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相手の近くに立ってみる話

今回は、浦和レッズが公式インスタグラムにアップしていた練習風景と、実際に試合で関連する戦術行為が活きたシーンを元に、相手に影響を与えて活用するという観点であれこれ考察してみます。

練習メニュー

まずは練習中の動画をご覧ください。4本ありますが同じメニューです。

一人一人がやっているのは下記の一連の行為です。

①ダミーの背後に行く
②味方がフリーで持ち運んだら角度をつける
③受けて前を向く
④持ち運び、正面でフリーになった味方に出す
⑤次の相手の背後に行く

簡略化すると次の映像のような感じです。

ここでは①と②について掘り下げます。

影響と活用

相手に影響を与える

順番前後しますが、まずは②から始めます。

相手の近くから角度をつけてパスを呼び込むのは、味方がボールを持ち運んだタイミングでした。

ダミーは動きませんが、試合であれば、フリーで運ばれる状況に対して相手はなんらかの反応を示します。

ボールを持った味方が相手に影響を与えた状態といえます。

与えた影響を活用する

次の動画の、ショルツ(以下敬称略)のゴールをアシストをした関根の動きに注目してください。

相手はショルツの持ち運びに反応して、セオリー通り中央・背後をケアします。

関根はその間に動き直し、練習と同じように相手の背後から角度をつけ、正面にスペースを確保して改めてボールを呼び込んでいます。

②やこの関根の動きは、味方が相手に影響を与えたタイミングで、その影響を活用してフリーになるためのプレーです。

相手の近くにいる意味

続いて①について。

練習はダミーの相手の背後に向かうところから始まります。

なぜわざわざマークされに行くのか不思議に思うかもしれませんが、どんな行為にもメリットもデメリットも両方あります。

良い面だけ享受して悪い面は顕在化させないといったワガママも、やり方次第で通用するのがサッカーです。組織として強いチームはそうやって出力を高めています。

話が逸れましたが、相手の近くにいるメリットをいくつか挙げてみます。

スペースは相手の周りにある

酒井のゴールシーンをご覧ください。

相手の近くにいた酒井は、相手が横パスに影響を受けたのに合わせて、ほんの少しの動きで逆を取りフリーになっています。

スペースは相手のいないところにありますが、相手の周りにあると言い換えることもできます。

相手は、スペースの中間地点のようなものです。

相手の近くにいれば周りのスペースのどこにでもすぐアクセスできるため、相手の意識や体が向いていない守りにくいスペースに、瞬時にたどり着くことができます。

他の相手との距離

同じ場面で、酒井は誰にも制限をかけられずにシュートを打っています。

ある相手の近くは、周りにいる他の相手から離れた場所です。
ある相手から離れると、他の相手に近づくことになります。

相手の近くでマークを外すと、次の局面では他の相手から離れたところでフリーでプレーできます。

味方をフリーに

上記の理由から、相手に近くに立たれた守備側の選手は、相手が自分の近くでフリーになるのを嫌がり動きにくくなります。

立ち位置で影響を与えているといえるでしょう。

このような関係をピン留めと呼んだりします

ショルツが持ち運んだシーンでは、関根が相手の近くに向かい、ショルツの正面にあるスペースを確保しています。

酒井のゴールシーンでも、酒井がDFラインの相手の近くに立ったことで、低い位置にいる伊藤がフリーになり、また角度は浅く見えますが相手に消されない程度のパスコースも作っています。

このように、相手の近くで牽制することで、味方がその影響を活用して周りのスペースでフリーになることができます。

妨害させずに連動する

次の、PKを獲得した場面で、リンセンはボールサイドに寄り過ぎず相手の近くに留まって手前のスペースを空け、興梠が走り込む前にそっちを指差しています。

集団行動では、味方同士で意図やタイミングを合わせる必要がありますが、相手と対峙するスポーツは相手から妨害を受けます。

サッカーは、相手に邪魔されないように、相手を邪魔しながら味方と連動するべきスポーツであり、影響と活用の関係を絶えず再構築することが重要になります。

そのため、興梠を自分の近くでフリーにするために相手の近くに留まったリンセンや、関根をマークする相手の方にドリブルしたショルツのように、活用できる味方の存在を認識して影響を与える必要があります。

また、ボールを持っている味方や自分の近くの味方が与えた影響を確実に活用するために集中を保ち、情報を集め続ける強い意志も欠かせないでしょう。

関係の連鎖

3人目

酒井のゴールシーンでは、前述のように酒井が伊藤の使うスペースとパスコースを作り出した後、相手が伊藤への横パスに食いついたため、今度は酒井がフリーになっています。

自分が相手に影響を与えて味方に活用してもらい、次にその味方が相手に与えた影響を自分が活用するという流れで、相手の近くにいるメリットが連鎖的に観察できるシーンです。

このように、立ち位置で相手に影響を与えた選手が改めてその後のプレーに関わる、いわゆる3人目になるケースは少なくありません。

自分が影響を与えた相手の近くで味方をフリーにさせられるからこそ、自分と味方との距離も近く保つことができるため、細かい連携プレーに繋げやすいです。

ワンツー

ショルツのゴールシーンで、ショルツが相手に与えた影響を活用してフリーで受けた関根は、自分の正面の相手に分岐を作りながら余裕を持って前進します。

それに対し、ショルツのマークをしている相手は、おそらく目の前にいる味方が関根に縦に突破される可能性を考え、背後のカバーをするためにボール方向に寄っていきます。

ショルツはその影響を活用して、相手から少しだけ離れてフリーでボールを受けています。

(44秒からのリプレイがわかりやすいです)

味方をフリーにして、次に自分をフリーにしてもらうという点で3人目と似た流れですが、2人でより多くの相手を攻略できたという意味でより効果的な崩しです。

関根がショルツの持ち運ぶスペースを作ったのも踏まえると、3回連続で影響を与えて活用し合ったと言えます。

細部から全体へ

このように、影響と活用の関係の再構築をピッチ全体で淀みなく行うことができれば、最終的にゴール前でフリーでプレーできる味方を作り出し、シュートが決まりやすくなります。

また、攻撃している間、相手の連動を妨害しつつ影響と活用の関係は維持できれば、ボールを奪われても組織として相対的に安定した状態でプレーを続けられるでしょう。

そんなワガママを通せるチームはきっと強いはずです。

浦和レッズ頼みます。浦和レッズが全てです。

あとがき

今回はここまで。

影響、活用という2つの言葉を軸にしたら、サッカーが今までと違って見えた、というお話の第一弾でした。

相手と近くでもフリーになれるのかーとか、パスコースは根拠があれば狭くても大丈夫なんだなーとか、ボールを触れてない選手も意外と貢献してるじゃんーとか、そんな発見のきっかけになれば幸いです。

すでにカットした分で続編がある程度進んでいますが、書ききれるかは別問題。淀みなく再構築しようと言いながら、毎度燃え尽きてしまいます。

悲しい。

ひとまず、読んでいただきありがとうございました!


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