26話*スリッパ足の茶トラ
別の猫も現れるようになった。
人馴れはしていなくて、めちゃ威嚇してくるけど『ご飯をくれ』と粘る老猫ぽい茶トラだった。
手が大きくてスリッパ履いてるみたいで可愛い。
ボンさんは受け入れようとはするものの、なんだか気難しい感じの猫だったのでボンさんとは時々ケンカした。
臆病な故に気が荒く、人間にうまく取り入るほどの器用さがなく、本当に不器用な猫だった。
『ヒロシです』感強め。
ご飯を少し分けてあげると、シャーシャー言いながら鬼の形相で食べていた。
すごくご飯に苦労してきたようだった。
↑ボンさんがご飯を譲る事も多々あった。↑
一度ボンさんがチャトラにものすごく怒ったことがあった。
チャトラは『アアアアアアア!!』ってすぐ叫んで身構えた。
その声が『志村けん』にそっくり過ぎて私達は反射的に笑ってしまった。
ボンさんの圧倒的な気迫の強さに怯んだチャトラが、必死で身を守ろうとしたその姿があとからとんでもなく切なくなった。
ボンさんが前よりなんだか強くなっていてびっくりしたし、チャトラの弱くて不器用ながら必死で生きているのが、
胸がキューっと締め付けられて、なんだか色んな感情が押し寄せたのを覚えている。
笑ってごめん。きみもカッコいいんだよ。
って、伝えたかった。