28話*イチとシバ
子猫を連れて帰り、明るい部屋でご対面した。
野良とは思えないほどキレイな身なりの子猫だった。
初めての事で分からないけど、とりあえずミルクをあげてみた。
初めての人間の家でものすごく警戒するんじゃないかと思っていたけど、子猫はえらく落ち着いていて遊ぶくらいリラックスしていた。
毛繕いまでしだした。
(゜ロ゜)なぜか衝撃。
猫の事は分からないけど、毛繕いは成猫しかしないイメージが勝手にあったので、こんなにちっさいちっさい猫が毛繕いするのは、子役がバラエティーで大人顔負けの返しをしているのを見る感覚に似てた。
なんだか『小さいのに大人びてないか?!』という衝撃だった。
とりあえず夜も遅いので、寝かしつけてみたら赤ちゃんだからすぐ寝てしまった。
無印の段ボールの収納ボックスをベッドにして寝かした。
この日から、私はまだかすかにどこかで子猫の鳴き声がしているような気がしていた。
子猫に敏感になって空耳まで聞こえてるぜ。
そう思っていた。
子猫と出会った日に私が見た夢。
子猫が母猫にテレパシーで私達の家にいる事と場所を伝えていた。
すると、母猫である黒猫が家に来て『娘をよろしく~』とスリスリしてきた。
『あと、この子たちもお願い』と言われ家に沢山の子猫が押し寄せて来て、
『む、無理です~!』という夢を見た。
Tも夢を見たと言った。
『二人はね、魔物に狙われやすいから守りに来たんだよ。いざとなったらこうなるから大丈夫!』
と言って子猫が神様みたいな妖猫に変身した。
という夢を見たらしい。
魔物に狙われやすい……と?
そうか……
私達、実は諸事情があり『魔物』に常に狙われているのを自覚している。
(この話はまた別で書くつもりです)
守りに来てくれたなんて有り難てい!!
私達は、白黒子猫の名前を『イチ』にした。
私達を守ってくれると言うので、子猫も神様に守って貰えるように神様の名前からとった。
次の日は、二人とも用事があったので留守にしなければいけなかった。
イチは1人でお留守番できるかな、いきなりの試練だな。
そう思いながら、お留守番を頼むもイチは全然平気そうだった。
帰ると1人で大人しくおもちゃで遊んでいた。
2日もたたぬうちにイチはすぐにおてんばを発揮した。
1人で家中を走り回り、なぜか噛み癖がついてしまい、ピョンピョン跳ねながら体中に噛みついてジャレてくる小さな怪獣になった。
『痛い痛い~!』って、落ち着きのない無邪気な怪獣に翻弄されっぱなしだった。
(ちょ、想像してたんとちゃうやんか~)
先が思いやられるも、病院に連れて行った事でちょっとテンションが下がって落ち着きを取り戻した…笑
イチが来てから3日目の朝。
ミー!ミー!ミー!
子猫の鳴き声で目が覚めた。
イチではない子猫の声が外から聞こえていた。
2階の窓を開け見ると、路面の道に子猫がいた。
Σ( ̄ロ ̄lll)
目の前は大きな道路、道は自転車が行き交っていて子猫にとっては大変デンジャラスな状況。
子猫は道路の方に向かって鳴きながら飛び出ようとするも、自転車が来ては引き返す、、、を繰り返していた。
すると、寝起きのTが『あいつも飼おうや~♪』と、外へ飛び出して行った。
『えー!!ちょ、ちょっと!無理だな~!無理だな~!』
私は恐れおののいた。
まさか、空耳だと思ってた鳴き声はあの子猫だったのか…?!
いやいや、まさか。
猫初心者の私達に、いきなり2匹はハードルが高く思えた。面倒ちゃんとみれるか不安だ!
数分後、、、
『あかんかったー、すぐ逃げられた』
そう言ってTが帰って来たので、ホッとした。
ところが、
『なんか目が潰れてる猫だった。目見えてないんちゃうかな』
と、続けて言った。
Σ( ̄ロ ̄lll)!!!!
コンタクトをして窓を開けて見てみると、子猫の目は確かに潰れたように黒くなっていた。
………なんてこった……。
『と、とにかくうちにはもうイチがいるから無理!』
子供の頃は言われる方だったセリフを自分が言うとる!
チキショー!
