探らないように、私は帰った。
次の日、ワチャは居なかった。
何日経っても、姿を現す事はなかった。
やっぱり…
私の複雑な気持ちを察して、自ら姿を消したのだろうか?
もしワチャが本当に捨て猫だったら「誰も私を必要としていない」と思って絶望していたかもしれない。
私もワチャにそんな気持ちを抱かせて、ワチャとお別れになってしまったかもしれない。
今でもワチャを思い出す。
思い出してしまうと、背骨が軋むほど切なくなる。
あの頃、深く考えずに成り行きに任せる気持ちでワチャもボンさんも皆で楽しく暮らそう!って、出来なかった自分。
もっと、私にでっかい愛があったらと、今でも悔やんでいる。
ワチャの気持ちや事情、どこに消えたのか、真相は知るすべはないけど、
私は、ワチャを忘れない。忘れられないのだ。
ごめん。
ごめん。
ごめんね。