19話*ボンさん、病院へゆく
ボンさんもいて、ボルトもワチャもいて、また少し賑やかになって嬉しいなって思っていた。
ところが、数日もたたないうちにせっかく元気になったボンさんは、また鼻が詰まり風邪をひいて、片目がただれたりしていた。
わたし達はまたボンさんを家に連れて帰った。
(2回目はどうやって連れて帰ったか何故だか記憶にない、、、、)
2回目の家に来たボンさんは慣れた様子だった。
ボンさんは鼻が詰まって苦しそうで、鼻を拭いてあげたりしながら暖かい部屋で沢山寝てもらった。
ボンさんが起きてる時に、ボンさんに一緒に写真撮ろうと言うと、わたしの顔にずーっと頬擦りしてくれた。
寝転がると、ボンさんも横に来て一緒に寝転がってくれる。最高だ。
ボンさんといると、ボンさんが人間みたいな感覚になるし、自分が猫になった感覚になるし、心に種別の隔たりを感じない事がよく起こった。
ボンさんがいる生活はやっぱり幸せだ。
2泊して、少し元気になったボンさんをいつもの場所に帰した。
もう大丈夫かなと思って帰したけど、ボンさんはまた目がただれ鼻水もひどくなった。
治りが悪そうだったので、意を決して、私達はレンタカーを借りて来て病院に連れて行くことにした。
初めてなのでドキドキしながら近くの病院に電話して相談すると、野良猫は暴れたりするから洗濯ネットに入れて来て下さいと言われた。
レンタカーを借りて、洗濯ネットを持ってボンさんに会いに行った。
言われた通り、ボンさんに洗濯ネットに被せた。
ボンさんはあっさり捕まった。
車に乗せるとボンさんはもの凄く鳴いた。
鳴きながら逃げたがるボンさんと格闘しながら何とか病院に辿り着いた。
初めての動物病院で、わたしはドキドキ。
ボンさんは病院に着くと大人しくなった。他に動物や人がいるから警戒していたからかもしれないけど、呼ばれるまで静かにしてくれているから、私もちょっと安心して待てた。
心配していた診察も、めちゃくちゃ大人しくてびっくりした。
治療処置のため先生に預けて、しばらくすると呼ばれた。
診察室に入ると治療を終えたぐったりしたボンさんが、大人しく診察台に寝そべっていた。
今思うと普通は逃げるから、最初に入れていた洗濯ネットに治療終わったらまた入れられていてもおかしくなかったけど、ボンさんは素の状態で普通に診察台に寝そべって目を細めて空を見ていた…笑
( ああ~…最悪だったゼェ~ )と思っていたのかもしれないな。
『注射三本打ちました。すごく大人しくしてくれて、最初ちょっと暴れただけで、あとはちゃんと打たせてくれましたよ~』
と報告してくれる先生の話を聞きながら、頑張ったボンさんを少し引き寄せて撫でていると、
『この猫さんは、飼う予定なの?』と聞かれた。
『はい、そのつもりなんですけど今は飼えない家に住んでいるので、引っ越すまでは…』と言うと、
『これだけなついてるから飼ってあげれたら一番良いですね。野良猫でこんなに大人しいのも珍しいですよ』
と先生は言った。
終わって料金を払う時に受付のお姉さんに話かけられた。
『え、野良猫なんですよね?引っ掛かれたりしなかったですか??』
『え?いや…全然』
と、私はキョトンとした。
そういえば、ボンさんに引っ掻かれたり威嚇されたりした事は一度もないなと思った。
ボンさんが引っ掻いてくるなんて考えた事もなかったなあ。
保護する時とかも、暴れても引っ掻かれた事がない。
『あ、仲良しなんですよ。いつも一緒に散歩もしてくれますよ、へへへ』と調子にノッて自慢しちゃうと、
『え〜、すごい!散歩するんや?』
と、先生や看護婦さんがボンさんを褒めてくれたので、わたしはホクホクした気持ちになった。
ボンさんは、帰りの車の中で、またずっと鳴いていた。
『病院はもう行きたくないからね~?ぼくは病院キライだよ~もう~』というような、小言感満載の声で鳴いていた。
頑張ったボンさんにお礼のご飯も買って、いつもの場所に送り届けた。
次の日、様子を見に行くと、まだ目が治ってなかったのでまた病院に連れて行こうかと思った。(←今思うと心配し過ぎて過剰だった)
今度はネットを見せたらすぐさま逃げた。
ワチャを撫でてたらヤキモチか鳴きながら戻って来て、またネットが見えたら走って逃げる。
ワチャを撫でてたら、また鳴きながら戻ってくる…
を、散々繰り返し、
遠くから、近づきたいけど近付けないからやめてくれー!って鳴いて訴えるボンさんが非常に面白かった。
私達は病院をあきらめ、様子をみることにした。
その次の日にはボンさんはすっかり良くなっていた。
きっと「治るから!病院はもう良いよ!」って無知な私たちに言ってたのかもしれない。