マサヒロver. キモデブのカミングアウトを食らっても対応別格の盟友山口

女々しく惨めったらしいおれの告白を受けても、山口はやはり、別格だった。見た目はガキ大将みたくやんちゃで、思慮深さとは縁遠い風体だが、その場に相応しい言葉を、神経質なまでに選んでくれたのがおれにはわかった。

山口はこう言った。おれは一生、忘れないぞ。

素晴らしい告白じゃ。こんな告白は、おれには、一生に一度でよかと。

おれは山口に抱き抱えられ、一生ぶん、泣いた。それまでのウダウダした時間と決別したい。泣いて泣いて、全部水に流したいと心から思った。

山口は別格だが、不思議な男でもある。合宿が終わりバスで博多に戻るまでの間、左手でおれの右手をずっと握ってくれていた。

おれは、誰かに気づかれたら騒ぎになるからやめてくれ、と頼んだが、山口は聞かなかった。それどころか、おれの手を自分の腹に押しつけ、

男が、男を好きになったらだめなんか、

と小声で言った。おれは何も言えず山口の腹の肉を握ってみせた。

博多に戻った翌日、山口は初めておれの部屋に来た。部屋に入るなり、壁一面の本棚に驚いたらしく、次々に手に取っては、

これ、マサヒロが読んどっと?

と聞いた。おれは気恥ずかしくて、親父の本だと嘘をついた。

おれは自分が男が好きな種類の人間だと、今度は冷静に説明できた。山口は、おれはマサヒロと、少しちがうかもしれんけどマサヒロのことは好きたい。と言った。

合宿前より、遥かに安心していたおれは、よせばいいのに、くだらない質問をした。

ギンはおれとキスしたいか?おれとエッチしたいと思うか?

するとすかさず山口は右手をあげ、

したいです!!!

元気いっぱいに言った。

ふざけてんのか、おれが言うと、

真面目たい!

怒ったように言った。おれはそれでじゅうぶんだと思った。