男性尿道炎とは?多くはセックスでうつります。パートナーを守るためにも早期検査・治療が必要です。
尿道とは膀胱に溜まった尿が外に出るときの通路です。
男性ではペニスの中を通っているのですが、ペニスがある分女性よりもだいぶ長いのです。
女性では3cmくらい。
男性はペニスの長さによって様々ですが、15cm以上はあることがおおいのでだいぶ違います。
尿道炎は尿道の炎症ですが、ざっくりといって男性の病気と考えてしまってもいいです。
女性ではすぐに病原菌は奥の尿道に届くので、尿道炎というよりも膀胱炎で受診することが多いです。
膀胱炎と尿道炎は近いところの炎症ですが、その解剖的な形の違いから、原因から治療まで全く異なる疾患と考えて良いです。今回は男性の尿道炎についてまとめます。
尿道炎の多くはSTI(Sexually Transmitted Infection:性感染症)です。
膀胱炎と違い、大切なパートナーにうつすリスクがあります。しっかり理解して、素早い治療、そして予防を心がけましょう。
尿道炎の原因は?
多くはセックスのときに感染します。
淋菌とクラミジア・トラコマティスという病原微生物が原因の2大巨頭で、それ以外の原因は少なかったので、
淋菌性
クラミジア性
非淋菌非クラミジア性
と分けられていました。
後述しますが、最近では非淋菌非クラミジア性の原因のものの治療が難しくなってきているために頻度が増えてきています。
性感染症STIは梅毒がものすごく増えているのが有名ですが、それでも一番罹患者の多い感染症はクラミジアです。女性も含めると
クラミジア>淋菌>非淋菌非クラミジア
の順番に多いのですが、男性では最近はどれもほぼ同じ頻度でみられるようになってきています。
尿道炎の頻度は?
男性の何%がこれらの病原菌ににかかったか?というデータを作るのは難しいです。
梅毒やHIVは診断した医師が国に報告することになっており、正確な患者数を把握しやすいのですが、尿道炎ではそれが難しいです。
その理由は自覚症状が乏しいことです。
非淋菌性尿道炎は症状が弱いです。気づかないくらい弱いこともあり、自分が感染していることに気づいていない無症候性クラミジア感染症の方などもいます。このような方は病院を受診しないので、感染数の統計に反映されません。
しかし2001-2002年と古いデータではありますが、日本の論文で大学生・専門学生1,004名のクラミジア罹患の有無を調べたものがあります。
症状のない被験者たちでしたが、調べてみると陽性が8.3%(男性は7.0%)という結果でした。
症状がなくても、実は保菌している可能性が意外と多いことが示唆される結果だったと思います。セックスは感染を予防できる安全なやり方が求められます。
尿道炎の症状は?
排尿痛と尿道からの排膿が代表的な症状です。
臨床医はこれらの症状と、ご本人が覚えている不安行為が症状が出る何日前だったかを確認して、原因菌を類推します。
排尿痛がかなり強く、膿が濃白色〜黄色でパンツをかなり汚すくらい多い場合は淋菌性を疑います。この場合は潜伏期間が2-7日程度と短いことが多いため、ご本人がこの日のセックスでうつった!と気付けることが多いです。
排尿痛が弱い、もしくはムズムズする程度で、膿もないか、あっても透明な液が少量しか出てこないときは非淋菌性を考えます。クラミジアを念頭に置きますが、最近はクラミジア以外のものも増えてきています。
潜伏期はクラミジアで2-3週間ですが、症状が弱いことからそれ以前からの可能性もあり、原因となる不安行為をご本人が特定できない場合もあります。
ウイルスによる尿道炎では淋菌のように強い排尿痛が出ることがありますが、淋菌がいないことはしっかり確認することが必要です。
尿道炎を放っておくと尿道を病原微生物が奥に進んで精巣や前立腺で炎症を起こすことがあり、その場合は発熱、排尿困難、精巣の腫大・圧痛などの強い症状を示すことがあります。早期治療は重要です。
尿道炎の検査は?
