22話*ボンさん、新居にやって来る
ボンさんエリアから河川敷を歩いて、15分ほどで行ける距離の借家に私達は引っ越した。
越して来て1ヶ月。少し落ちついて来た頃。
ある晩、2階で寝ていたらベランダで物凄い音がして、窓に奇妙な影が映った。
『ひやあああ~~~!!ドロボー?!』
めっちゃくちゃビビッた。
心臓ばっくんばっくんしながら、ベランダの小さな窓を開け、目が合ってお互い固まった相手は、、、。
野良猫だった。
それから家の裏口に、その野良猫がいつも居る事に気が付いた。
近隣の人が世話をしているようだった。
それは嬉しくもあったけど、ボンさんが出入りするという想定をしていたので、先住猫とボンさんがケンカになってしまうんじゃないかという懸念が生まれた。
ボンさんのガタイと先住猫を比べると体格差がありすぎる。ボンさん絶対勝ってしまうから気の毒だ。
あと、家の前が大きな道路なのもやっぱり怖いな、、、という不安が芽生えていた。
なので、ボンさんを家に入れても外と自由に行き来は難しい、でも家に閉じ込めるのは、嫌だな………。
心配してあれダメこれダメとなって、ボンさんに私達のルールを押し付けてボンさんの良さを全部私達が奪ってしまうんじゃないか…と思った。
でも、せっかく引っ越したから一度家を見てもらおうと、私達はボンさんを新居に連れて行ってみる事にした。
『私達ボンさんと一緒に住めるお家に引っ越したよ。だから、遊びに来て』
と、何度も説明しながら、今度は篭に入れずに一緒に河川敷を歩いてボンさんを家に連れていくことにした。
ボンさんはいつもの散歩と同じように歩き始めた。
今日はいつも散歩してる場所の更に2倍の距離を歩かないといけないボンさん。いくら私達と散歩慣れしてるとはいえ、その距離をまともに付いて来てくれるだろうか……スムーズに行けば片道20分ほど。
だけど、私の心配をよそにボンさんは今まで行った事がない場所に突入しても、全く臆せずどんどん歩く。
興味津々に時々寄り道しながらも、私達と一緒に歩き続けてくれた。
ボンさんの寄り道が多過ぎて、河川敷だけで一時間近くかかった…笑
そして一番懸念していた住宅地に突入。
ボンさんは住宅地もちゃんと一緒に付いてきてくれた。
途中、猫に出くわしたりしてボンさんが猫のとこに走って行ったり、マンションの植木や民家の奥、とにかく気になったらボンさんどんどん寄り道するので私達は肝を冷やしながらも、必ず私達の元に帰って来てくれるボンさんを辛抱強く待った。
小学校のグラウンドの前を通った時、『あ!ここにも学校あるじゃん♪』ってボンさんは嬉しそうに、グラウンドの塀に身軽に飛び登った。
『わー!ダメダメ』と言うと、ボンさん止まって私達をじっと見た。
私達が必死で止めるのをじっとみて『そうなの?そんなにダメなの?んじゃあ、やめとくか』って降りて来てくれた。
私達は胸を撫でおろして、また歩き始めた。
そんなこんな未知なるボングー珍道中を繰り広げながらも、私達はついに家に到着した!
裏口から入ろうと、裏口の通路を通って行くと、ボンさんは何の抵抗もなく付いてきた。
裏口を開け、私が家に入るとボンさんも入って来た!!
すごい、ボンさんが自分の足で家までやって来た!
そして、私は最後尾にいたTに合図して、裏口のドアを閉めてもらった。
その瞬間、ボンさんは大パニックを起こした。
まるで『騙したな?!』というように、明らかに怒ったように鳴きわめきだしたのだった。
そして、出口を探してボンさんは家中を走り回り出した。
ここまで予想外に順調だったもんで、家に入ってしまえばあとは大丈夫だろうと思っていた。
泊まってもらって、もし、また外に出たがったら散歩で、、、、なんて計画をしていた私。
突然の『予想外』にショッキングでおろおろ。
『ボンさん、大丈夫だから!大丈夫だよ!』と追いかけるも、ボンさんは逃げまわって、2階の押し入れの奥に入り込み、『にゃああああ』と低い声でうなるように私達に向かって鳴いていた。
め、めちゃくちゃ怒ってる……( TДT)
私達は一旦落ち着くまで、、、、と、一階で待機。
『どうしよ、無理なんかな。ボンさんめっちゃ怒ってるよね…』
Tと一階でミーティングしていると、少し落ち着きを取り戻したボンさんが2階の階段から顔を出した。
『ごめんね、ボンさん、私達ボンさんと一緒に住みたくて、、、』
ボンさんにもう一度今の状況を説明すると、
今度は私達を諭すように、ゆっくりまばたきしながら、すまなそうに鳴き出した。
『やっぱり、ボンさんは外が良いんだな…………』
私達はボンさんの様子から、そう感じざる得なかった。
泊まるのも無理かなあと判断し、またボンさんを元の場所に送り帰す事にした。
同じ道のりを、またボンさんと一緒に一時間かけて戻った。
私達はボンさんの気持ちを大事にしたいので、一緒に暮らす事を保留にした。