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湖東、湧水と建築物を巡る小さな旅(240929)

史上最も暑い夏にあれだけギラギラとエネルギーを発散し続けたお天道様も諸行無常の理を免れえずその熱量はゆっくりとしかし確実に衰えて始めている。今朝は暑くも寒くもなく道路脇の温度表示は25℃、影のささないどんよりとした曇り空でそれはそれで意外とサイクリングにはいいコンディションだ。今日は米原駅東口集合して一年ぶりの同窓会ライドだ。

たまたま居合わせたこれから160キロのビワイチを敢行するというローディのご安全を祈りライドの準備を整える。学生時代からの友人がロードでもマウンテンバイクでもなくチャリヲタから中途半端と見下されがちなクロスバイク乗りでライドにお付き合いいただけるというは凄く偶然で、ありがたいことだ

8:30過ぎ計測開始。最初の立ち寄りスポットは、国道21号を少し戻ってJR東海道線醒井駅のある中山道醒井宿。往時の雰囲気は残っており、かつヤマトタケルの伝説が残る湧水の水量豊かで街道の片側に流れる地蔵川となり、情緒と潤いのある宿場町だ。川の流れで手と顔を洗った。冷たく綺麗な水でさっぱり爽快だ。問屋だった建物を利用した資料館を見学し次の宿場へ向かった。次の番場宿は観光地化されておらず静かな街道をさっと駆け抜けた。高速道路脇の峠道を登りとくに何もない摺針峠をぬけ鳥居本宿へ

ここから旧中山道を一時離れ午前のハイライトの男鬼(おおり)集落へのヒルクライムに取り付いた。スペックは約9キロ、400m強の登り。センターラインのない1.5車線、落石、落ち葉で若干荒れているが斜度は安定しており、対向車もなく気楽にお喋りしながらチンタラ登るには丁度良い運動強度の峠道だ

雨がポツポツ降りはじめたりして最近の天気予報は当てにならない。しかし多少の雨なら速乾性のあるサイクリングウェアにはほとんど問題がない。逆に炎天下よりましかも

特に眺望を得られないまま無事峠を越え、集落へのダウンヒル開始。薄暗く鬱蒼と生い茂る林道の濡れた路面の轍の間から苔がライトグリーンの光を放ち幻想的な雰囲気だ。ライドしたままスマホを取り出し写真を撮りたくなったが下手して滑って落車しないよう諦め慎重に降った

男鬼集落は積雪対策であろう高く急な角度の屋根が特徴的な集落で1971年には廃村になっている。往時は人口100人、30戸があり林業、製炭、養蚕で生計を立てたが、高度経済成長による産業構造の変化で過疎化が進み、ついに廃村となった。現在では最低限の管理はされている形跡はあるようだが家屋は荒れるに任せ、梁は崩れかけ壁は破れ、屋根も潰れかけ、全体的に朽ちかけつつあり、諸行無常のもの悲しさを味わえる貴重な場所だ。いやー来てみてよかった

その先さらに2,3キロ下ると落合の集落へ。車が2,30台駐車されていて文明を感じた。恐らく登山口のようだ。そのまま降っていくと林道沿いに廃墟となった車庫や作業場が立ち並んでおり他ではなかなか得られない独特の雰囲気がある

河内風穴は、人気のアトラクションらしく観光客が結構いた。ただ見学に3,40分かかるとの事で時間が押してきていたため思い切ってパス。後から考えると正しい選択だった

麓まで下り多賀大社を公式参拝した。規模が大きすぎず、小さすぎずサクッと立ち寄るにはピッタリなサイズ感が好印象だ

旧中山道へ戻ったところで、雨が本降りになったため街道沿いに丁度よく出くわした建材店の軒先で15分くらい雨宿り。不幸中の幸いでずぶ濡れにならず済んだ。ホントこういうのは運次第だなぁ