尿検査で炎症があることを確認することと、病原菌の特定検査の2つを行います。
病原微生物が尿道につくと除去するために免疫系がはたらき、それらを排除するための白血球が尿中に増えます。尿をとって、その中に白血球が増えているかを調べます。
試験紙を用いて簡便にも調べられますし、顕微鏡でみることができる施設の場合は顕微鏡で白血球がいるかを確認します。
顕微鏡がある場合は、そのまま尿中にグラム陰性双球菌がいるかをみることで、淋菌性かどうかを調べることができます。トリコモナス原虫が原因の場合はトリコモナスを実際にみつけることで診断できることもあります。
顕微鏡がない施設、もしくはある施設でも必ずクラミジアの有無を調べるために尿のPCR検査を行い、淋菌クラミジアの存在を確認します。
淋菌感染者のなかの20-30%にはクラミジアが同時に感染していることがわかっていますので、顕微鏡で淋菌をみつけてもこの検査は行うべきです。
最近非淋菌非クラミジア感染症の原因菌で増えてきているマイコプラズマ・ジェニタリウム(M.genitalium)やウレアプラズマも検査で調べることができますが、保険適応にはならず、自費での検査になります。
尿道炎の治療は?
抗菌薬治療を行います。
上記の検査で原因を特定できていれば、その原因にそった治療を行います。
淋菌が原因の尿道炎の場合、無症状で喉にも感染していることがありますので、咽頭の淋菌も治療できる方法を用います。
クラミジアに対する治療で、以前は非淋菌非クラミジア感染の原因もほとんど治療できていたのですが、近年ではマイコプラズマ・ジェニタリウムなど高度耐性を持ってきているために異なる治療が必要になることが増えています。
トリコモナス原虫やヘルペスウイルスによる尿道炎はそれぞれの治療薬を使用します。
淋菌・クラミジアとも治療方法は確立しており、かなり高い確率で治療は成功します。ただし、特に淋菌は耐性のスピードが早いことから、今後は治療薬では改善しない淋菌が出てくることが危惧されています。
咽頭の淋菌やマイコプラズマなど、治療が一度で済まない可能性があるものもあり、一度治療したのちに陰性となっているか検査で確認することも重要です。
再発を繰り返す場合に考えることは?
その病原菌が抗菌薬の耐性がつよく、しぶとく生き残っている可能性ももちろんあります。
その他、ご自身が治療していてもパートナーにうつしてしまっていて、治療後にパートナーから再度感染してしまっていることも考える必要があり、これをピンポン感染といいます。
女性は症状が出にくく、知らずに進行して卵管炎や腹膜炎の原因になることがありますが、これは不妊症の原因になります。STIを見つけたときには必ずパートナーも同時に検査・治療を行うことが重要です。
結語
尿道炎は治療が確立しているのですが、近年淋菌やマイコプラズマ・ジェニタリウムの抗菌薬耐性がすごいスピードで進んできており、世界の感染症専門学会も要注意感染症と指定しています。
尿道炎はパートナーを守るためにも早期発見・治療はもちろんですが、今後治療できる抗菌薬のないスーパー尿道炎が起こることも考えられるために予防が重要です。
症状がなくても保菌している可能性はありますので、コンドームを用いたセックスが大変重要です。尿道を介した感染になるので、コンドームで物理的に接触を断つことが感染率を大きく減らします。
但しコンドームを装着しないオーラルセックスでも感染します。妊娠を防ぐ目的ではオーラルセックスでのコンドームの重要性は忘れがちですが、STI予防の点ではとても重要であることを忘れてはいけません。
同様の理由でアナルセックスでもコンドームをすることが感染予防になります。
性感染症は誰でも罹患する可能性があります。恥ずかしがる必要は全くありませんん。怪しいと思ったときには気軽に病院を受診してください。