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【2024年11月4日】カメラを手放した
ある日、右手の中指が痛いことに気付いた。
全く動かせないような激痛ではない。日常生活の作業は普通に出来る。でも、物を持って強く力を込めてギュッと握るとジワッと痛い。
右手が痛ければ左手を使うようにすればいい。そして右手を休ませていれば、右手の痛いところはいつの間にか治っているだろう。
でも、今の僕はそれが出来ない。僕は左手が麻痺していて自由に動かせないので、あらゆる作業を右手で行っている。右手が痛くても右手を使うしかない。でも右手が痛い。間違いなく痛い。
どうにかこうにか頑張って試行錯誤して右手の中指に湿布を貼ってテーピングを撒いて固定した。そうすると痛みは感じなくなったが、中指1本だけでも固定していると右手全体が使いづらい。
でも仕方ない。今ちょっと不便でも我慢して治したほうがいい。治さずに無理し続けて致命傷になってしまい右手が使えなくと、僕はもう何も出来なくなってしまう。僕にとって右手だけが救世主。
定期的に湿布とテーピングを貼り変える為に剥がす度に、中指を動かしてみたり物を握ったりして痛みを確かめた。
そして、2週間くらいで右手の中指の痛みが引いた。良かった。
右手の中指が痛くてテーピングで固定している間は、万が一のことを考えて外出を自粛していた。いつも行っている動物園や水族館へ行くのも自粛。
でも痛みが引いたので、早速、行くことに。
久しぶりだったのでものすごく楽しい。歩き周りながらカメラで撮りまくる。
あっという間に小一時間くらい経過。
すると、右手の中指がまた痛くなってきた。
あれ?痛い!?なんで?
ベンチに座って休憩し、中指を動かしながら痛みを確認してみる。何をしたら痛いのか。何が原因なのか。探ってみる。
そして分かった。
右手の中指の痛みの原因は、カメラ。
僕はレンズ交換式のミラーレス一眼デジカメを愛機として使っていた。けっこう重くて両手で使うことが大前提になっている。
カメラの基本的な持ち方は、撮影がブレないように右手と左手の両手でしっかりカメラを保持する。そして、左手でレンズを回して望遠を調整して、右手でカメラ本体の様々な設定を調整して撮影する。
僕も以前はそうしていた。でも今は右手だけで持っている。右手だけでカメラを持って全ての操作をしなければならない。だから、人差し指と親指はカメラの色々な操作に使うのでカメラから浮かせていることが多くて、実質的に右手の中指、薬指、小指の3本だけで持っている。その中でも僕は特に中指にギュッと力を入れてカメラを持っていたようだ。
カメラを持って構えて撮影しようとすると、右手の中指が痛くなってくる。
完全に治ってなかったようだ。
今はまだちょこっとジワッと痛いだけだが、これから痛みが更にもっと悪化していくのはマズい。それに、もし治ったとしても同じことをやり続けるとまた痛くなってしまうだろう。
カメラを鞄にしまって、そこからはスマホのみで撮影した。
それからも数日おきにいくつかの動物園や水族館に行って、スマホだけでの撮影を試してみた。愛機のミラーレス一眼デジカメも持って行ったが、全く使わずに鞄にしまったままだった。
スマホで撮影したデータをパソコンに取り込んで確認してみると、動物園の屋外で撮った写真や動画は綺麗。撮り方やポジション取りを工夫する必要はあるが、それは自分次第だ。
でも、水族館の屋内で撮った写真や動画はイマイチ。ダメではないがイマイチ。デジカメに完全に劣る。最近のスマホはカメラ機能が「デジカメ並」だと宣伝しているが、所詮あくまでも「並」なのだ。デジカメとイコールにはならない。でも、ダメではない。撮り方やポジション取りを工夫して、パソコンのソフトで加工編集すれば何とかなるかな。
残念だけど、これからもカメラを使い続けるのは難しいだろう。カメラよりも写真よりも右手のほうが大事だ。これからはスマホでの撮影でやっていくしかない。
デジカメより機能が劣るスマホでは撮れない画はたくさんあるだろうけど、その一方で、片手で簡単に持てるスマホだからこそ撮れる画もたくさんあるだろう。
僕は決断した。
カメラは諦める。
これからはスマホで撮影する。
カメラはもう使わない。
愛機のミラーレス一眼デジカメは、中古カメラの売買をしているカメラ店に買い取ってもらうことにした。
手元に持っていたらまた使いたくなって、そしてまた右手が痛くなってしまうかもしれない。右手を守る為にこのカメラはもう使わない。
使わないものを持っていてもしょうがない。正直なところ、金銭的な余裕もないので少しでもお金になるなら助かる。
愛機と交換レンズを綺麗に拭いて、綺麗にする。