国道8号に並走する割には結構交通量の多い旧中山道をそのまま進み、豊郷小学校旧校舎へ。レトロな西洋風の外観で素敵な雰囲気の建築物だ。設計はヴォーリス事務所だって。この旅の後工程で理解を深めたのだが、ヴォーリスさんはアメリカからやってきた宣教師。まずは英語教師として来日し、活動資金を得る為、独学で学んだ建築設計を請負うようになりその後、軟膏の製造販売や不動産、病院、教育など事業を拡大した器用な方だ

近くにある伊藤忠兵衛記念館も訪問。そろばんが置いてある店の間から、隠居部屋や洋式風呂、土蔵など思ったより見どころ沢山だ。11歳で麻布の行商から始め貿易業に目を向けて事業を拡大、二代目は17歳から丁稚奉公からたたき上げ海外拠点を拡大し、伊藤忠商事へ発展させたんだって。創業者って物語が濃いよね

2時前になりようやく、ローカルB級グルメの近江ちゃんぽんを昼食にいただく。太麺に豚肉、キクラゲ、青ネギ、キャベツ、ハンペンのトッピング。独特の黄金の出汁スープは自分での再現は難しそうだが、あっさりして美味しい。どんぶりの底には、大吉とプリントされている。なんかこういうの、気が利いていて、いいね。水分、塩分、炭水化物をしっかりと補給し後半戦へ

愛知川宿はスルーして五個荘(ごかしょう)の町へ。近江商人の街で、蔵壁の通り沿いに流れる清流が素敵なこぢんまりとした街並みだ。ちょうど秋まつりが開催されていて、それなりに賑わっていた

安土へ向かうためトンネルを抜けて繖命水へ立ち寄る。鈴鹿山脈の伏流水が水量豊かに掛け流しの湧水で当然冷たく気持ちヨカ。気前の良いことに合成洗剤を使わなければ洗車もOKという太っ腹な湧水だ

4,50分かかる安土城登城はスキップし、セミナリオ(神学校)、北川湧水、音堂川湧水や枯れていた織田信長お気に入りの湧水、梅の川を見学した。よお見つけたはこんなの。意外と湧水が豊かな土地なんだなというのが新たな発見だ

小さな旅は終わりに近づき、びわ湖よし笛ロードというのどかなサイクリングコースを駆け抜け近江八幡の街へ。ヴォーリス記念館や、八幡堀、白雲館、郵便局、新町通りという定番の観光地を自転車で駆け抜けた

駅前の居酒屋で軽く打ちあげた。ビールがよく回るわ。もともと余裕があったら、近江八幡から米原まで30キロほど琵琶湖沿いに走って帰ろうかなんてプランはとっくに消滅。そんなもんだよなぁ。18時過ぎ支払いを済ませ、すっかり暗くなった琵琶湖線で家路についた

今回は地味なB級スポットを巡るサイクリング計画だったが、昼食と雨宿り以外は休憩をとらず意外と走り応えがあった。観光するのに5,6分も有れば充分な、こういう細かなB級スポット巡りは、車では駐車場やらなんやらめんどくさいし、歩行だと行動範囲が限られ過ぎるし、やはりチャリがピッタリだ

振り返ってみると、意外に豊かな湧水とさまざまな建築物、特に廃墟と独特の古風な西洋建築物が諸行無常を知る味わい深い旅にまとまった。訪れてみて初めて見る景色や気付き、その土地の人物や歴史を知る。旅の醍醐味を楽しめた

ピークアウトした人生でもうレースや競争事には興味はなくなった。速度や、獲得標高とか距離など数値的要素は記録更新するようなこともないだろう。盛者必衰、これからも日々落ちぶれていくだけだが、かわりに好奇心や探究心で、それを補うにあまりある自然や歴史、社会の営みといったテーマを追いかけ飽きることのないサイクリングの楽しみを見いだせた。ありがたいことだ

これはデジタルからアナログへの回帰ということなのだろう、言い古された言葉では花鳥風月の良さを理解し、愛でるということになるんだろうなぁ。いろいろなことを諦め続けて来た人生でございましたが、まぁなんにせよひとつのことを飽きずに続けられているというのは幸せなことなんでしょうなぁ。合掌

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