貴美子の冒険記
小豆島から移住して、1か月。
時折、向こうが懐かしく思うこともある。
ドアをノックする音。
『桜が綺麗だよ』ということで、思い切って表に出てみることにした。
1階に住んでいる方が、一緒について来てくれるとのこと。頼もしい。
一歩一歩をしっかりと。
油断は大敵だ。
『小豆島って何県だっけ?』と、一緒について来てくれた方が言う。
この質問が1番多いのだ。
皆、小豆島は知っていても何県なのかが出てこないらしい。
返答には慣れたもんだ。「香川県よ」と。
道路を横断するときは緊張した。
でも車の運転手は快く待ってくれてありがたかったな。
ステッキを挙げてお礼を伝えてみると、ガラス越しに向こうも手を挙げた。
この横断をクリアすれば、目的地はもうすぐとのこと。
距離にして、200メートルほど歩いたか。
先に到着していた方が、大きく手を広げて待っていた。
そこには、大きな大きな満開の桜の木。
なんて見事なんだろう。
一緒に頑張って来たんだ。記念にしたい。
何でもやってみるもんだ。帰りも無事に歩けた。
400メートルも歩いたんだ。
帰って来た私は自然と声がもれていた。
「やったー!」と。
時折、向こうが懐かしく思うこともある。
だけど、私はこの柏の地で強く生きていこう。
2本のトレッキングステッキを頼りに。