北海道内の全ての動物園と水族館へ一緒に行った相棒と仲間達。
今までありがとう。ごめんね。さようなら。
その他にも、ずっと以前に使っていた古いデジカメなども全て引っ張り出してきて、整理する。
全部でデジカメの本体が3台、交換レンズが5本、コンデジが2台、ビデオカメラが1台。
カメラ店にデジカメ一式を全て持ち込んで、査定して貰う。
多いから査定に時間が掛かるということなので、お店を一旦出て色々とやってから1時間後にあらためて来店。
査定結果が出た。
愛機は、使用感が多いということで査定ランクは低かった。何年もずっと使っていたし、落としたことも何度もあったし、まぁ仕方ない。でもそれなりの金額は付いた。
交換レンズも全て使用感があるという査定だったが、全て値段が付いて、ひとつだけ予想以上に高額だったものもあった。後からネットで調べてみると、公式サイトではもう売られていない交換レンズだった。
他のデジカメ本体にも全て金額が付いて買い取って貰えた。
買取は無理なら処分してもらおうと思ってた古いコンデジにも金額が付いて買取金額50円だった。おそらくサービスだろうな。
なんだかんだで全部合計して数万円になった。
買った時の金額に比べると、10分の1くらい。でも充分だよ。
長い間ずっと楽しませてもらって、最後にお金になって、毎日の御飯になって、僕の身体を作ってくれる。ありがとう。
ありがとう。
さようなら。
最後に、興味があったので、買い取られたデジカメはこれからどうなるのかをスタッフさんに聞いてみた。
僕が持ち込んだデジカメはかなり使用感があるけど故障はしてないので、しっかりクリーニングして部品を交換してから中古の商品になるだろう。古い機種は分解して部品を取る。とのことでした。
なるほどね。どういう形になるか分からないけど、これからも誰かの役に立つのなら嬉しい。
数日後。
自分でも予想してなかった事態になってしまった。衝撃の展開。どんでん返し。
外に出掛けるモチベーションが著しく低下してしまった。
遠出する気分にならない。全くならない。
秋になると、北海道内の多くの水族館でサケを展示する。自然の川を泳ぐ野性のサケを見学できる水族館もある。動物に大きなサケを丸ごと食べさせるショーを行う水族館もある。秋しか見れない光景の水族館がたくさんあり、毎年、秋には北海道内の各地に走り周って水族館を巡っていた。
また、真冬になって雪が積もると、遠出して色んなところに行くのは非常に難しくなって、数ヶ月間は遠出できなくなってしまう。なので、その前に遠出して各地の動物園や水族館に今年の最後の訪問をしていた。
でも今年は、走り周って外に出掛けたい気持ちが湧いてこない。遠出して動物園や水族館を巡りたい気持ちが湧いてこない。「次はいつ行こうかな~」なんて考えてみた時に、「いや今年はもういいかな~」なんて思っちゃう。
以前なら多少の無理をしても「行きたい!」と思ったが、今年は全くそう思えない。近くの施設にちょこっと行ければ満足。わざわざ遠出しなくていい。
思いつく原因はひとつ。
カメラを手放したことだ。
スマホでも写真や動画は撮れる。それなりに綺麗に撮れる。充分だ。
でも、心のワクワク感が全く違うんだよね。
カメラは、撮っている時も、撮ったデータを確認している時も、パソコンで加工編集している時も、色々と考えて色々と操作する必要があってちょっと面倒。だけど、様々な条件がピタリと揃うと、自分の予想を超える120点の作品ができる。その瞬間がたまらなくワクワクして楽しい。心躍る。
スマホは簡単に撮れてアプリで簡単に加工編集できるから、すぐに手早く出来るという楽しさはある。でも、常に自分の予想内の80点の作品にしかならない。ワクワクはしない。心躍らない。
まぁ、僕が色んなところに遠出しなくても、困る人は誰もいない。
あくまでも僕個人の気持ちの問題だ。
僕が個人的に「外に出ない自分」が嫌なのだ。
左手が麻痺してしまっているけど、僕は今でも左手が動くようになると信じてトレーニングを続けている。だけど、以前のように自由自在に動かせてあらゆる作業を行えるようになるまで完全に回復するのは無理だろうとも思っている。
これからまた僕の左手が動くようになっても、以前のように重い一眼デジカメを両手で持って操作しながら撮影するのは無理だろう。
悲しいけど、それが現実だ。
今のスマホでの撮影の中に楽しみが見つかるまで地道にやり続けるか。
カメラ機能がものすごく良くて撮影や編集が楽しいスマホに機種交換するか。
それとも「カメラを諦める」というのを少し軌道修正して、片手で持てるくらい軽くて片手で全ての操作をできるような高性能のデジカメを探して買うか。
何かしらの方法を考えなければ。