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映画『オブリビオン』 ― 美しくも切ない、荒廃した地球での真実の探求

■ はじめに

トム・クルーズ主演、ジョセフ・コシンスキー監督のSF映画**『オブリビオン(Oblivion)』を観た。
美しい映像美と、ミステリアスなストーリー展開、そして何より
「記憶」と「アイデンティティ」に迫るテーマ**が強く印象に残る作品だった。

荒廃した地球を舞台に、過去の記憶に縛られながらも「真実」を求めていく主人公ジャック・ハーパー(トム・クルーズ)。
この映画は単なるSFアクションではなく、静かで哲学的な問いを含んだ作品でもあった。


■ 映像美と圧倒的な世界観

まず、特筆すべきは映像の美しさだ。
荒廃した地球は廃墟と化した都市、砂漠のような大地、朽ち果てた建造物が広がり、どこか静謐な雰囲気を醸し出している。

特にジャックが住む高度1000メートル上空のスカイ・タワーは近未来的なデザインが際立っており、ガラス張りの住居が壮大な雲海を見下ろすシーンは息をのむほど美しい。

さらに、無人偵察機「ドローン」の無機質なデザインや、砂漠を駆け抜けるバブルシップ(球状の戦闘機)のデザインは、映画の世界観に完璧にマッチしている。
ジョセフ・コシンスキー監督は建築を学んでいたこともあり、SF的なデザインのセンスが圧倒的だ。


■ ジャック・ハーパーの「記憶」と「真実」

物語の序盤、ジャックは日常業務としてドローンのメンテナンスを続けているが、彼の中にはどこか違和感が漂っている
「なぜか懐かしい」ニューヨークの遺跡や、夢に見る**知らないはずの女性(ジュリア)**の存在。

ジャックはやがて、墜落した宇宙船の中で眠るジュリア(オルガ・キュリレンコ)を発見し、彼女の存在が自分の記憶と繋がっていることに気づく。

そして、次第に明らかになっていく「真実」。

スカヴ(エイリアン)と呼ばれていた者たちの正体
地球を襲ったとされるエイリアンの本当の目的
ジャック・ハーパーの本当の存在

ここから物語は一気に加速し、ジャックが抱えていた違和感が、恐ろしい現実へと繋がっていく


■ 「自分は何者なのか?」というテーマ

『オブリビオン』は、単なる「地球を救う戦士の物語」ではない。
むしろ、ジャックの視点を通して**「アイデンティティとは何か?」**という深い問いを描いている。

記憶が本物ならば、それは「自分の人生」なのか?
誰かのコピーであっても、自分の意志で選択した未来は本物なのか?

ジャックが直面する真実は、彼自身が思っていたものとは違っていた。
しかし、彼はそれでも「自分の選んだ道」を突き進む。
それが、彼にとっての「本当の自分を取り戻す」ことに繋がっていくからだ。


■ 静かなラブストーリーと、ラストの余韻

『オブリビオン』はSF映画でありながら、切ないラブストーリーでもある。

ジャックが夢に見ていたジュリアとの関係、そして彼が最後に下す決断。
終盤の展開は、まるで運命に導かれるかのように流れていく。

ラストシーンは、観る者によって解釈が分かれるかもしれない。
しかし、**「人はどんな状況でも愛する人を求め、真実を知りたいと願う」**という人間の本質が、静かに、そして力強く描かれている。


■ 総評:美しくも切ない、壮大なSFドラマ

『オブリビオン』は、ただのSFアクション映画ではない。
むしろ、美しい映像の中で「人間とは何か?」を問いかける哲学的な映画だ。

圧倒的な映像美とデザインセンス
ジャック・ハーパーのアイデンティティを巡るミステリー
静かに流れるラブストーリーの切なさ

劇的な戦闘シーンが続くようなSF作品ではなく、むしろ**「静かに進行する謎解き」**の要素が強い。
そのため、じっくりと映画の世界観に浸りたい人にこそおすすめの作品だ。

そして何よりも、この映画を観終えた後、**「自分とは何か?」**と考えさせられる余韻が残る。
それこそが、『オブリビオン』という映画が持つ魅力なのかもしれない。

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