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第3回職工スタン大会参加録
はじめに
10/14(土)に行われた職工スタン=スタンダードコモンアンコモン限定構築の大会に行ってきました。
第1回大会は幸運にも優勝できたため(第2回大会は外せない用事があり欠席)、出席するからにはガチでやろう、目指すは優勝のみ、と意気込んで参加。
結果こそ あまり振るわなかったものの、現状 職工スタン関連の記事が少なく、調整記事には一定の需要があると思ったため、ここに参加録を書かせていただきます。
第1回大会の参加レポはこちら
優勝した赤単の方のレポはこちら
職工スタンの環境理解
まずは環境理解から。
職工スタンはレアおよび神話レアが存在しないため、以下の特徴があります。
多色土地がタップインのものしか存在しない(厳密には《閑静な中庭》や《水晶の岩屋》があるが、前者は部族デッキでしか使えず、後者は色マナを出すと1マナ損するため使いにくい)ため、多色化が通常のスタンより難しい
1枚で勝てるフィニッシャーが(特に低中マナ域に)存在しない
とりわけ、(灯争大戦などの特殊な例を除き)プレインズウォーカーが存在しない(=継続的にアドバンテージを得る方法が制限される)
一方で、除去やカウンター、ハンデスといった汎用的な妨害は、通常のスタンと遜色ないものが揃っている
ただし、全体除去は無い(黒の全体-2/-2修正がせいぜい)
これらの特徴から、必然的に
(現環境における赤単を始めとした)単色アグロが強い
全体除去およびフィニッシャーの不在から、コントロールを組みにくい(単色アグロが多いことも向かい風)
アグロが多くコントロールが少ない環境柄、ミッドレンジはメタゲームに合っているが、一枚一枚のカードパワーで押すタイプのミッドレンジは組みにくい
といった環境であることが導き出せます。
要するに、
現環境の職工スタン、赤単が環境を定義してると思ってる(赤単に勝てないデッキは握るべきではない
— 普通のC++使い、銀天すばる (@SubaruG) September 28, 2023
こういうこと。
この前提のもとに、何を握るかを考えました。
デッキ候補
大会に出るにあたり、検討および調整したデッキを紹介します。
なお、これらのデッキには便宜上 順番を付けていますが、実際に調整する際は基本的に同時進行で行っています。
赤単12インパルス
機械兵団の進軍で《レンの決意》を入手したことで成立したデッキです。
3種12枚採用した衝動ドロー呪文(《無謀なる衝動》《レンの決意》《実験統合機》)をぐるぐるしつつ、《僧院の速僧》《ケッシグの炎吹き》を介してそれらをダメージに変換し勝ちます。
サブプランとして《上機嫌の解体》による面押しも採用。 ダメージ源となる生物を丁寧に除去されると辛いという弱点をカバーします。
見慣れないカードとして《ミラディンの悪断》がありますが、これは「インスタントタイミングで果敢を誘発させられる」「1マナのアーティファクト」で、かつ「攻撃が通ったトークンにつけることで最後の押し込みに使える」上に「最悪でも《上機嫌の解体》の対象になる」という、このデッキに非常によくマッチしたカードです。
また、このデッキの特徴として、「コモンとアンコモンのみで構成されているが、それは縛りで そうなっているのではなく、最善の構築を検討したらこうなった」という点が挙げられます。
これはつまり、通常のスタンダードのデッキとしても気兼ねなく使える、ということ。
実際、エルドレインの森がリリースされる前のMTGAのランクマッチ(BO3)にこのデッキを(《山》1枚を《反逆のるつぼ、霜剣山》に変更した上で)持ち込みましたが、勝ち越せはしなかったものの、十分にデッキとして通用するな、という手応えは感じられました。
なお、このデッキを主に回していたのはエルドレインの森がリリースされる前なので、エルドレインの森のカードは(サイドの《塔の点火》を除いて)採用されていません(《塔の点火》は《炎恵みの稲妻》の実質的上位互換なので、流石にここは変更しないと失礼に当たると思い変更しました)。
今このデッキを調整するなら、《ヴォルダーレンの美食家》を《キャンディーの道標》に変更することで序盤の安定感を上げると思います。
このデッキに興味がある方は試してみてください。
青黒増殖コントロール
増殖コンです。 職工スタンではコントロールは基本的には組みにくいのですが、フィニッシャーの不在を「明確なフィニッシャーを用意せず毒殺で勝つ」(強いて言うなら《虚空翼の混種》がフィニッシャーですが、引かなくても勝てる)という形で解決したものになります。
こちらは第1回大会の参加レポでも紹介したデッキですが、その時からのアップデートは何と言っても《キャンディーの道標》でしょう。
序盤を安定させつつ、暇なときにライフゲインで延命できる(ついでにドローもできる)というのはコントロールデッキにおいては非常に心強いです。
