27話*猫と暮らしたい
ボンさんと出逢ってから、私達は少しずつ仕事がうまく行き始めた。
苦しい時はボンさんに会いに行き、ボンさんと一緒に風に吹かれながらリセットする。
そんなことを繰り返しながら、どうにか前に進んで来た。
私達には『友達』がボンさんしかいなかった…笑
人間関係は沢山あるけれど、人間の友達は私達にはいなかった。
やっとできた友達が、たまたま『野良猫』だった。
気が合うのが人間じゃなく、猫の中にいただけ。
でも、本当に心が繋がるってこういう事なんだよ。
生きる事を労り合いながら過ごせるって、本当の『友達』だと思う。
私達はラッキーだ。
ボンさんに出逢えて、幸せ者だ。
私は、少しずつボンさんとは別に『猫』というものに興味を持ち始めていた。
もはや興味というか、リスペクトだな。
ボンさんを通じて、色んな猫の生き様を垣間見ていたからだろう。
エンパシーを感じていた。
ボンさんとは暮らせなかったけど、わたしは密かに猫と一緒に暮らす事が自分には必要な気がし始めていた。
いつかもし道端で子猫を見つけ、その子猫が逃げずに捕まえれる猫だったら家に連れて帰ろう。そんな事を漠然と思っていた。
ある日。
いつものようにボンさんと子猫兄弟にご飯をあげ、階段でボンさんを抱っこして宙を見ながらボーっとしていた。
(うお~~うあ~~、やっぱり家で猫を抱っこしながらテレビ見る生活とかしたいなあああ、良いなああああ~~~~)
発作的に、急にそんな気持ちが猛烈に沸き上がってきた。
そう思いながら妄想を膨らましていると、
遠くから、
ミー!ミー!ミー!
ミー!ミー!ミー!
子猫の声がし始めた。
?!(゜ロ゜)
まさか?!
私はボンさんを膝から降ろし、声がする方に向かった。
ミー!ミー!ミー!
アパートの植木の隙間から声がするので覗き込むと、白黒の小さい子猫がいた。
実はここら辺で何度か子猫は現れた事はあったけど、どの子猫もほぼ触れた事はない。
ボンさんファミリーの子猫ズすら、ご飯をあげてくうちに慣れてちょっと近くまで来るようになったけど触れた事はない。
だから、逃げるかめっちゃ『シャーシャー』されるだろうな、、、と思いつつ、白黒子猫に手を伸ばした。
白黒子猫は植木の奥に身を隠すように逃げた。
けど、私の手がすぐ追い付きあっさり捕まった。
えー!!
捕まえてしまった、、、、!ヤバい!
しかも、抵抗しない、、、、。
そう思いながらコートの中に抱きかかえ、ボンさん達といるTの元へと子猫を連れて行った。
Tはもちろんビックリ。
『え?捕まえたん?!………どーすんの』
『連れてかえる』
『マジか、、、、』
わたしも内心、
(マジか、、、、)と思っていた。
なんせ、やっぱり猫と暮らしたい!って思った矢先の出来事。
まるで流れ星が私の願いを乗せて落っこちてきて、白黒子猫になったみたいじゃないか。
これは逆らえない何かだ。神様からのギフトだ。
『絶対わたしは連れて帰る』と豪語した。
ボンさんが白黒子猫を覗き込むとシャー!されていた。
ボンさん、『ふ~ん』って感じで階段に座った。
白黒子猫は、なんだか子猫のわりに落ち着きがあってリラックスしていた。
子猫を抱きかかえ、歩いて帰る道中もコートの懐の中でずっと大人しくしていた。
一瞬で奇跡が起こって昨日と全く違う毎日が始まろうとしている事に若干脳ミソが震えつつ、私は歩きながら幽体離脱するんじゃないかと思うくらい、ドキドキとワクワクでスパークしていた。
わたし達は宇宙から小さな子猫を授かったのだ。