ハルヴァとリガの市場
米原万里さんのエッセイ「旅行者の朝食」に収録されている、「トルコ蜜飴の版図」。ハルヴァという中東のお菓子に関する話である。いわく、油脂とナッツで麦こがしのような味がして、とにかくとてもおいしい、らしい。
ラトビアの首都・リガの中央市場で見つけたそれは、想像よりも華やかで、種類もとても多かった。その店で売られていたハルヴァは大きく2つに分かれ、ごま油ベースのものとひまわり油ベースのもの。そこにピスタチオやドライフルーツ、ヌテラなどが混ぜられている。ごま油ベースのものは香ばしさと苦みの中間くらいのクセがあり、ひまわり油ベースのものは香ばしさが勝った味わい。粘土のような柔らかさがある部分と、サクサクッとした部分とが同居していて、鼻につかない程度のスパイスの風味も感じられる。コーヒーにも合うが、米原さんが書いていた通り、抹茶にも合いそう。その他の場所で見つけたものよりも若干高かったものの、もっと買ってくればよかったかな、と思うくらいおいしい。
リガの中央市場は駅やバスターミナルのすぐ近くにあり、大きな建物が4つあって生鮮食品を中心になんでも売っている。簡単な食事ができる店もあり、ぶらぶら見て回るだけでも楽しい。お店の人たちも押しが強いというほどでもなく、試食して気に入ったら買ってね、くらいの接し方である。魚類が豊富で、燻製とか酢漬けとか、食べ方もなじみのあるものが多かった。西欧の市場とは違うエキゾチックなお菓子類(ハルヴァもその1つ)、そして旧ソ連だなと実感させられるビーツなど。世界中どこでも市場が活気のある街は、いい街だ。