終盤に引いても「3マナになった代わりに3点ゲインのついた《定業》」として運用できるため腐る場面がほぼ無く、まさに「序盤、中盤、終盤、隙がない」という言葉が相応しいカードです(中盤に引いた場合はちょっと弱いかも)。
また、エルドレインの森で収録された《速足の学び》も採用候補ではあったのですが、こちらに関しては、3枚ライブラリーを掘り進められる《発見への渇望》の方がデッキに合っているということが分かったため不採用となりました。
なお、サイドボードにある3枚の《未来の目撃》は、これを使って自分のライブラリーアウトを防ぎ、相手をライブラリーアウトさせて勝つという追加の勝ち筋として、主にコントロールミラーを見据えて採用されています。
が、コントロール自体がほぼ環境に存在しないのと、仮にコントロールを相手にした場合でも毒殺は十分に狙えることから、この枠は他のカードに変えても問題ない(というか変えたほうが強い)と思われます。
このデッキに興味がある方は試してみてください。
ラクドスサクリファイス
シナジーデッキの王道、ラクドスサクリファイスです。
《上機嫌の解体》や《鬼流の金床》から出たトークンを《イモデーンの徴募兵》で強化して殴る、という勝ち筋と、デッキを回す過程で大量のクリーチャーやアーティファクトが墓地に行くことに着目して採用された《溌剌としたヒューズリング》や《屍蚊》で勝つ、という二種類の勝ち筋があり、どちらも非常に強いです。
やはりここでも《キャンディーの道標》は相当に強く、占術でデッキを掘り進めつつ、ドロー(と回復)しながら《金床》《ヒューズリング》《屍蚊》を誘発させてもよし、いざとなれば《上機嫌の解体》の対象にするもよしで、おおよそ腐る場面は存在しません。
また、このデッキには入っていませんが、《再誕槽》を使ったリアニメイト戦略を採れることもラクドスサクリファイスの強みで、(このデッキでは使われていませんが)沼サイクリングで墓地に落とした《鬱牙のやっかいもの》や、自身の能力で生け贄に捧げた《税血の収穫者》など、リアニメイトの対象には事欠きません。
このデッキに興味がある方は試してみてください。
スゥルタイ豆の木リアニメイト
発売以来あらゆるフォーマットで暴れている《豆の木をのぼれ》をフィーチャーしたデッキです。
動きとしては、ランプにより速やかに5マナを揃え、魂力もしくは土地サイクリングで墓地に落とした巨大クリーチャーをリアニメイト呪文で釣り上げる(その際に《豆の木をのぼれ》があればドローできる)、という、至極単純なデッキです。
一点だけ注意があって、サイドの《ストームケルドの先兵》はデッキにマッチしていないので、ここは別のクリーチャーに変えるべきです(アグロデッキ対策になる、戦場に出たときにライフゲインする生物を積むことをオススメします)。
っていうか書いていて思ったんですが青要素は要らないですね。黒緑にまとめた方がシンプルに強そうです。
このデッキに興味がある方は試してみてください。
赤単果敢
「環境を定義するデッキ」赤単です。 果敢よりにチューニングされています。
デッキ名見れば分かると思いますが、大会で実際に握ったデッキはこちらになります。 採用理由は後で書きます。
第1回大会からのアップデートは《呪文槍のケンラ》です(というか、このカードが参入したことで果敢軸のデッキとして組めるようになりました)。
変身させると対応で除去られてしまった場合に大損なので、基本的には変身させずに運用しますが、相手がフルタップなどで除去がないと分かっている場合には変身させた方が強いです。
《キャンディーの道標》は一見《巨大焦がし大口》とディスシナジーに見えますし、実際ライフゲインが無効化されるケースも しばしばあったのですが、1マナで果敢を誘発させつつデッキを掘り進められるのは それだけで強いので、回していて特に問題だと思うことはありませんでした。
というか、このデッキに限らず、《キャンディーの道標》はめちゃ強いです。マナスクリューとマナフラッドの両方を受けられます。
このデッキに興味がなくても《キャンディーの道標》は試す価値があります。 試してみてください。
デッキ選択
先程も書いた通り、大会では赤単果敢を握りました。
とはいえ最初から赤単を選択するつもりはありませんでした。
その理由は、
メタられていること。 赤単は環境を定義するデッキです。 なのでデッキを組むに際しては、(少なくともサイドボード後は)赤単に勝てるような構成にするはずです。 赤単を食うためだけのデッキを使ってくることすら考えられます。 ものすごくしんどいです。
第1回大会で自分が赤単を使って優勝したこと。 顔メタされるのは辛いです。
マナフラッド耐性がないこと。 これは後に《キャンディーの道標》という発見により解決されましたが、それまでは《自律焼炉》という お世辞にも強いとは言えないカードに頼らざるを得ませんでした。
単純に、自分は赤単しか回せないと思われるのが嫌だったこと。 これが一番大きな理由です。
といった感じです。
ということで、最初は青黒増殖コントロールを握るつもりでいました。
理由としては、
