"現在"と"未来"を繋げるライン上ポジショニング
今回から数回に分けて、ライン上に関する記事を書いていきます。
その中でも、注目するのは"人と人の間"です。
まずは、ライン間(特に多角形の中心)と比較し、その場所にポジショニングするメリットを、図形的に捉えて考察できればと思います。
実際には駆け引きが存在しているため、より動的に解釈する必要がありますが、段階を分けて少しずつ。
使う言葉
自分がポジショニングについて考える上で、整理するため勝手に使っている言葉があるので、先に共有します。
記事内ではこれで。
横のライン
DFライン上、MFライン上のように使ったりしてます。
人と人の間
任意の、距離が近い2人を結んだ線です。
横のラインもこれに含まれますね。
縦や斜めに結ぶこともできます。
全てひっくるめてライン上と呼んでいます。
(ドロネー図というようです)
ゲート
2人の間を通すパスがありますが、この場合の人と人の間をゲートとも呼んでいます。
手前のライン、奥のライン
基本的には、敵陣ゴールに近いラインが奥、離れている方が手前です。
ライン上とライン間の特徴
まずは、主にアンカーやボランチの主戦場となる「2トップと2ボランチがつくる四角形の真ん中」と「2トップの間」を例に、相違点を整理します。
2トップと2ボランチがつくる四角形の真ん中
一般的にライン間と言われますが、その中でも多角形の中心に注目します。
出し手
-ゲートの正面からしかパスを通せない
-ゲートの正面にいないとリターンを受けられない
受け手
-奥のラインに近い
-あらゆる方向からプレッシャーを受ける可能性がある
-前方に対して半身を作りにくい
2トップの間
人と人の間、(手前の)ライン上ですね。
出し手
-角度のあるところからでもパスを出せる
-ゲートの真正面にいなくてもリターンを受けられる
受け手
-奥のラインから離れている
-両脇からプレッシャーを受ける可能性が高い
-前方に対して半身を作りやすい
ポジショニングによって変わる景色
ここから、ボールをコントロールする方向を加え、状況の変化と直後のプレーの可能性を考えます。
自陣ゴール方向にコントロール
ターンしないので、時間がかからず、視野も変わりません。
1番スムーズなプレーといえるでしょう。
♦️ライン間の場合
ゲートが体の側方にあるためパスを出すには若干窮屈です。
また、奥のラインからボールを奪いに来たボランチを早い段階で背負うことになります。
ボールを扱うのが難しくなり、前向きなプレーも厳しくなるため、オーガナイズされた守備であればラインを押し上げてきます。
ここで苦し紛れに出した横パスを奪われるとネガティブトランジションで置いていかれやすいです。
リターンパスの可能性も考えられますが、手前のライン=ボール方向からある程度アプローチを受けるでしょう。
一般的にボール方向からディフェンスに近づかれるほどプレーは制限されてしまうので、もたついた場合パスカットされるリスクは上がります。
このような状況に対し味方が圧力を感じ、ラインを越えるためのより攻撃的なポジショニングに移行するのをためらうケースは少なくありません。
その場合、パスを回すことはできても、奥のラインと駆け引きしにくくなる為、前進に繋げにくくなります。
♦️ライン上の場合
ボール方向からアプローチにくる相手はいないため、後方へのプレーはほとんど制限されません。
横からのプレッシャーが来ますが、引きつけてからリターンすれば、守備を足止めすることができます。
リスクの低いプレーで相手を動かしつつ、味方の攻撃的なポジショニングを後押しできます。
警戒して事前に幅を狭めてきたら、2人でほとんど同じエリアを守っていることになるので、守備組織としては非効率な状態でのスタートとなり、自分の代わりに味方がスペースを享受できます。
敵陣ゴール方向にコントロール
ターンして前を向くプレーです。
動作分時間がかかることや、視野が変わる難しさを考慮する必要があります。
♦️ライン間の場合
ターンしなかった時と同様、複数のゲートを体の正面に捉えることができず、守備側は体の向きや利き足で展開を予測しやすいです。
また、ボールの移動とターンの間に、奥のラインから相手がアプローチしてきます。
ディフェンスが近いほどその方向にプレーするのが難しくなるのは前述の通りです。
また、前方向に半身を作りにくいので、ボールを受ける前の情報収集も難しくなります。
相手がどのようにプレッシャーをかけてくるか、味方がどう動いているかなど、ターン直後に瞬時に判断することになります。
相手の動きを逆手に取って剥がせば、守備全体を瞬間的に機能不全に陥れられますが、180度近いターンのスムーズさと動物的な感覚が求められるでしょう。
♦️ライン上の場合
ターンしても、ボール方向からのアプローチは距離があるため、比較的プレーを制限されにくいです。
両脇からプレッシャーをかけられるので、時間的な余裕は少ないですが、受ける前に半身で状況を確認できる上、体の正面に複数のゲートを確保できるため、落ち着いてプレーできるでしょう。
このような場合、守備側は陣形をコンパクトにしてより危険な中央を塞ぐのがセオリーです。
その結果ワイドレーンや、幅を狭めきれなかったゲート等、相手の意識が向いていない場所に有効なスペースができます。
相手に近づく
ここまで、ポジショニングとボールを受けた時の景色に関して書いてきました。
任意のライン上にポジショニングすると、ラインを構成する相手に近くなりますが、ラインを軸にどちらかにボールをコントロールすれば、プレーを制限されにくい時間を作れることがわかったと思います。
要点は、(よほどコンパクトでなければ)"誰かの近くは他の人から遠い"ということです。
人と人の間でも、この原理を応用できます。
(ボールホルダーとの関係性によって)片方の選手に近づくことで、ターン中にボール方向からアプローチにくるもう片方の選手から数歩分離れられる上に、半身を作りやすくなります。
この時、ターンの過程で正対気味になることもあり、足を止めてプレッシャーを弱めたり、出し手が相手を背後から越える動きでワンツーに繋げることができそうです。
"現在"と"未来"を繋げる
ただ、僕がより重要なメリットだと思うのは、ボールを受けた時どんな状況に置かれるか事前にある程度わかることです。
一度ライン上にポジショニングしたら、その時点で「ラインを軸にどちらかにボールをコントロールすれば正面からのプレッシャーを受けにくい」と決まります。
コントロールする方向にどんな可能性があるか探りやすいので、ファーストタッチから先のプレーもイメージできるでしょう。
まとめ
今回は、ライン上ポジショニングについて、ある程度静的な内容に絞って話を進めました。
認知を助け、相手に影響を与えつつ、次のプレーも効果的になりやすいのが、誰かの近くで他の人から離れている、ライン上ポジショニングです。
一方、ずっとそこにいるだけでは守備側も準備できてしまいます。
逆に、受けた後のプレーが難しいポジショニングとして扱ったライン間も、駆け引きで相手を遅らせることによって十分に使えるエリアになります。
そういったお話は、またそのうち。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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