わたしは子猫の鳴き声が聞こえないように、もう一度寝た。
(捕まらないから飼えないし!そのうちどっかに行くよ!うんうん。)
と、納得させながら、、、。
その日わたしは仕事が休みだった。
起きて、子猫が気になり私も外に出てみた。
子猫はまだ鳴きながら道路に向かって飛び出そうとしたりしていた。
『ひぃ~~お願いだから飛び出さないで~~』
と子猫に近付くと、子猫はサッと逃げ、空き家の玄関前にあるブロックに上った。
もしかしたら、空き家で猫が子供を生んでたのかな……。
ブロックに上がった子猫は、こちらをジ~っと見た。
目がばっちり合った。
目やにが凄いが、かろうじて少し見えているようだ。
ゆっくり近付くと、ギリギリで子猫は逃げて隣の民家の排水溝に隠れた。
こりゃ、触れないな。
そう思って、ホッとしながらも、何だかモヤモヤしながら家に入った。
つ、ツラい………。
しばらくすると、子猫の鳴き声がどんどん近付いて来て、うちの前から鳴き声が聞こえだした。
隣の民家からの排水溝をつたって、うちの排水溝に入って来たのだ。
わたしは家の中でドキドキしながら悶々悶々悶々。ウロウロ。ウロウロ。
あ!洗濯しなきゃ!
よし、洗濯でもして気を紛らわそう!と、洗濯機の前に行った。
(ん?待てよ、洗濯したら子猫がいる排水溝に排水が行く、、、)
やばい!!!
そして私は玄関先に出た。
(よし、こうなりゃ、、、、)
私は賭けに出た。
排水溝の蓋を開けたらきっとまた逃げるだろう。
が!
もし!!
万が一、捕まえれたら家に入れよう。うん。そうしよう。
そう決めた。
そして、排水溝の蓋を開けると子猫は小さく丸まっていた。
(鳴き疲れたのかな、、、)
私は意を決して首根っこ掴んだ。
あっさり捕獲。
そのまま玄関へ入れた。
玄関で子猫は逃げ惑ったので、つまんで篭に入れて撫でると急にゴロゴロと喉を鳴らしてすり寄って来た。
子猫の態度急変にビックリ。
さらに段ボールにクッション入れて子猫を入れると、ずっとゴロゴロしながら甘えようとしてきた。
目の状態は悪かった。
おまけに排水溝やらあちこち行っていたからドロまみれだった。
わたしはとりあえず、お風呂に入れた。
目やにはお湯でふやけてちょっと取れたのでマシになった。泥もキレイにした。
箱の中でドライヤーで乾かすと、暖かいからか大人しく乾かさせてくれた。
新居から実は動物病院が徒歩3分のとこにある。
イチに続いて次の日病院に連れて行くと、猫風邪とのことで薬を貰った。
子猫の風邪は放っておくと酷ければ目やにで目が潰れて目が見えなくなるので、野良で生き抜くために母猫が見放すケースもあると聞いた。
子猫はそのまま亡くなったり、カラスに殺される事もあるらしい。
そうか、、、良かった。
受け入れる選択肢ができて良かった。
数日すると、子猫の目は治り可愛らしい顔が見えた。
名前は『シバ』。
ボンさんと同じキジトラ。 そういえば最初にボンさん以外で猫飼いたいと思った時に、ボンさんと同じキジトラが良いなあ~なんて思ってた。
シバはまだ風邪をひいているので、イチに風邪を移さないように隔離が必要だった。
なので、しばらく段ボール生活をシバに強いることに、、、、。
可哀想だったけど、シバは段ボールの中に作ったトイレもきちんと使い、ベッドで大人しくしてくれていた。
ご飯の時は段ボールの屋上で。
イチはシバに興味津々。
シバはイチに警戒することも過剰に意識することもなく、マイペース。
少しして、パーテーションを作って2階でシバを隔離していた。
でもイチはシバと遊びたくて遊びたくて仕方がなかった。
隔離してしばらくすると、気付いたらパーテーションを越えてシバと仲良く遊んでいる事があった。
何度隔離しても気付いたら一緒に遊んでいるので、ワクチンを二人とも打った後は解放。
イチとシバは1日中一緒に遊んだ。
イチは1人だったら毎日退屈だったかもしれない。
シバが来てくれたおかげで、イチは噛み癖が治った。
イチは最初全く水を飲めなかったけど、シバが水を飲んでる姿を見てから飲めるようになった。
シバが来てくれて本当に良かったのだった!
そして私達は可愛いイチとシバとの生活で、新しい喜びと愛と幸せを知ることになった。