見出し画像

残念無念ショー

仕事帰り。

腹ぺこのワタシの最近の楽しみは、チャリの上での食事である。

はしたない四十路。

はしたなさに夜の魔法をかけて人目は気にしない。



運転しながらカゴの上に、器用にサンドイッチを広げ、動くピクニックを楽しむのだ。



一度も止まる事はない。



今日も意気揚々とサンドイッチを食し、さらに『鮭おにぎり』を片手に自転車で走っていると、



いつもの橋の上が何やら工事中。



現場の人がウヨウヨいるではないか、これは危険だ。



さらに橋は坂にさしかかり、おにぎりで塞がれた手に緊張が走る。



人にぶつからないように、スピードが出すぎないように左ハンドルを握る。


右手は食べかけの鮭おにぎりをしっかりと、握っている。



左ブレーキはバランスを崩しやすい。

そこは私のスーパーテクニックで微調整。



緊張の面持ちで私は挑んだ。





絶妙なバランスを保ち、工事現場のおっちゃんの間を私は難無く風を切ってすり抜けた!




ヒャッホー!



見たか!私のスーパーテクニックを!こちとら片手におにぎりだ!




振り返り、おじさん達にニヒルに微笑んだ。



躍動する肩と足。


チョロいもんよ、アッハッハ!



さあさあ、お待たせお待たせ、食事の続きを…

と、あんぐり大口開けて右手のおにぎりを見た瞬間………





『おあっ!!』



私の声が真夜中の路上に滑稽に響いた。


自転車を止め、私は右手を見たまま愕然とした。


おにぎりのメインのおかずである『鮭』だけが、吹き飛んでいたのだ!!!


なんてことだ!!



眼前にあるのは、穴の空いた白い米の塊。


米に空いた穴が、サケの面影と匂いだけを残し、私の右手で呆然としていたのだ。



『 サーモン イズ ゴーン?! 』



あああああ、さっきの坂道のバウンドの時だなチクショウめ! !



きっと鮭は今頃工事しているおじさん達の足元だ!!



『ぬおおお~~~~~~~~っ』



私は必死で現実を受け止めた。





そして、一瞬で具を奪われた、


一瞬で風でズラが飛んだおっさんの頭のようになった白米の塊。



かつては『鮭おにぎり』だった、君。




私の涙でさらにしょっぱくなったそいつを哀れみながら口に押し込んだ。



モグモグしながら私は月を見上げた。




『 ああ、お月様、なんで私から鮭だけ奪ったの?
    私、お米はおかずがないと食べれないって、生まれた時にプロフィールに書いたじゃない………』


でも、


でも、塩味の白米はギリ食べれるううう~~~~。

以上

『大きな具がメインのおにぎりは自転車こぎながら食べるなよ』

推奨代表ギンガギンガトンの残念無念ショーでした。

いいなと思ったら応援しよう!