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51代目の国境警備人(北陸道、木ノ芽峠) 240921

北國街道きのもと宿、令和の本陣である、つるや本店で湖北のB級グルメの王様サラダパンをいただいた。たくあんのマヨネーズ和えをコッペパンに挟んだだけの今まで食べたことのない、けど、あいかわらずクセになる味わいだ

本陣を出発し北陸道を北上する。現在は国道365号線として整備されており、近江側は交通量は少なく広々と走りやすい。これと言った見どころはなく、空き家の多い限界集落を抜けながら斜度5%程度のユルユルの峠を登り詰める

栃ノ木峠でタバコで一服していた本日唯一遭遇したクロモリバイクのあんちゃんと雑談した。フレームは広島のビルダーのもの、コンポはGRX、ワイヤ引きのディスクブレーキにサドルはBrooks、こだわりの詰まったバイクですねと称賛した。今日は信楽を目標とする彼と後はお互いに下るだけですね。お気をつけてとそれぞれの旅の無事を祈った

県境にある誤植看板を撮影、よお気付いたわ。ここから始まる広域基幹林道栃ノ木山中線は、路肩崩落により通行止め。しゃーない国道を進もう。福井側は峠らしくセンターラインのないグネグネした道。だから交通量が少ないわけね

坂取宿手前の今庄365スキー場から木ノ芽峠に向けて登り返し、スキー場だけに激坂だ。激坂の証ポアルージュ加工を超えたコンクリート打ちの亀甲加工だ。これあかんやつ。すぐにギブして押しのぼる。300m強高度を稼ぎ稜線付近へ登るが案内も何もなく木ノ芽峠が見つからない。20分ほどロスして諦める寸前で小径を発見!危なかった

風情のある石畳に藁葺きの茶屋。おぉいい感じじゃん。家の前にいらっしゃった4人組にご挨拶してみると家の主人と、御友人夫妻とその娘さんという感じだ。今は京都に住んでいるが地元出身の同級生なんだって

驚いたのがその御主人は桓武天皇(737-806)から51代目。平氏の血筋で戦国時代からこの場所で茶屋と国境警備に従事されているんだって。峠には平重盛と先祖代々のお墓が祀られていた。今は麓にすんでいて週末に、未だ私有のその茶屋の手入れをされているとのこと。築550年の藁葺きの屋根は10年持たず一番手間がかかると。めんどくさいからトタンに張り替えたいんだけど、地元の教育委員会が許してくれないとゴチていらっしゃった。室内は囲炉裏のあるメインルームと執務室、そして明治天皇をお迎えした畳張りの応接室だ

丁寧にお礼を申し上げて別れた。ご丁寧に見送っていただいて恐縮だ。いやー思いもかけず貴重な体験になったなあと思っていたら、明治天皇の御料水に寄るの忘れた。まあいいや、また来よ。今度は通しで抜けたいな。この山域の古道を調査しておこう。敦賀から近江塩津へ抜ける深坂古道の調査も必要だ

しかし51代目ってすごいな。俺なんかおじいちゃんの名前も顔も碌に覚えていないよ。ま、でもみんなまとめてミトコンドリアイブの末裔だからな。50歩100歩。ご先祖様より自分がどう生きるかが大切だよなぁと思ったけど冷静に考えると俺はしがない下財だ。とほほ

スキー場を下り坂取宿へ。風情あふれる石畳に藁葺きの日本家屋。オーヴァーツーリズムの我が国において南蛮人好みの情景にひきよせられた外国人観光客で溢れかえりそうだが、俺様専用だった。アタリ!侘び寂びを感じたよ

その後は今庄宿や旧北陸線今庄トンネルを抜けてゴールの武生の街へ。まんずは北陸のソウルフード、8番らーめん。看板メニューの8番セットを注文した。優しい味の塩スープが体内に染み渡る。冷静に分析してみるとキャベツ、もやし、にんじん、シナチクの野菜塩ラーメン、今度自分で再現してみようっと

最後はらーめん屋の前にある紫式部公園へ。あっ、ここのご出身なんだと思い寄ってみた。なんか今年のNHK大河ドラマの主人公なんだって。知らんかった。そのためか観光バスが3台、駐車場はほぼ満杯。そして新築らしい資料館が併設されていて地域の人気アトラクションだ

案内板を読み込んでみると紫式部は、京都出身だが父親の転勤でこの武生にわずか1年強住んだだけなんだって。うわ、そんなの絶対駐妻セレブ気取りで現地人を未開の土民として見下してただけだよ

ガイドと観光客があふれる公園に金ピカに輝く紫式部の銅像がなんだかなぁ。京都の方角を向いていて京のことを忘れませんわという望郷の念を表しているんだって。やっぱ駐妻セレブじゃん。せっかく公園まで作ったんだからもうちょっと地元を気にしてよ

ガイドさんの説明をまとめると都でイケイケの見目麗しい恋愛小説作家の紫式部は、9シーズン54エピソードの代表作源氏物語を完成させたんだって、上流階級の男女の恋愛模様のリアルな心理描写が秀逸で大ヒット作品だったんだって。モテない君の俺には興味はほとんどないけど平安時代のセックスアンドザシティみたいなもんだろ。見たことないけど

地味なルートだが割と興味深い自転車旅だった。次は敦賀→木ノ芽古道→旧北陸線トンネル→ヨーロッパ軒→古坂古道→近江塩津。このルートでこの北陸道の難所であるこの山域を締め括ろう


栃ノ木峠からの栃ノ木山中線は今回通行止め(ちゃんと以下のHPに記載があるね)

深坂古道と木の芽古道はおそらく乗車不可で「押し」区間

旅のアルバム

チャリは通行止め
旧北陸本線湯尾トンネル
35°42'24.1"N 136°08'11.6"E
木ノ芽古道敦賀側取り付き
でた激坂名物ハニカム仕上げ
柳ケ瀬の限界集落。小学校が一切ない


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