メタられにくいこと。 職工スタンはその性質上、コントロールは成立しにくいです。 なのでコントロール対策は、環境理解が深い(≒厄介な)人ほど軽んじられることが期待できました。
相手の除去を腐らせられること。 これは増殖コンの一番大きな強みです。
アグロと比較してタップインがそこまで響かないこと。 いやもちろんタップインはしんどいのですが、相対的にマシです。
誰も成立すると思ってなかったコントロールで勝ったら格好いいこと。 これが一番大きな理由です。
といった感じでした。
そんなこんなで調整をしていたのですが、調整するにつれて弱点が見えてきます。
まず最初に感じた違和感は、手始めに MTGA の Bot Match で調整するときに感じました。 すなわち、
「Bot Match で勝てない場合がある。 それも低くない頻度で」
ということです。 具体的には赤単がしんどいです。 トークン並べられると除去が追いつかなくなって負けます。
更に、
ラクドスサクリファイスに勝てない。 メインが無理なのは分かっているが、サイド後で全除去を入れても後手番だと勝てない
《豆の木をのぼれ》デッキ全般に後手で勝てない。 豆の木が通ってしまうと後はリソースを延々と稼がれて負けるが、後手だと豆の木の着地を妨害する手段が無い(実際には《呪文貫き》があるが、豆の木デッキ相手にサイドインしたくない
それ以外のデッキに対しても引き運次第で普通に負ける(《虚空翼の混種》を引けない場合に顕著
《虚空翼の混種》を追放できる除去が思ったより多い
といった弱点が見えてきます。 特にラクドスサクリファイスに明確に不利がつくのが厳しく、コントロールを握り慣れてないのもあり、断念。
ならば、と、ラクドスサクリファイスを握ることを考えました。
実際、ラクドスサクリファイスは非常に強いデッキです。 しかし、回していくうちに、これも微妙だと思うようになりました。
マナ基盤が貧弱であること。 ラクドスサクリファイスは1ターン目2ターン目と動きたいデッキで、タップインの二色土地は可能なら使いたくないです。 しかし《鬼流の金床》などの色拘束の強いカードのせいで二色土地を入れないとデッキは回りません。
メインに除去を入れるスペースがないこと。 もちろん枠を作ることは可能ですが、フルパワーのラクドスサクリファイスに比べると弱くなりますし、対象のいない除去が《実験統合機》でめくれると損した気になります。
誘発が多いこと。 これは紙で回すときは結構な足枷になります。
対策が容易であること。 ラクドスサクリファイスの生物は、育った《屍蚊》を除き、全体マイナス修正で全部流れます。 それとライフゲインを組み合わせられるとしんどいです。 相手が遅いデッキ(例: 増殖コン)なら何とかなりますが、時間を稼がれている間にやられてしまうデッキが相手だと勝つのは無理です。
ざっとこんな感じです。
このような弱点をカバーできるデッキがないか、そう考えて行き着いた先が、赤単果敢でした。
赤単のマナベースは強固です。 山のみで構築すればタップインも色事故も存在しません。 1ターン目2ターン目とフルパワーで動けます。
赤単は火力を採用するので、自然にデッキに除去が入ります。 対象とするクリーチャーがいなくてもプレイヤーに飛ばせるので問題になりません。
誘発はそこそこありますが、ラクドスサクリファイスほど多くはありません。
対策は容易なようでいて、実は結構大変です。 全体マイナス修正では《ケッシグの炎吹き》《巨大焦がし大口》は流れません。 他の生物も《熊野と渇苛斬の対峙》でカウンターが乘ったら全体マイナス修正の圏外になります。 ライフゲインは時間稼ぎにはなりますが、押されてるときは時間稼ぎにしかなりません。 更にライフゲインを咎める《巨大焦がし大口》をメインから採用することが可能です。
ということで、結局 赤単果敢にすることに。
大会の成績
ラウンド1: 緑白エンチャント 先手 WW
ラウンド2: 赤緑ドメイン 先手 LL
ラウンド3; 黒緑リアニメイト 後手 WLL
ラウンド4: 緑白エンチャント 先手 LL
1-3。 ダメだこりゃ。
敗因分析
直前まで握るデッキを決めかねていたためか、デッキが練れていませんでした。
具体的には《無謀なる衝動》《レンの決意》《実験統合機》の枚数。
《無謀なる衝動》3、《レンの決意》3、《実験統合機》3という配分でしたが、《無謀なる衝動》《レンの決意》を各4枚にして、《実験統合機》は抜き、代わりに《山》を1枚多く採用するべきでした。
直前までラクドスサクリファイスを触っていたために《実験統合機》の価値を高めに見積もっていましたが、赤単果敢においては強く使えないカードだということに、大会に参加してからようやく気づきました。
逆に《無謀なる衝動》《レンの決意》は、《巨怪の怒り》を不採用にしてまで衝動ドローに寄せた構築にした以上、入れるなら合計6枚という半端な枚数ではなく、フルに8枚投入するべきカードだった、と思います。
教訓としては、デッキは早めに決めよう、決めたら徹底的に回してデッキをチューンしよう、ということで。